今後どうなる日経平均(2024年1月26日)

今後どうなる日経平均(2024年1月26日)

この記事のポイント
  • 前回の記事で「アメリカ大統領選挙の年は株価が上昇しやすい」というアノマリー(経験則)を紹介した上で、OECDの景気先行指数(CLI:composite leading indicator)が横ばいであることから、日経平均は「バイデン大統領が何らかの景気刺激策を講じれば年末に向けて株高基調になり、反対に何の発表もなければ現状のままレンジ内で変動する」という予想を立てました。しかし、年始からいきなり予想が外れました。
  • 海外投資家の日本株買いの背景には、①中国と世界経済のデカップリングの過程で相対的に日本株が見直されたこと、②東京証券取引所グループによって「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請がなされたことが関係していると考えています。
  • 最近は増配を発表する企業が増えている印象があり、株主還元に積極的な土壌が生まれつつあると感じています。日経平均も抵抗線であった3万4000円を上抜けているので、目線としては「買い」が正しいと思います。ただ、個人的に持ち株をすべて売却してしまっているので、再度買いポジションを作るか悩みどころです。3万4000円付近で反発を確認できれば再び大きく投資しようと思います。

日経平均が上昇した要因は?

「日経平均6ヵ月日足チャート(2024年1月26日時点)」マネックス証券より

「日経平均6ヵ月日足チャート(2024年1月26日時点)」マネックス証券より(画像をクリックすると拡大します)

前回の記事では「アメリカ大統領選挙の年は株価が上昇しやすい」というアノマリー(経験則)を紹介した上で、OECDの景気先行指数(CLI:composite leading indicator)が横ばいであることから、日経平均は「バイデン大統領が何らかの景気刺激策を講じれば年末に向けて株高基調になり、反対に何の発表もなければ現状のままレンジ内で変動する」という予想を立てました。

しかし、思惑に反して年始から日経平均は力強く上昇してしまい、出だしから躓いてしまった形です。今回の記事では、年始の日経平均の急騰の理由を探っていきたいと思います。

「直近52週間の投資主体別売買動向(2024年1月26日時点より)」traderswebより

「直近52週間の投資主体別売買動向(2024年1月26日時点より)」traderswebより(画像をクリックすると拡大します)

東京証券取引所が公表している投資主体別売買動向をみると、直近の日経平均の上昇が海外投資家の大幅な買い越しによって引き起こされていることが分かります。海外投資家は直近の2024年1月第3週(15〜19日)も現物株を3841億円買い越しており、年初から3週連続で累計約1兆5000億円ほど買い進めた計算です。

こうした海外投資家の日本株買いの背景には、①中国と世界経済のデカップリングの過程で相対的に日本株が見直されたこと、②東京証券取引所グループによって「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請がなされたことが関係しています。

「上海総合指数の日足チャート(2024年1月26日時点)」Trading Viewより

「上海総合指数の日足チャート(2024年1月26日時点)」Trading Viewより(画像をクリックすると拡大します)

まず①についてですが、2018年の米中貿易摩擦に始まり、2020年の新型コロナウイルスのパンデミックやそれに伴うロックダウン政策の堅持によって、中国経済は大きく混乱することになりました。また、尖閣諸島への介入、台湾侵攻の示唆、南沙諸島の軍事拠点化などの中国の覇権主義的行動が契機となって、製造拠点を中国から他国に移転させるなど、デリスキング(関係を維持する一方で、依存度を下げてリスクを減らし続けること)の動きが加速しています。

こうしたチャイナリスクの高まりに対し、世界最大の資産運用会社である米ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)は2023年6月のメディアの取材で「中国株から日本株に資金を移す動きがみられる」と述べています。したがって、2024年頭の日経平均の急騰も相対的に日本株が見直されたこと(ポートフォリオのリバランス:中国株を売却して日本株を買い、日本株の構成比率を大きくしたこと)が原因ではないかと考えています。

「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」東京証券取引所資料より

「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」東京証券取引所資料より(画像をクリックすると拡大します)

次に②についてですが、2023年3月31日に東京証券取引所グループによって「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」の要請がなされています。その要旨は「資本収益性や成長性といった観点で課題がある(プライム市場の約半数、スタンダード市場の約6割の上場会社がROE8%未満、PBR1倍割れとなっている)状況を打破するために、企業価値向上の実現に向けて、経営者の資本コストや株価に対する意識改革が必要である」というもので、具体的には「継続して資本コストを上回る資本収益性を達成し、持続的な成長を果たすための抜本的な取組みを計画・策定し、それを毎年開示するよう求める」ものです。

東証の取組みは海外でも非常に注目されており、今回、我々が日本株へのアロケーションを増やそうとした要因の1つ。しかし、期待や注目を集めている分、これからの取組みの経過が大切であり、ポジティブな変化について、継続的に機関投資家に情報発信・アピールしていくことが重要(海外投資家) 東京証券取引所グループ「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示企業一覧表の公表等についてより

この取り組みは海外投資家からも注目されており、資本収益性の改善によって企業価値の向上が見込まれることから、東証に寄せられたコメントにあるように日本株を購入する動機の一つになっています。年初の日経平均の急騰は資本コストや株価を意識した経営が行われる期待感から買いが入ったのかもしれません。

MEMO
なお、東京証券取引所グループの要請は全上場企業が対象となっており、2023年7月中旬時点で、既に、プライム市場の31%(379社)、スタンダード市場の14%(120社)が開示済となっています。日本企業は3月決算が多いため、本決算が発表される5月頃まで引き続き日経平均が買われるかもしれません。

今後どうなる日経平均

「OECD景気先行指数(2024年1月9日時点。赤:中国、青:日本、紫:アメリカ、灰:OECD加盟各国)」OECDのHPより

「OECD景気先行指数(2024年1月9日時点。赤:中国、青:日本、紫:アメリカ、灰:OECD加盟各国)」OECDのHPより(画像をクリックすると拡大します)

OECDの景気先行指数(CLI:composite leading indicator)が横ばいであることから、2024年の日経平均は少なくとも上半期の間は横ばいで推移すると考えていたのですが、資本収益率の改善に取り組む企業が増えることで、もしかしたら5月~6月までは堅調に推移するかもしれないと考え直しかけています。直近でみても、伊藤忠、オービック、イオン九州といった企業が相次いで増配を発表しています。株主還元に積極的に取り組む企業が増えることで、日経平均が緩やかに上昇する可能性はあると思います。

「日経平均5年週足チャート(2024年1月26日時点)」マネックス証券より

「日経平均5年週足チャート(2024年1月26日時点)」マネックス証券より(画像をクリックすると拡大します)

また、週足チャートをみても、これまで上値を抑えてきた3万4000円のラインを突破しているので、上値が相当軽くなっています。テクニカル面で見ると相場環境は良いので、経済状況の見通しは暗いものの、やはりこのまま株価が上昇する可能性は高いと言えます。

個人的には今回の上昇相場で持ち株をすべて現金化してしまっているので、再度買いポジションを作るか悩んでいます。3万4000円のラインで反発を確認できれば再び参入しようと思っています。

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