アメリカの利上げは停止?どうなる日経平均?

この記事のポイント
  • 米連邦準備理事会は10月31日・11日1日に開いた連邦公開市場委員会で、フェデラルファンド金利の誘導目標を5.25~5.50%で据え置くことを決定。アメリカの金融引き締めが終了するとの観測が出る。しかし、連邦公開市場委員会のパウエル議長は利下げの可能性を否定。市場参加者との思惑が食い違うことに。
  • 過去のフェデラルファンド金利の推移やドットチャートの変遷をみると、金融当局が利上げを停止するとの見方は早計すぎる。
  • 日経平均株価は金利据え置きを好感して急反発したが、今後は横ばいの動き(3万3,500円~3万500円のレンジでの動き)又は再び下値を探る動き(3万500円を割る動き)となりそう。

アメリカの利上げは停止?

金利トレーダーは、過去数十年で最も急激な世界的金融引き締めは終わったとみて、2024年半ばから金融緩和が始まると予想している。ブルームバーグがまとめたデータによると、スワップ市場は先進国・地域の政策金利の平均が今後6カ月は動かないとの予想を示唆している。(中略)欧州、米国、オーストラリアで、今月に入って債券価格は反発した。物価上昇圧力が後退すれば、近いうちに引き締めに歯止めが掛かることにトレーダーらが賭けているためだ。ブルームバーグ「世界的な利上げは終了、市場が織り込む-2024年半ばには緩和開始か」2023年11月9日

ブルームバーグの報道によれば、世界中のトレーダーがアメリカの金利引き上げが終了する方向に賭けているようです。こうしたトレーダーの行動は本当に正しいのでしょうか?

確かに、米連邦準備理事会(FRB:The Federal Reserve Board)は10月31日・11日1日に開いた連邦公開市場委員会(FOMC:Federal Open Market Committee)で、フェデラルファンド金利の誘導目標を5.25~5.50%で据え置くことを決定。2会合連続で政策金利の引き上げが見送りとなりました。しかし同時に、米連邦準備理事会のパウエル議長はアメリカ経済の情勢について「経済活動は第3四半期に力強いペースで拡大した」と評価し、将来の金利引き下げの可能性については会合時点で「全く検討していない」と述べています。したがって、個人的にはアメリカの金利引き上げが停止されるか否かはまだ不透明な状況だと考えています。

「図表で見る米連邦公開市場委員会(FOMC)」ロイターのHPより

「図表で見る米連邦公開市場委員会(FOMC)」ロイターのHPより(画像はすべてクリックすると拡大します)

過去のフェデラルファンド金利の推移(画像の上のグラフ)を見ても利上げ停止時は金利水準が一定期間維持されていること、ドットチャート(米連邦公開市場委員会メンバーによる金利予想:画像下のグラフ)を見ても将来金利の予想幅にかなりのバラつきがあることも踏まえれば、なおのこと現段階での見切り発車は避けるべきだと考えています。アメリカの金融政策が不透明な内は、下手な経済見通しを立てない方が良いでしょう。

MEMO
国際決済銀行(BIS:Bank for International Settlements)の2022年4月の世界外為市場取引高調査によると世界の為替市場における米ドルの取引シェアは44.2%に達すると推計されており、アメリカの政策金利の動向によって世界経済が大きな影響を受ける形になっています。一般的に金利が引き上げられると投資がしにくくなって経済は停滞、反対に金利が引き下げられると投資がしやすくなって経済が活発になると考えられており、現在は利上げが終了するのではないかとの見方が出ている状態です。単純に考えれば利下げすれば良いように思いますが、昨今のインフレ(物価高)はかなり強力なので、下手に利下げをするとインフレが持続して経済に深刻な影響を与えてしまう恐れがあります。こうした背景から米連邦準備理事会はとりあえず静観するしかないという状況に追い込まれているようです。

アメリカの金利見通しが不透明な中で、どうなる日経平均?

「日経平均株価の6ヵ月日足チャート」マネックス証券より

「日経平均株価の6ヵ月日足チャート」マネックス証券より(画像はすべてクリックすると拡大します)

米連邦準備理事会が金利の据え置きを発表したことで企業活動が活発になるとの思惑から、日経平均は大きく上昇しました。チャートを見ると、日経平均株価は4つの移動平均線(5、25、52、200日移動平均線)をすべて上回っており、2023年6月の高値を目指そうとしているように感じます。

しかし、先にも述べたようにアメリカの政策金利に関しては不透明な部分が多く残されており、あまり楽観視してはいけません。金利の据え置きが継続する可能性や場合によってはいくらか利上げする可能性が残されていることを考えると、日経平均は横ばいの動き(3万3,500円~3万500円のレンジでの動き)又は再び下値を探る動き(3万500円を割る動き)となりそうです。

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