【2022年10月】中国の不動産市況が完全崩壊。そして新たなリスクが生まれる…。

【2022年10月】中国の不動産市況が完全崩壊。そして新たなリスクが生まれる…。

【2022年10月】中国の不動産市況が完全崩壊。そして新たなリスクが生まれる…。

この記事のポイント
  • 新築住宅価格が前年比割れの地域が7月の48都市から8月は49都市、9月は50都市、10月は51都市へ増加。不動産価格の暴落が中国全土へと広がっています。
  • 不動産開発投資額も減少し続けており、2022年1月から10月までの累計ベースの不動産開発投資は前年比△8.8%の11兆3945億元(1元=19.6円で約223兆3,322億円)と大幅に減少。
  • 地方政府の資金調達事業体(LGFV)が未完成の開発プロジェクトを不動産開発会社から買い取るケースが増加。これは実質的に投資リスクを地方政府が肩代わりすることを意味している。市況の悪化が不動産セクターだけの問題にとどまらず、地方政府の財政にまで影響を与えることに…。新たなリスクに要注意。

不動産価格の暴落が止まらない

「2022年10月の中国主要70都市の新築住宅販売価格指数」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

「2022年10月の中国主要70都市の新築住宅販売価格指数」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

2022年10月の中国主要70都市の新築住宅販売価格指数をみると、中国全土で不動産価格が下落していることが分かります。新築住宅価格が前月比割れの地域は2022年7月の40都市から8月は50都市、9月は54都市、そして10月は58都市へと徐々に拡大。前年比割れの地域も7月の48都市から8月は49都市、9月は50都市、10月は51都市へとそれぞれ増加しており、不動産価格の暴落が止まらない状況です。

「2022年10月の中国主要70都市の中古住宅販売価格指数」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

新築住宅市況の悪化は当然ながら中古市場にも影響を及ぼしています。中古不動産価格が前月比割れとなっている地域は2022年10月時点で62地域、前年比割れとなっている地域は64地域となっており、ほぼ壊滅状態にあります。中国の不動産市況についてはかねてから警鐘を鳴らしてきましたが、ついにここまで来たかという印象があります。

不動産開発投資も大幅減

「中国の不動産開発投資の成長率の推移(2022年10月)」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

「中国の不動産開発投資の成長率の推移(2022年10月)」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

市況の悪化に伴い、不動産開発投資額も減少し続けています。2022年1月から10月までの累計ベースの不動産開発投資は前年比△8.8%の11兆3945億元(1元=19.6円で約223兆3,322億円)と大幅に減少しています。

「2022年10月までの不動産開発投資の内訳」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

「2022年10月までの不動産開発投資の内訳」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

また、新規着工床面積(前年比△37.8%の103722万平方メートル)の落ち込み幅に比べて、建設中の床面積(前年比△5.7%の888,894万平方メートル)と竣工した建物の床面積(前年比△18.7%の46,565万平方メートル)の下落幅が少なくなっていることから、不動産開発会社が資金繰りに苦しんで開発プロジェクトを延期・中止した様子が伺えます。

実際、不動産開発会社の資金調達額は2022年1~10月までの累計で前年比△24.7%の12兆5,480億元(およそ245兆9,408億円)へと大きく減少しています。

過去の記事(「中国は不動産バブル崩壊を阻止するため躍起になる?」)でもとりあげたように、中国政府は2022年半ば頃から不動産開発会社への融資が円滑に実施されるように支援する方針を打ち出していますが、未だ目立った効果が見られません。不動産市況への警戒感から、貸し倒れを恐れて融資に慎重になっているのだと思われます。

そして、新たなリスクが生まれる…。

中国不動産危機の深刻化に伴い、本土債市場の一角、11兆6000億元(約234兆円)規模の「地方融資平台」セクターへの圧力が高まっている。国の後押しを受け地方政府が不動産開発会社の救済に乗り出しているためだ。今年に入り開発会社に代わり最も多くの土地を購入するようになったのが、地方融資平台、つまり地方政府の資金調達事業体(LGFV)だ。LGFVは今や、中国恒大集団などデフォルト(債務不履行)に陥った開発会社が手掛ける未完成事業の主な買い手となっているが、地方当局が不動産業界への関与を強めつつある現状について、アナリストらは警告を発している。 Bloomberg 2022年11月10日「中国不動産セクターに新たなリスク、地方政府の救済関与強化に懸念も」

「中央政府の方針に逆らってでも不動産開発会社に融資したくない」という金融機関の姿勢は現在の中国の不動産市況がいかに酷いかを物語っています。最近ではそんな金融機関に代わって、地方政府が不動産開発に関与するようになってきています。

ブルームバーグの報道にあるように、地方政府の資金調達事業体(LGFV)が未完成の開発プロジェクトを買い取るケースが増えています。LGFVはその資金を債券発行によって賄っているため、実体としては破綻状態にある不動産開発会社の代わりに開発プロジェクトを請け負っているに過ぎません。一つ一つの開発計画に地方政府の保証を付けているようなものであり、完成後に本当に資金が回収できるのかはまったくの不透明です。

そのため、不動産市況がこのまま悪化し続ければ、地方政府がLGFVを通して投資リスクを肩代わりする結果となります。不動産セクターが崩壊するかもしれないという問題が、いつの間にか地方政府も巻き込まれる大問題に発展しています。新たなリスクが顕在化しないよう祈るばかりです。

【中国の経済史(計画経済から資本主義への移行過程)について分かりやすくまとめられています。習近平国家主席の提唱する「中国の特色ある社会主義」を探る上でも役に立つと思いますので、ぜひご一読ください!】

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