中国は不動産バブル崩壊を阻止するため躍起になる?

中国は不動産バブル崩壊を阻止するため躍起になる?-アイキャッチ

中国は不動産バブル崩壊を阻止するため躍起になる?

この記事のポイント
  • 2022年1~7月の中国の不動産開発投資額は前年比△6.4%の7兆9,462億元(約158兆9,240億円)。新規着工住宅の床面積も累計で前年比△36.1%の76,067万平方メートル、竣工した住宅の床面積も前年比△23.3%の32,028万平方メートルまで落ち込み、不動産市況の悪化が続く。
  • 地価についても70都市中40都市(約57.1%)が前月比割れを起こしており、不動産開発会社を取り巻く環境は依然として厳しい。
  • しかし、ここ最近の景気減速懸念を受けて、中国政府が不動産開発会社の救済に向けて動きを見せている。不透明なところはあるが、世界経済にとっては朗報に!

不動産市況の悪化は歯止めがかからない状況に

中国の不動産開発投資額は引き続き減少

「中国の不動産開発投資額の成長率の推移(2022年7月)」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

「中国の不動産開発投資額の成長率の推移(2022年7月)」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

2022年1~7月の中国の不動産開発投資額は累計で前年比△6.4%の7兆9,462億元(1元=20円でおよそ158兆9,240億円)となっています。そのうち、住宅投資は6兆238億元(約120兆4,760億円)を占めており、前年比で5.8%減少しています。

新規着工住宅の床面積は1~7月累計で前年比△36.1%の76,067万平方メートルに、竣工した住宅の床面積も前年比△23.3%の32,028万平方メートルにまで落ち込んでおり、不動産市況の悪化が鮮明になってきています。

不動産価格の下落も歯止めがかからない

「2022年7月の中国主要70都市の新築住宅販売価格指数」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

「2022年7月の中国主要70都市の新築住宅販売価格指数」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

不動産価格の下落も歯止めがかからない状況です。

2022年7月の中国主要70都市の新築住宅販売価格指数をみると、70都市中48都市(約68.6%)で前年比割れを起こしていることが分かります。2022年春ごろから一部の都市で住宅購入者への支援策を導入したため、前月比割れは70都市中40都市(約57.1%)となっていますが、それでも過半数の都市で地価が下落しています。

竣工した住宅の床面積が減少して供給量が絞られたり、手厚い不動産購入支援策が導入されたりしているにもかかわらず、住宅価格は上昇に転じていません。不動産不況の底はまだまだ遠いようです。

MEMO
地方政府の住宅購入促進策として、四川省綿陽市は子育て世帯を対象に購入する住宅について1平方メートルあたり200元(約4,000円)の支援金を出す他、江蘇省南通市では90平方メートル未満の新規住宅は購入価格の1%、90~144平方メートルでは1.5%を援助しています。

不動産開発業者の資金繰りも相変わらず厳しい…

「2022年1~7月までの不動産開発投資の内訳」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

「2022年1~7月までの不動産開発投資の内訳」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

不動産バブルを警戒した中国政府が開発会社に対する融資規制(三条紅線)を導入して以降、不動産開発会社の資金繰りは厳しい状態が続いています。

2022年1~7月にかけて、不動産開発会社の資金調達額は前年比△25.4%の8兆8,770億元(約177兆5,400億円)と大きく減少。国内金融機関からの借入も前年比△28.4%の1兆1,030億元(約22兆0,600億円)、自社調達額も前年比△11.4%の3兆1,495億元(約62兆9,900億円)と大きく縮小しており、資金の確保に苦労している様子が伺えます。

これまで開発会社の多くは開発プロジェクトを素早く回転させることで企業規模を拡大させてきました。しかし、新規の開発プロジェクトも推進できず、地価も暴落して資産価値が急減。資金調達も困難ということになれば、残された道は破綻しかありません。

中国は不動産バブル崩壊を阻止するため躍起になる?

中国の不動産バブル崩壊の影響は計り知れない

ゴールドマン・サックスは20日、ハイイールド債を発行している中国の不動産会社の約3割が、今年デフォルト(債務不履行)に陥るとの見通しを示した。返済期限の延長が増えているという。今年に入り、ドル建て債でデフォルトに陥るか、債券の交換を行った中国のハイイールド債の発行体は22社で、全て不動産関連企業だった。同社のケネス・ホー氏はリポートで「これまでとは異なり、今年はデフォルトに陥った債券を交換する発行体が増えている」とし、デフォルト率の予想を19%から31.6%に引き上げた。「ハイイールド債発行の中国不動産会社、約3割が今年デフォルトに=GS」ロイター 2022年5月20日

不動産開発会社の中には既にデフォルトを起こしている企業も沢山あります。例えば、中堅の不動産開発会社である中梁控股集団が2022年1月に10億8600万ドルの債務不履行を引き起こしたほか、大手の世茂集団も同年7月に10億2,000万ドルの債務不履行を起こしています。

さらに、最大手の恒大集団は債務整理に取り組んでいることを理由に決算書の開示を延期するなど、事態は混沌としています。中国の不動産開発会社全体の負債額は合計で5兆ドル(1ドル=130円でおよそ650兆円)に達すると推計されており、バブル崩壊の影響は計り知れません。

中国政府は不動産バブル崩壊を阻止するため躍起になる?

中国政府はバブル崩壊を阻止するため躍起になっているようです。

これまで、中国政府は恒大集団をはじめとする不動産開発会社の多くを救済せず、倒産させる姿勢を示していました(参照:「中国当局、中国恒大の破綻の可能性に備えるよう地方政府に指示-報道」ブルームバーグ)。しかし、最近の景気減速懸念を受けて、不動産バブル崩壊を阻止する方向に方針転換を図っています。

その傾向は上半期の指標が出そろった8月以降、特に顕著に出ています。2022年8月1日に中国人民銀行が、「不動産部門における安定的かつ秩序ある融資手段を維持する」と言明した他、8月16日には「一部の民間不動産開発会社が発行した国内債を保証するよう指示」するなど、かなり大胆な方策をとっています。

中央政府がどこまで救済するのか、依然として不透明な部分が残っていますが、世界経済にとっては朗報です。不動産バブルのソフトランディングを期待しましょう。

【ロイターの報道から見る中国政府の動向】

配信日 ロイターの記事タイトル 報道内容
2022年8月19日 中国規制当局、中小銀行の改革推進表明 リスク抑制へ 中小銀行の「リスク管理と内部統制の強化」を促し、資本補填を支援する。
2022年8月18日 中国当局、一部銀行の不動産業界向け融資を調査=関係筋 中国銀行保険監督管理委員会(金融機関の管理当局)が、一部の国内・外国金融機関の不動産業界向け融資の内容を調査。
2022年8月17日 中国副首相、消費促進に向け一層の努力要請 胡春華副首相が、軟調な経済がさらに鈍化する兆しを見せている中で、サービスや高額商品への支出を含む国内消費の回復を加速させるために一層効果的な措置を取る必要があると発言。
2022年8月16日 中国、民間不動産会社の国内債を保証=関係筋 中国規制当局は国有の金融保証保険会社、中債信用増進投資に対し、一部の民間不動産開発会社が発行した国内債を保証するよう指示した。
2022年8月15日 中国、不動産デベロッパーの合理的な資金需要に対応へ=国内紙 中国銀行保険監督管理委員会が、未完成の住宅プロジェクトの引き渡しを支援するため、融資を継続するよう銀行を指導。不動産開発業者の合理的な融資需要に対応する方針を示す。
2022年8月1日 中国、不動産部門で安定かつ秩序ある融資手段維持へ=人民銀 中国人民銀行が、不動産部門における安定的かつ秩序ある融資手段を維持すると言明。

 

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