第14期全国人民代表大会第2回会議の内容と日本への影響

第14期全国人民代表大会第2回会議の内容と日本への影響

第14期全国人民代表大会第2回会議の内容と日本への影響

この記事のポイント
  • 第14期全国人民代表大会第2回会議が2024年3月5日に開幕し、李強総理が政府活動報告を行いました。政府活動報告では2023年の活動の成果として、国内総生産(GDP)成長率5.2%・都市部新規雇用者数1244万人を達成したこと、新エネルギー車の生産販売台数が世界の60%超となったこと、電気自動車、リチウム電池、太陽電池の「新御三家」の輸出が30%近く増加したことなどが報告されました。そして、同時に2024年の主要目標が発表され、GDP成長率約5%、都市部新規雇用者数1200万人以上、単位GDPエネルギー消費量約2.5%低減等が公約として掲げられました。しかし、大規模な景気刺激策が実施されなかったことで、株価はほとんど反応しませんでした。
  • 第14期全国人民代表大会第2回会議において、「電気自動車、リチウムイオン電池、太陽電池製品」、「量子技術や生命科学」、「AI」、「計算資源システム」などの分野に重点的に取り組む方針が明示されました。したがって、これら分野の関連銘柄は引き続き好業績が期待できそうです。電気自動車やリチウムイオン電池に関していえばGSユアサやパナソニック、太陽電池関連としては東洋炭素などが有望かもしれません。また、量子コンピュータ関連としては、富士通やNTTなどが関連銘柄として挙げられます。これらの銘柄には要注意です。

第14期全国人民代表大会第2回会議が開催される

「第14期全国人民代表大会第2回会議の様子」人民網日本語版より

「第14期全国人民代表大会第2回会議の様子」人民網日本語版より

第14期全国人民代表大会第2回会議が2024年3月5日に開幕し、李強総理が政府活動報告を行いました。

政府活動報告では2023年の活動の成果として、国内総生産(GDP)成長率5.2%・都市部新規雇用者数1244万人を達成したこと、新エネルギー車の生産販売台数が世界の60%超となったこと、電気自動車、リチウム電池、太陽電池の「新御三家」の輸出が30%近く増加したことなどが報告されました。そして、同時に2024年の主要目標が発表され、GDP成長率約5%、都市部新規雇用者数1200万人以上、単位GDPエネルギー消費量約2.5%低減等が公約として掲げられました。

今回の記事では、この活動報告の内容に対する市場の反応と日本への影響についてまとめたいと思います。

MEMO
全国人民代表大会は中国の国会にあたる立法機関です。全人代は省・自治区・直轄市・特別行政区の人民代表大会及び中国人民解放軍から選出された代表によって構成され、向こう1年間の政治や経済、社会の各分野にわたる政策運営方針を審議し、国防費を含む予算案が承認されます。

積極的な政府支援が表明されなかったことから株価は横ばい…

「香港ハンセン株価指数の週足チャート(2024年3月8日時点)」TradingViewより

「香港ハンセン株価指数の週足チャート(2024年3月8日時点)」TradingViewより(画像はすべてクリックすると拡大します)

全国人民代表大会では、2024年のGDP成長率目標が5%に設定され、2023年に引き続き高成長が維持されるとの方針が示されました。しかし、株式市場の反応は冷淡であり、2021年初頭のピーク時から反転の兆しを見せていません。その理由は、市場が期待していた大規模な財政政策・金融政策が示されなかったことにあります。

中国の全国人民代表大会が5日開幕し、李強首相は2024年の経済成長率目標を5%前後に設定すると表明した。また、国の発展モデルを転換させ、企業の余剰能力を抑え、不動産部門や地方債務のリスク抑制に取り組む方針を示した。李首相は就任後初となる政府活動報告で「われわれは最悪シナリオを見失うことなく、全てのリスクと課題に備えるべき」と訴えた。「とりわけ成長モデルの転換を推進し、構造調整を進め、質を改善して成果を高める必要がある」と語った。今後の具体的な構造改革策は示さなかった。李首相はまた、安定が「われわれの全ての行動の基礎」を成すと強調した。成長率目標は昨年と同水準に据え置かれたが、李氏は達成が「容易ではない」と指摘。積極的な財政政策と穏健な金融政策を実施する考えを示した。成長目標は「雇用や所得を押し上げ、リスクを予防・解消する必要性」を考慮に入れたとした。 ロイター2024年3月5日「中国成長率目標は5%前後で据え置き、経済モデル転換確約 全人代開幕」より

李強総理は2024年度の目標達成に向けた経済対策として、「古い消費財の新製品への買い換えを奨励・推進し、ICV・新エネルギー車、電子製品などの大規模な販売を下支えすること」、「製造業分野の外資参入制限を全面的に撤廃し、通信や医療などサービス業の市場参入条件を緩和すること」などの取り組みを挙げ、成長戦略として「量子技術や生命科学などの新たな分野を切り開く」方向性を示しました。そしてその上で、2024年のGDP成長率目標達成は「容易ではない」と指摘し、経済活性化に向けた追加の景気刺激策を導入する考えを表明しています。

「2023年1~12月までの不動産開発投資の内訳」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

「2023年1~12月までの不動産開発投資の内訳」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

2023年のGDP成長率5.2%を実現しているにもかかわらず、李強総理が強い危機感を示しているのは、中国経済の実態が表面的な数字に比べ酷く悪化しているためだと考えられます。実際、中国のGDPの3割程度を占めるとされる不動産セクターは苦境が続いており、特に民間の不動産開発投資額は前年比△9.6%と大きく落ち込んでいます。新築不動産価格もほとんどの地域で前月比・前年比割れを起こしていることからも、実体経済が相当傷ついていることが分かります。

加えて、中国の若者の失業率をめぐっては去年6月に過去最悪となる21.3%に達したことが発表された後、中国政府は調査方法を見直すなどの理由で発表を取りやめにする事態に陥っています。今年1月に公表された調査方法変更(在学中の学生を除いた)後の2023年年間の失業率も14.9%に達していたことから、やはり中国経済は苦境に立たされているようです。米中対立の先鋭化、反スパイ法改正による捜査権限の拡大、尖閣諸島・南沙諸島などでの覇権主義的な行動など、政府の強権的な政治体制によってさらに景気が悪化する可能性も高いと思われます。

中国人民銀行(中央銀行)は2024年2月5日に1兆元(約21兆円)の長期資金を市場に放出したり、同20日には住宅ローン金利の目安となる事実上の政策金利を0.25%引き下げるなどの対策をとっていますが、焼け石に水の状態です。株式市場が大きく反発するような大規模な景気刺激策の導入が待たれます。

第14期全国人民代表大会第2回会議の重要事項と日本への影響

新三種「貿易の規模安定化と構造最適化を推進し、電気自動車、リチウムイオン電池、太陽電池製品の「新三種」の輸出額が 30%近く増えた」、未来産業「未来産業発展計画を策定し、量子技術や生命科学などの新たな分野を開拓し、未来産業先導区を数多く設立する」、AI+「ビッグデータや人工知能(AI)の研究・開発・応用を深め、「AI+」行動を展開し、国際的競争力のあるデジタル産業クラスターを育成する」、国規模の計算資源システム「デジタルインフラを適度に先行的に構築し、国規模の計算資源システムの整備を加速させる」 人民網日本語版2024年3月6日「政府活動報告の新語・重要語から重点を整理」より一部抜粋

第14期全国人民代表大会第2回会議において、「電気自動車、リチウムイオン電池、太陽電池製品」、「量子技術や生命科学」、「AI」、「計算資源システム」などの分野に重点的に取り組む方針が明示されました。したがって、これら分野の関連銘柄は引き続き好業績が期待できそうです。

電気自動車やリチウムイオン電池に関していえばGSユアサやパナソニック、太陽電池関連としては東洋炭素などが有望かもしれません。また、量子コンピュータ関連としては、富士通やNTTなどが関連銘柄として挙げられます。こうした企業の業績にプラスの影響が出るのはもちろんですが、中国企業と協力してAI技術盗んだ中国籍のグーグル元エンジニアが起訴されるなど、知的財産の侵害も問題になっています。中国の動向には注意が必要です。

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