目次
誰でもわかる安全性分析①―流動性分析―|投資の知識
- 安全性分析とは、企業が長期間安定して事業活動を行えるかどうかを調べることです。企業が長期間安定して事業活動を行うには、企業がどれだけの資産を保有し、どれだけの負債を背負っているかが重要になります。そのため、安全性分析は貸借対照表の各区分を比較・対照して行われます。
- 流動性分析とは、企業の短期的な支払能力を調べることで、流動比率と当座比率という2つの指標で構成されます。これらの指標を用いて分析を行うことで、短期的な資金繰りに問題のある企業を簡単に見つけ出すことができます。
- 流動比率とは、1年以内に返済しなければならない流動負債を、流動資産でどの程度賄えるか示す指標です。流動比率は短期的な支払能力の有無を表し、この比率が高ければ高いほど良いと判断できます。
- 当座比率とは、流動資産のうち即時に現金化できる当座資産を使って、流動負債の返済能力を明らかにする指標です。当座比率は一般的に100%以上が望ましいとされ、高ければ高いほど財務内容が良いと判断されます。
- 一見すると流動比率に問題がなさそうに見えても、短期的な資金繰りがひっ迫しているケースが多々あります。当座比率を確認することで、企業実態をより正確に把握することができます。
安全性分析とは?
安全性分析とは、企業が長期間安定して事業活動を行えるかどうかを調べることです。企業が長期間安定して事業活動を行うには、企業がどれだけの資産を保有し、どれだけの負債を背負っているかが重要になります。そのため、安全性分析は貸借対照表の各区分を比較対照して行われます。
安全性分析には大きく分けて、流動性分析と財務健全性分析の2つに分けられます。流動性分析とは、流動資産と流動負債の関係性に注目することで、企業の短期的な資金繰りに問題がないか調べることです。今回の記事ではこの流動性分析を中心に取り上げたいと思います。
流動性分析とは?
流動性分析とは、企業の短期的な支払能力を調べることで、流動比率と当座比率という2つの指標で構成されます。これらの指標を用いて分析を行うことで、短期的な資金繰りに問題のある企業を簡単に見つけ出すことができます。
流動比率とは?
流動比率とは、1年以内に返済しなければならない流動負債を、流動資産でどの程度賄えるか示す指標です。流動比率は短期的な支払能力の有無を表し、この比率が高ければ高いほど良いと判断できます。一般的にはこの比率が200%以上あれば安全とされ、100%を下回ると負債が資産を上回ることから危険であると判断されます。
ただし、流動資産にはたな卸資産など現金化しにくい資産も含まれます。たな卸資産は表面上の価格と実質的な市場価値が異なることも多いため、みかけの流動比率が高くても財務上の問題を抱えている場合があります。また、流動比率は業種や企業にって大きく変わるので、解釈の際には注意が必要です。
【計算式】
$$流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100$$
当座比率とは?
当座比率とは、流動資産のうち即時に現金化できる当座資産を使って、流動負債の返済能力を明らかにする指標です。当座資産は現預金、売掛金や短期貸付金のような営業債権、売買目的の有価証券や営業外債券など、換金しやすい資産が中心となっています。
当座資産を使って分析を行う理由は、流動資産にはたな卸資産のような担保としての価値が疑わしいものが含まれているからです。当座資産に限定して比率を計算することで、企業の短期的な支払能力をより厳密に測ることができます。
当座比率は一般的に100%以上が望ましいとされ、高ければ高いほど財務内容が良いと判断されます。ただし、こちらの比率も業種や企業にって大きく変わるので、解釈の際には注意が必要です。
【計算式】
$$当座比率(%)=当座資産÷流動負債×100$$
流動比率と当座比率のスクリーニング方法
楽天証券のスーパースクリーナーを使えば、流動比率や当座比率で簡単にスクリーニングをかけることができます。
楽天証券にログイン後、上のタブから「国内株式」を選択し→「スーパースクリーナー」をクリックします。
次に、スーパースクリーナー画面の左下部分にある「詳細検索項目」をクリックします。
その後、ポップアップ画面の「財務」から「流動比率」や「当座比率」をクリックすれば、各銘柄ごとに流動比率と当座比率が表示されます。
一般的には流動比率が200%以上あれば安全とされ、100%を下回ると負債が資産を上回ることから危険と判断されます。また、当座比率は一般的に100%以上が望ましいとされています。ただし、どちらも業種や会社によって異なるので、注意が必要です。
なお、流動比率も当座比率もどちらも流動負債と比較した指標になるため、両方同時にスクリーニングをかける必要はありません。当座比率は流動資産の範囲を絞ってより厳格に計算する指標なので、当座比率だけスクリーニングすれば十分だと思います。
流動比率と当座比率のランキング
最後に、2021年5月時点の流動比率のランキングベスト3社と当座比率のワーストランキング上位3社を見ていきたいと思います。
流動比率のランキング1位はリボミック(4591)です。リボミックは東大発の創薬ベンチャーで、RNA(リボ核酸)を利用した分子標的薬(アプタマー医薬)を開発しています。流動比率は5173%、当座比率は5170%となっています。
2位のエーワン精密(6156)はコレットチャック、自動旋盤用カム、切削工具研磨の専門メーカーで、小ロットと短納期を武器に高利益率・無借金経営を行っています。流動比率は4554%、当座比率は4409%となっています。
3位のサイバーダイン(7779)は装着型サイボーグHALを開発する筑波大学発のベンチャー企業です。流動比率は4286%、当座比率は4159%となっています。
ランキングの上位3社すべてが流動比率と当座比率がともに4000%を超えており、豊富な現預金を持つ実質無借金経営の会社であることが分かります。
もっとも、1位のリボミックと3位のサイバーダインは研究開発型のベンチャー企業なので、毎期連続して赤字を計上しています。豊富な流動資産を取り崩しながら事業活動を続けている状態なので、今後の成長が期待できません。流動比率や当座比率が高いからといって、むやみに投資してはいけないことが分かります。
当座比率のワーストランキング上位3社を見ていきたいと思います。
ワースト1位は夢みつけ隊(2673)です。中高年男性向け趣味系通販サイトを運用しており、流動比率は126%、当座比率は5%となっています。
2位はイオン子会社のサンデー(7450)です。青森県を地盤に東北6県にまたがってホームセンターを展開しています。流動比率は75%、当座比率は12%となっています。
3位は不動産開発のLetech(3497)です。地主が多く権利関係が複雑な土地を取得し、権利調整後に収益物件化して売却する不動産開発事業を主にしています。流動比率は162%、当座比率は13%となっています。
ワースト3社に共通する点は、流動比率と当座比率の差が大きい点です。特にワースト3位のLetechは販売用不動産を多数所有しているため、流動比率162%に対して当座比率はわずか13%となっています。
実際にLetechの2021年7月期第2四半期のみてみましょう。流動資産310億円に対し、現預金は17億円しかありません。他に現金化しやすいものと言えば営業未収金が2億円あるだけで、残りの資産は販売用不動産しかない状況です。
一方、流動負債は203億円ほどあります。そのうち返済期限の短い短期借入金が42億円、1年以内に償還予定の社債が28百万円、1年以内に返済予定の長期借入金が128億円ほどあり、資金繰りに困っている様子が伺い知れます。
このように、一見すると流動比率に問題がなさそうに見えても、短期的な資金繰りがひっ迫しているケースが多々あります。当座比率を確認することで、企業実態をより正確に把握することができます。