【2023年7月】世界経済が中国の不動産バブル崩壊の直接的な影響を受けることはほぼない!

【2023年7月】世界経済が中国の不動産バブル崩壊の直接的な影響を受けることはほぼない!

【2023年7月】世界経済が中国の不動産バブル崩壊の直接的な影響を受けることはほぼない!

この記事のポイント
  • 中国の不動産市況は下落の動きを強めています。2023年7月の中国主要70都市の新築住宅販売価格指数はほとんどの地域で100%を割っており、新築価格が前月割れとなっている地域は49都市、前年割れの地域は44都市に拡大しています。また、中古住宅価格も前月割れの地域が7都市、前年割れの地域が5都市しかなく、ほとんどの地域で不動産価格が下落しています。
  • 不動産開発投資額もここにきて下落基調を強めており、2023年1月から7月までの不動産開発投資は前年比△8.5%の6兆7,717億元(1元=20円で約13兆4,340億円)と大きく沈んでいます。これに対し、中国政府は不動産開発企業への融資規制の緩和や利下げを行っていますが、回復の兆しは見えません。
  • 中国の不動産市況は悪化し、不動産開発会社を取り巻く環境は厳しさを増しています。しかしそれでも、海外企業が中国の不動産バブル崩壊の直接的な影響を受けることはほぼないと考えています。2023年1~7月までの不動産開発投資の内訳をみると、不動産開発会社の資金調達額は7兆8,217億元(約156兆4,340億円)となっていますが、そのうち海外からの資金調達額はわずか30億元(約600億円)に過ぎません。中国の不動産セクターが国内からの資金供給に依存していたこと、中国政府が海外からの大規模な不動産投資を制限していたことがかえって幸運を招いた格好です。したがって、中国で不動産バブルがはじけたからといって、世界経済がその直接的な影響を受けることはほぼないでしょう。

中国の不動産価格は下落の動きが強まる

「2023年7月の中国主要70都市の新築住宅販売価格指数」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

「2023年7月の中国主要70都市の新築住宅販売価格指数」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

中国の不動産市況は下落の動きを強めています。2023年7月の中国主要70都市の新築住宅販売価格指数はほとんどの地域で100%を割っており、新築価格が前月割れとなっている地域は49都市、前年割れの地域は44都市に拡大しています。新築住宅価格が前月・前年比で上昇していたのは、北京、上海、杭州、済南、長沙、海口、重慶、成都、西安、徐州、三亜、遵義の12都市しかなく、北京や上海などの大都市圏か、三亜のような高級リゾート地しかありません。需給が固そうな地域以外は軒並み不動産価格が下落している状態です。

「2023年7月の中国主要70都市の中古住宅販売価格指数」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

「2023年7月の中国主要70都市の中古住宅販売価格指数」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

こうした動きは中古不動産市場で特に顕著に表れています。中古住宅価格が前月割れの地域は7都市、前年割れの地域は5都市しかなく、ほとんどの地域で不動産価格が下落しています。中国雲南省の省都である昆明市だけは唯一前月・前年を上回っていますが、同市の不動産開発会社である昆明空港投資開発集団の22年の不動産開発収入がゼロだったこと(詳細は日経新聞の記事を参照ください「中国、再開できぬ建設現場 地方政府系の債券利回り上昇」)等を考えると、一時的な要因に過ぎないと思われます。

いずれにしても、新築・中古住宅価格が下落すると、将来の値下がりを見越した買い控えが起こるので、不動産価格はより一層下落していきます。中国の不動産市況の先行きはかなり不透明なものになるでしょう。

不動産開発投資額も下落基調に…

「中国の不動産開発投資の成長率の推移(2023年1~7月)」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

「中国の不動産開発投資の成長率の推移(2023年1~7月)」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

回復に向かうかに見えた不動産開発投資額も、ここにきて下落基調を強めています。2023年1月から7月までの不動産開発投資は前年比△8.5%の6兆7,717億元(1元=20円で約13兆4,340億円)と大きく沈んでおり、回復の兆しは見えません。

2022年11月11日のブルームバーグの報道(「中国、不動産業界に7.8兆円の追加支援-準大手行に資金供給指示」)によれば、「中国の監督当局は国内の一部銀行に対し、不動産セクター向けに11、12月で4000億元(約7兆8450億円)の追加資金支援を行うよう指示した」ようですが、現状では一時しのぎにすらなっていません。

また、中国の中央銀行である中国人民銀行は不動産市場の低迷を受け、2023年8月21日に事実上の政策金利とされる「LPR」という金利を0.1%引き下げて3.45%としましたが、引き下げ幅があまりにも小さく、企業の資金繰りも苦しいままとなっています。不動産開発会社を取り巻く環境が改善しない以上、不動産開発投資額は減少し続けそうです。

それでも、世界経済が中国の不動産バブル崩壊の直接的な影響を受けることはほぼない!

「2023年1~7月までの不動産開発投資の内訳」中国国家統計局資料より

「2023年1~7月までの不動産開発投資の内訳」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

これまでみたきたように、中国の不動産市況は悪化し、不動産開発会社を取り巻く環境は厳しさを増しています。恒大集団や碧桂園などの不動産開発大手企業までもが倒産の危機に瀕しており、中国不動産セクターは壊滅的な打撃を受けています。しかしそれでも、海外企業が中国の不動産バブル崩壊の直接的な影響を受けることはほぼないと考えています。というのも、中国不動産セクターへの資金供給の大部分が国内投資によって賄われているからです。

上の2023年1~7月までの不動産開発投資の内訳をみると、不動産開発会社の資金調達額は前年同期比11.2%減の7兆8,217億元(約156兆4,340億円)となっていますが、そのうち海外からの資金調達額はわずか30億元(約600億円)に過ぎません。不動産企業への融資が厳格化される前の2019年の数字を見ても、その額はたった176億元(約3,520億円)しかありません。したがって、中国国内で不動産バブルがはじけたからといって、それが直接的に世界経済に影響を与えることはなさそうです。

また、日本では1990年にバブルが崩壊して今もなおその影響を引きずっていますが、バブル経済が日本国内からの資金供給によって支えられていたため、それが崩壊したからといって世界経済が不況に陥ることはありませんでした。よって、今回の中国の不動産バブル崩壊も日本と同じ経過をたどると思われます。不動産バブルが崩壊し、中国経済が悪化することで、経済不況の間接的な影響を受けるかもしれません。しかし、世界経済が中国の不動産バブル崩壊の直接的な影響を受けることはほぼないでしょう。過度に心配する必要はないと思われます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA