【会計不正のオンパレード】colaboの再調査結果がおもしろい(5)

【会計不正のオンパレード】colaboの再調査結果がおもしろい(5)

【会計不正のオンパレード】colaboの再調査結果がおもしろい(5)

この記事のポイント
  • colaboに対する再調査の報告書を読みましたが、またしても衝撃的な内容でした。今回は紙幅の都合上、特に(9)宿泊支援費~(10)車両関連費の部分を中心に見ていきたいと思います。
  • (9)宿泊支援費については「生活習慣立て直しのための合同宿泊訓練を目的としたものや、地元で同様の支援を受けることが難しい支援対象者との定期的な面談」を目的とした都外遠隔地での宿泊が「事業実施上必要性が認められる」と判断されたことが特に問題です。
  • 東京都若年被害女性等支援事業実施要綱をみると、就業や生活資金を確保するなどの生活に必要な情報提供や支援を行うことが目的とされています。居場所の提供は一時的な保護(1日から2日)が原則であることも踏まえると、colaboの説明はかなり異常です。そもそも連携先の行政機関に確認すれば事実が簡単に明らかになるはずですが、なぜか調査が不十分なまま終了しています。
  • (10)車両関連費については、①月極駐車場代は車両に関する費用ではないので「地代家賃」に計上するのが普通です。また、②タイヤが未使用の場合は発生主義の原則から費用として処理することができません。実態が分かりませんが、不正会計が示唆されます。最後に、➂「バスカフェ事業は委託事業に含まれない可能影が高い」こと、「バスカフェ事業以外の費用とするなら委託事業とそれ以外の事業とで按分計算しなければならない」ことも指摘しておきます。

colabo再調査の結果は?

東京都若年被害女性等支援事業について当該事業の受託者の会計報告に不正があるとして、当該報告について監査を求める住民監査請求に係る勧告に基づき知事が講じた措置について

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東京都福祉保健局がcolaboを再調査した結果、2023年3月3日に上のような報告書が公開されました。前回は(7)消耗品費~(8)旅費交通費までをみてきたので、今回はその続きの部分に触れていきたいと思います。

不正だらけの(9)宿泊支援費

「colabo再調査結果の報告書(宿泊支援費部分)」東京都監査局事務局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

「colabo再調査結果の報告書(宿泊支援費部分)」東京都監査局事務局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

宿泊支援費の調査結果は不正だらけでした。領収書があるものの支援内容の説明が不十分なものが見つかった他、受領者に関する一部の情報の提示を団体側が拒否して領収書の内容全てを確認できないものもあるなど、会計不正を強く疑わせるものとなっています。

特に問題なのは、「生活習慣立て直しのための合同宿泊訓練を目的としたものや、地元で同様の支援を受けることが難しい支援対象者との定期的な面談」を目的とした都外遠隔地での宿泊が「事業実施上必要性が認められる」と判断されたことです。

生活習慣立て直しのための合同宿泊訓練と称して宿泊費支援費を計上するのは妥当か?

「自立支援の委託内容について」東京都若年被害女性等支援事業実施要綱より

「自立支援の委託内容について」東京都若年被害女性等支援事業実施要綱より(画像はすべてクリックすると拡大します)

東京都若年被害女性等支援事業実施要綱をみると、自立支援の内容は「①利用者の新たな居住地に関して、利用者に対し情報提供や助言を行い、併せて関係機関への同行支援及び連絡調整等を図る。②利用者が自立して生活するために、就業についての情報提供や助言を行い、ハローワークなど関係機関への同行支援及び連絡調整等を図る。③生活資金を確保するための福祉サービス(生活保護等)についての情報提供や助言を行い、福祉事務所などの関係機関への同行支援及び連絡調整等を図る。④性暴力被害や虐待等による心理的ケアや感染症検査等が必要となる利用者については、医療機関と十分な連携を図った上で支援すること。⑤その他の利用者の自立に向けた必要な支援を行う」こととされています。

いずれも就業や生活資金を確保するなどの生活に必要な情報提供や支援を行うことを目的としており、「生活習慣」を直すことは目的とされていません。事業の名称が若年「被害」女性支援事業となっていること、生活習慣の立て直しとDVなどの被害を受けることに因果関係がないことを考えれば、それも当然でしょう。

「居場所の提供に関する支援について」東京都若年被害女性等支援事業実施要綱より

「居場所の提供に関する支援について」東京都若年被害女性等支援事業実施要綱より(画像はすべてクリックすると拡大します)

また、東京都若年被害女性等支援事業実施要綱をみると、居場所の提供は一時的な保護(1日から2日)が原則であるとされています。都外遠隔地での宿泊はいずれも1~2泊となっているので、移動時間を考えれば保護が必要な期間を超過してしまいます。

さらに、委託内容を確認すると、長期的な保護が必要な場合は「都の判断により引き続き居場所での支援を実施することができることとする」とされています。都外遠隔地に宿泊する前に事前申請していれば別ですが、具体的な支援計画もなく経費負担だけを都に押しつけるのは委託の範囲を超えています。明らかに違法でしょう。

「地元で同様の支援を受けることが難しい支援対象者との定期的な面談のため」というのは本当か?

「相談及び面談、関係機関連携会議の設置についての内容」東京都若年被害女性等支援事業実施要綱より

「相談及び面談、関係機関連携会議の設置についての内容」東京都若年被害女性等支援事業実施要綱より(画像はすべてクリックすると拡大します)

colaboは都外宿泊の目的を「地元で同様の支援を受けることが難しい支援対象者との定期的な面談のため」としていますが、そもそも事業エリアは都内に限られています。

加えて、「アウトリーチ支援若しくはや面談等の実施場所又は若年被害女性等が居住する地域の区市町村が、都又は都が事業の一部を委託等する社会福祉法人等からの連絡を受けて、若年被害女性等に提供する福祉サービスの実施機関として必要な支援を行うこと」とされています。

仮に面談が必要であっても「被害女性が居住する地域の区市町村が必要な支援を実施する」ため、連携先の行政機関に問い合わせをすればすぐにその事実が確認できるはずです。すべてを調べる必要はありませんが、都外宿泊の何件かは少なくとも確認する必要があると思います。再調査ではこうした最低限の調査すらされていないので、どこまで信用できるのかが分からない状況です。

すべてがデタラメな(10)車両関連費

車両関連費は月極駐車場代、タイヤ関係費用などが計上されている。支出の確認に当たっては、管理台帳に記載されている内容と領収書、銀行の振込履歴を突合した。その結果、車両維持費用498,247円、タイヤ関係費用138,600円、月極駐車場代446,200円の合計1,083,047円が支出されていることを確認した。一方で事業実績報告書では、タイヤ購入・交換費用が計上されているが、実際はタイヤ交換・保管費用であったことから、団体に対し、改めて実績報告書の記載内容に誤記が無いように指導した。

車両関係費はすべてがデタラメな内容となっています。

まず、①月極駐車場代は車両に関する費用ではないので「地代家賃(colaboで言えば事務所・居場所運営費)」という勘定科目に計上するのが普通です。次に、②「タイヤ購入・交換費用が計上されているが、実際はタイヤ交換・保管費用であったことから、団体に対し、改めて実績報告書の記載内容に誤記が無いように指導した」という文章についてですが、タイヤが未使用の場合は発生主義の原則から費用として処理することができません。実態が分かりませんが、不正会計が示唆されます。

最後に、➂前回の記事((8)旅費交通費の①)でみたように、「バスカフェ事業は委託事業に含まれない可能影が高い」という点、「バスカフェ事業以外の費用とするなら委託事業とそれ以外の事業とで按分計算しなければならない」という点にも留意する必要があります。

MEMO
発生主義の原則とは、「すべての費用及び収益は、その支出及び収入に基づいて計上し、その発生した期間に正しく割当てられるように処理しなければならない」という会計原則のことです。この原則を適用すると「使用していない物品の購入費用はその期の費用として計上してはならない」ということになります。

~続く

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