誰でもわかる空売り比率|投資の知識

誰でもわかる空売り比率 アイキャッチ

誰でもわかる空売り比率|投資の知識

この記事のポイント
  • 空売り比率とは「売り注文(売買代金の合計額)全体に占める空売り注文(売買代金の合計額)の割合」のことです。空売り比率の目安は市場によって異なりますが、東証一部(現在のプライム市場)とREITでは空売り比率の中央値が30%程度、それ以外の市場では5%程度とされています。
  • 空売り比率の特徴として、株価騰落率の絶対値が増えたときに空売り比率が増える傾向があります。また、2018年3月23日に史上初めて東京証券取引所の空売り比率が50%を超え(50.3%を記録し)ましたが、ここ最近(2022年9月1日、9月26日、9月28日、10月28日、12月29日、2023年1月5日など)50%超える日が増えています。今後の市場の動向には注意が必要です。

そもそも空売りとは?

空売りとは?

「空売りの仕組み」

「空売りの仕組み」

そもそも、空売りとは信用取引の一つであり「委託保証金を証券会社に担保として預託し、一定の範囲内で資金や株式を借りて売り建てる取引」を意味しています。

注意
ただし、証券会社や銀行などの機関投資家は、株主との交渉や契約によって株券等を直接借り受け、信用取引制度の枠外で空売りを行うことができます。

取引対象の株式を保有していなくても売り建てることができるので、決済期日(制度信用取引であれば6ヵ月、一般信用取引であれば無期限)までに株価が下落すれば、売り建て時の価格と決済時の差額から諸経費(証券会社から株式を借りるための貸株料など)を差し引いた金額がそのまま利益になります。

空売りのメリットとしては、①相場の下落局面でも積極的に利益を狙えること、②信用取引は保証金の3.3倍まで取引できるので、少ない手元資金でも効率的に投資を行うことができることなどが挙げられます。さらに、➂保有している銘柄が短期的に値下がりすると思えば、持分を担保に一定の割合を空売りすることで、ポジションを維持したまま投資リスクを減らすこともできます。

空売りに対する規制

「空売り規制の概要」日本取引所グループより

「空売り規制の概要」日本取引所グループより

空売りは保有していない株式を売り付ける行為であるため、大量に行うことで価格操作等に利用される恐れがあります。そこで、証券取引所(日本取引所グループ)は金融商品取引法および金融商品取引法施行令といった法律に基いて、様々な規制を設けることで市場の混乱を未然に防いでいます。

空売りに対する規則としては、①明示・確認義務、②価格規制、➂残高報告という3つの規制があります。まず、①明示・確認義務とは「注文を受け付けた取引参加者等が取引所に対して空売り注文か否かを明示する義務を負う」という規則です。次に、②価格規制とは「株価上昇局面では直近公表価格未満、株価下落局面では直近公表価格以下の価格での空売りが禁止される」というルールで、空売りする場合の価格に制限を加えることで相場の暴落を招くような取引を防いでいます。

最後の➂残高報告とは「発行済株式総数の0.2%以上の空売り残高がある場合に生じる報告義務」のことで、取引所では報告を受けたもののうち空売り残高割合が発行済株式総数0.5%以上のものについてウェブサイト等で公表しています。

空売り比率とは?

「2023年1月13日の空売り集計(日次)」日本取引所グループホームページより

「2023年1月13日の空売り集計(日次)」日本取引所グループホームページより

空売り比率とは「売り注文(売買代金の合計額)全体に占める空売り注文(売買代金の合計額)の割合」のことです。

売り注文には、所有している株式を売る「実注文」と持っていない株(借りてきた株)を売る「空売り注文」の2つの注文方法が混在しているため、空売り比率をみることで売買代金に占める空売り注文の割合を把握することができます。例えば、空売り比率30%の場合は「売り注文全体の代金のうち、空売り注文の代金の割合が30%であった」という意味になります。

空売り比率の目安・特徴

空売り比率の目安

「市場区分別の空売り比率の中央値の分布」JPXワーキングペーパー-東証売買内訳データ(信用取引・空売り)の分析より

「市場区分別の空売り比率の中央値の分布」JPXワーキングペーパー 東証売買内訳データ(信用取引・空売り)の分析より

空売り比率の目安(市場区分の再編前)は、市場一部とREITでは空売り比率の中央値が30%程度、それ以外の市場では5%程度とされています。空売りはあらかじめ株券を調達して行う必要があるので、流動性の高い銘柄(市場に流通している株式数が多く、取引が活発に行われている銘柄)ほど空売り比率が高くなる傾向があります。

なお、2018年3月23日に史上初めて東京証券取引所の空売り比率が50%を超え(50.3%を記録し)ましたが、ここ最近(2022年9月1日、9月26日、9月28日、10月28日、12月29日、2023年1月5日など)50%超える日が増えています。機関投資家が目先の株安を見越して空売りに動いたことが原因だと思われます。今後の市場の動向には注意が必要でしょう。

空売り比率の特徴

「株価騰落率の絶対値と空売り比率の相関係数のヒストグラム」JPXワーキングペーパー-東証売買内訳データ(信用取引・空売り)の分析より

「株価騰落率の絶対値と空売り比率の相関係数のヒストグラム」JPXワーキングペーパー 東証売買内訳データ(信用取引・空売り)の分析より

上の画像は株価騰落率の絶対値と空売り比率の相関係数を算出したものになります。表を見ると、相関係数は多くの銘柄でプラスの銘柄が多く、相関係数が0の銘柄や正の0.3~0.4間に一定の高さの山があり、株価騰落率の絶対値が増えたときに空売り比率が増える傾向にあることが分かります。

この点について、ワーキングペーパーでは高頻度取引(High Frequency Trading)事業者の影響を指摘していますが、正確なことはまだ分かっていません。株価が暴騰・暴落するタイミングで空売り比率が増え、変動幅が小さくなると空売り比率も下がるという事実が明らかにされているだけなので、その解釈には注意が必要です。

MEMO
高頻度取引(High Frequency Trading)とは、プログラムに従って短時間のうちに大量の高速取引を行うことです。ミリ秒(1000分の1秒)単位で取引を行うことから市場を混乱させる要因となっているという意見がある一方、市場に流動性を供給する(売り注文・買い注文の数が増えるので売買が成立しやすくなる)という声もあり、評価が定まっていません。

空売り比率の調べ方は?

空売り比率は「空売り集計」(日本取引所グループのHP)から調べられる

「空売り集計(日次・月次)」日本取引所グループより

「空売り集計(日次・月次)」日本取引所グループより

空売り比率は日本取引所グループの「空売り集計」というページから調べることができます。日次・月次・業種別に開示されているので、必要に応じて求めるデータをダウンロードすることができます。

個別銘柄の信用残高は「信用取引残高等」(日本取引所グループのHP)から調べられる

「信用残高情報」日本取引所グループより

「信用残高情報」日本取引所グループより

個別銘柄ごとの残高情報については日本取引所グループの「信用取引残高等」というページから調べることができます。一般信用取引・制度信用取引別の信用残高情報から週ごとの情報まで幅広くデータを収集することができます。

「空売りの残高に関する情報」日本取引所グループより

「空売りの残高に関する情報」日本取引所グループより

なお、空売り残高割合が0.5%以上のものについては別途「空売りの残高に関する情報」というページで詳細が公開されています。機関投資家ごとの空売り残高を把握できるので、各投資家の売買手法を分析することができます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA