中国のGDPが公表されるが…

中国のGDPが公表されるが…

中国のGDPが公表されるが…

この記事のポイント
  • 中国のGDP統計が発表されました。第1〜3四半期の国内総生産(GDP)は累計で87兆269億元(前年同期比3.0%増)、第3四半期単独で3.9%増となっています。
  • 一見すると楽観できる結果のようですが、中国の経済統計には政治的なノイズが含まれていて信頼できないこと、公表された数字(16歳から24歳までの人口の失業率17.9%等)も芳しくないことから先行きに不透明感が残ります。
  • さらに、習近平総書記が社会主義的な経済政策を選好することから、中国の株価指数は大きく下落。特にネット関連銘柄の影響が強いハンセン指数は、統制色の強い政策を嫌って、前日比6.36%と大きく値を下げています。今後の動向には注意が必要です。

一見好調な数字が並ぶが…

「中国のGDPが発表されたが…」中国国家統計局リリースより

「中国のGDPが発表されたが…」中国国家統計局リリースより

2022年10月18日に予定していたGDP統計の発表が、中国共産党第20期全国代表大会閉幕後の10月24日なってようやく行われました。公表を遅らせていたのでかなり酷い内容だと疑っていましたが、第1〜3四半期の国内総生産(GDP)は87兆269億元(前年同期比3.0%増)というまずまずの結果でした。

四半期別のGDP成長率をみると、第1四半期のGDPは前年同期比4.8%増、第2四半期は0.4%増、第3四半期は3.9%増となっており、回復傾向にあることが分かります。どうやら中国経済は不確実性が残るものの、持ち直しつつあるようです。

…という話を鵜呑みにはできません。次章でもう少し詳しく内容を精査していきたいと思います。

若年層の失業率は高止まりが続く…

「若年層の失業率は高止まり」中国国家統計局リリースより

「若年層の失業率は高止まりが続く」中国国家統計局リリースより

少し古い資料ですが「中国の地方GDP統計の信頼性」というレポートを読めば、中国の統計データがいかに信用できないかが分かります。また、少なくとも今回の発表に関して言えば、公開されたデータだけを見ても中国経済に対する疑念が深まる内容となっています。

例えば、上記GDP数値が発表されたのと同じ記事にある、失業率のデータをみれば分かります。2022年第3四半期の都市部の失業率は5.4%で第2四半期より0.4%ポイント低下しましたが、9月の都市部での失業率は5.5%で前月より0.2ポイント上昇しています。また、25歳から59歳までの人口の失業率は4.7%なのに対して、16歳から24歳までの人口の失業率17.9%となっています。

「中国の都市部の失業率の推移」アイワザ投資大学より

「中国の都市部の失業率の推移」アイワザ投資大学より

上海ロックダウンから回復しつつあった失業率が9月に入ってなぜか軟化、若年層の失業率も7月の19.9%に比べれば改善していますが、17.9%と依然として高止まりしています。景気が回復基調にあるなら9月の失業率が僅かとは言え悪化するのはおかしいですし、失業率の世代間格差については2022年年頃から明らかに異常値が続いています。

このように、今回の発表は統計データに対する不信感が強まるばかりか、仮にデータが正しかったとしても中国経済に対する疑念が深まる内容と言えます。

MEMO
一般的に若年層の失業率は平均失業率の2倍程度になります。中国で言えば、若年層の失業率が10%程度あるのは分かりますが、15%を超えるのは異常だと考えています。

経済政策に対する不透明感も増す

「習近平総書記が目指す中国の将来像も良くわからない」中国国家統計局リリースより

「習近平総書記が目指す中国の将来像も良くわからない」中国国家統計局リリースより

習近平総書記が目指す方向性が分からず、経済政策に対する不透明感が増している点も問題です。

今回のGDP発表では文末に“At the next stage, we must follow the guidance of Xi Jinping Thought on Socialism with Chinese Characteristics for a New Era and fully study and implement the spirits of the 20th National Congress of the Communist Party of China. (次の段階では、「新時代の中国の特色ある社会主義」に関する習近平思想の指導に従い、中国共産党第20回全国代表大会の精神を十分に学習し、実行に移さなければならない。*DEEPL翻訳)”という記述があり、習近平総書記の独裁色が強くなっていることが分かります。

過去記事(「共同富裕とロックダウンで中国の株価は大暴落。日経平均も要注意!」)でも取り上げたように、習近平総書記は社会主義的な政策を強く推進するため、いつ、どんな産業に打撃が加えられるか分かりません。

過去の政策を思い返しても、不動産開発会社に対する融資規制は理解できますが、学習塾の非営利化、オンラインプラットフォーム事業者やゲーム関連事業者に対する規制強化など、良くわからない政策をいくつも実行に移しています。こうした実績があるだけに、同氏の今後の動向には注意が必要です。

株価は下落し、警戒モードに

「中国の株価指数の推移(左:上海総合指数の日足チャート、右:香港ハンセン指数の日足チャート)」

「中国の株価指数の推移(左:上海総合指数の日足チャート、右:香港ハンセン指数の日足チャート)」

中国共産党第20期全国代表大会やGDP速報値の発表を受けて、株価は早くも下落し、警戒モードに入っています。

上海総合指数は2,977.56ポイント(前日比△2.02%)で引けており、香港ハンセン指数に至っては15,180.69(前日比△6.36%)と大きく値を下げています。特に、ハンセン指数はアリババ集団や騰訊控股(テンセント)などのネット関連銘柄の影響が強いので、習近平総書記が進める統制色の強い政策に懸念を抱いたのかもしれません。

いずれにしても、やはり中国関連のニュースから目が離せません。

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