【どうなった?】恒大集団の現状について…

【どうなった?】恒大集団の現状について… アイキャッチ

【どうなった?】恒大集団の現状について…

この記事のポイント
  • 恒大集団の現状は、①2021年12月期決算書が未提出、②それに伴って2022年3月21日以降の株式の売買が停止、➂清算の申し立て(総額8億6,250万香港ドル分)の審理が2022年11月28日に再開する予定となっています。
  • 同社は2022年1~6月までの業績について売上高122億6,000万元(前年同期は2,226億9,000万元)、販売面積1.193百万平方メートルを達成したとしていますが、業績の落ち込み方が酷く、監査を受けたわけでもないので何とも言えない状況です。また、プロジェクトの再開も強調していますが、事業環境があまりにも不透明なことから、今後の業績に関しても正直言葉に困ります。
  • 倒産は間違いないでしょうが、緩やかに計画倒産(例えば、中国元建て債券だけを完済して外貨建て債券に関しては踏み倒す等)させるのではないかと考えています。

中国政府の突然の規制強化で倒産の危機に…

「三条紅線の概要と順守状況」2021年9月29日第123期-MUFG-Bank(China)経済週報より

「三条紅線の概要と順守状況」2021年9月29日第123期MUFG Bank(China)経済週報より(画像はすべてクリックすると拡大します)

倒産が噂されていた恒大集団ですが、2022年11月末頃から再度動きをみせそうなので、これまでの経緯と現状を簡単にまとめてみたいと思います。

そもそも、恒大集団が倒産の危機に陥ったのは、中国政府の突然の規制強化が発端でした。「三条紅線」という不動産開発会社に対する融資規制が導入された結果、一定の財務条件を満たさない企業への融資額が極端に減らされ、資金繰りが困難になる企業が続出しました。

「恒大集団の返済期日別の負債額」2021年12月期中間決算より

「恒大集団の返済期日別の負債額」同社2021年12月期中間決算書より(画像はすべてクリックすると拡大します)

恒大集団も例外ではありませんでした。三条紅線が規定する3つの基準すべてに違反していたことから、資金調達ができなくなって2021年末には債務不履行(デフォルト)に陥りました。また、業界全体が資金難に苦しんでおり、保有資産の投げ売りや買い控えが起きたことで不動産市況も次第に軟化。恒大集団は一気に倒産の危機に追いやられました。

なお、同社は2021年6月末時点で、2兆3,775億元(1元=20円換算で約47兆5,500億円)の資産を所有し、1兆9,665億元(約39兆3,300億円)の負債を抱えています。形式的には4,110億元(約6兆9870億円)の資本があることになっていますが、資産の大半が不動産を占めており、自由に使える手許現金は867億元(約1兆7,340億円)しかありません。同社が倒産した場合、計り知れない規模の被害が出る恐れがあります。

2021年12月期の決算書類の監査が完了せず株式の売買を停止…

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資金繰りが厳しきなった恒大集団は、2022年3月21日に必要な監査手続きが完了しなかったとして、決算書類の提出の延期を発表しました。その理由については新型コロナウイルスの蔓延が主因であるとされていますが、個人的には破産状態にあることを隠そうとしているのだと推察しています。

実際、同社は2021年半ば頃から財務内容が著しく悪化し、同年末には債務不履行を起こしています。2021年末頃から債務再編に向けて海外の債権者と協議をしているようですが、実現性のある債務再編計画を提示できおらず、2022年7月中に暫定的な債務再編案を公表するという約束も反故にしています。

「恒大集団の日足チャート」内藤証券より

「恒大集団の日足チャート」内藤証券より(画像はすべてクリックすると拡大します)

なお、恒大集団は同日に香港証券取引所に対して株式売買の停止を要請しています。普通なら事実確認のために何らかの措置が取られそうですが、同社の申請はなぜかすんなりと認められ、現在(2022年10月末)に至るまで同社の株式は売買停止中となっています。恒大集団がすぐに倒産すると中国経済へ与えるダメージが深刻なものとなるため、政府ぐるみで計画倒産に誘導するつもりなのかもしれません。

清算の申し立てが受理され、現在は審理の再開待ち

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2022年6月24日に恒大集団に対して一部の債権者(Top Shine Global Limited of Intershore  Consult (Samoa)  Limited)から清算の申し立て(清算請願)が行われ、これが香港特別行政区高等法院に受理されています。申し立ての内容は恒大集団の子会社「房车宝」株式の買戻し権に関わるもので、申立人は総額8億6,250万香港ドル(1香港ドル=18円で約155億2,500万円)の弁済を要求しています。

恒大集団が抱える負債額から見れば大した数字ではありませんが、仮に清算の申請が許可された場合、裁判所は債務を返済するために保有資産を売却するよう会社に命じる(清算命令を出す)ことができるため、同社の再編計画やそのスケジュールに大きな影響が出ることが予想されます。さらに、他の債権者から新しい訴訟が提起される可能性もあるので、同社にとっては厄介な案件です。

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恒大集団はこの訴訟に対して、新型コロナウイルスが蔓延していること、債務整理が進んでいることを理由に審理の延期を求め、今のところ裁判所はこれを受け入れています。審理の再開は2022年11月28日の予定とされているので、同社がそれまでに何らかの再編案を提示できるかがポイントとなっています。

注意
上の文章では再開日が11月7日とされていますが、2022年9月8日に香港特別行政区高等法院から再度通知があり、再開日が11月28日に変更されています。

なお、中国の裁判制度上、外国に関わる民事案件の審理期間は法律上明確に規定されておらず、結審までにはさらに時間がかかることが予想されます。2021年1月に倒産の申し立てが行われた海航集団の結審もまだのようなので、少なくとも審理期間は1~2年以上になると思います。したがって、恒大集団のXデーは2024~25年以降になりそうです。

恒大集団の2022年上半期の業績について

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恒大集団は2021年12月期の決算書類を提出できていませんが、清算の申し立てを提起されたことが影響してか、2022年上半期の業績を開示しています。

それによると、2022年1~6月までの累計で売上高122億6,000万元(1元=20円で約2,452億円)、販売面積1.193百万平方メートルを達成。また、販売済み・進行中の開発プロジェクトについてはそのうちの96%で建設を再開し、労働者の数も通常時の86%まで回復したと主張しています。

一見すると事業活動が再び軌道に乗り始めたような印象を持ちますが、前年同期の売上高が2,226億9,000万元(約4兆4,538億円)だったこと、前期決算の監査すら完了していない現実を思い返せば、かなりの瀬戸際に立たされていることが分かります。

現在、中国政府は不動産開発会社に対する融資規制の緩和などに取り組んでいますが、不動産市況の落ち込みがあまりにも激しく、市中銀行が融資を躊躇っている状況です。どんな未来が待ち構えているかは分かりませんが、一投資家としてはソフトランディング(大きな問題を起こさずに解決すること)を願っています。

MEMO
なお、上記の文章の後半部分では債務再編計画について触れていますが、デューデリジェンス(Due Diligence:資産価値の査定やリスクの洗い出しなど、財務内容を調査すること)にまだまだ時間がかかること、具体的な内容を年内に公表する予定であることしか述べていません。具体的な計画を提示しているわけでも、債務者と合意に達したわけでもないので、詳細については割愛します。

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