ドリームインキュベータ(4310):ファンドによる買い占め。狙われているのは子会社のアイペット株か?|注目銘柄分析

ドリームインキュベータ(4310):ファンドによる買い占め。狙われているのは子会社のアイペット株か?|注目銘柄分析

この記事のポイント
  • ドリームインキュベータ(4310)が投資ファンドに買い占められた背景には、「親子関係のねじれ」が関係しています。
  • ドリームインキュベータはアイペットホールディングス株(時価総額約240億円)の56.1%を保有して連結子会社化していますが、11月末時点の同社の時価総額は80億円にすぎませんでした。これは保有するアイペットホールディングス株の時価総額(約135億円:240億円×56.1%)を大きく下回っており、理論価値からかなりかけ離れていました。
  • 連日の高騰でドリームインキュベータの時価総額は約135億9000万円(12月8日時点)達し、一服感が出ています。当面、株価は停滞すると思いますが、アイペットの業績が改善し、株価が高騰すればまた「親子関係のねじれ」が発生するかもしれません。

ファンドによって買い占められているドリームインキュベータ

ドリームインキュベータ(4310)とは?

「ドリームインキュベータの業績推移」マネックス証券

「ドリームインキュベータの業績推移」マネックス証券より

ドリームインキュベータ(4310)はボストン・コンサルティング・グループの日本法人社長を務めていた堀紘一氏が2000年に創業した会社です。ベンチャー企業の成長支援を目的として設立され、ビジネスプロデュース(戦略コンサルティング)事業やベンチャー投資事業を手掛けています。

これらの事業の他にも、ペット向け医療保険事業を中心するアイペットホールディングス、フリーコンサルタントのマッチングプラットフォームを提供するワークスタイルラボ、イベントチケット等の販売プラットフォーム事業を展開するボードウォークなどを買収し、連結子会社として育成(事業投資)しています。

ドリームインキュベータの業績はアイペットホールディングスの買収(事業投資)などで売上高こそ好調に推移していますが、祖業であるコンサルティング事業とベンチャー投資事業の不振、買収企業の成長投資による赤字を理由に、2期連続で最終赤字となっています。

ファンドによる買い占めでドリームインキュベータ株は高騰

「ドリームインキュベータ(4310)6ヵ月日足チャート」マネックス証券より

「ドリームインキュベータ(4310)6ヵ月日足チャート」マネックス証券より

ドリームインキュベータの株価は業績不振も手伝って、底値を探る展開が続いていました。少し前の11月29日には766円まで落ち込み、年初来最安値を更新しています。

ところが、翌11月30日にファンドの買い占めによって株価が急反発すると、12月1日には大量保有報告書が提出されたことを材料に一気に株価が急騰。12月8日の終値は1,303円に達し、年初来最安値のおよそ1.7倍にまで値上がりしました。

ドリームインキュベータの急騰劇を主導したファンドは?

ドリームインキュベータ株を買い占めているファンドはヴァレックス・パートナーズとユナイテッド・マネージャーズ・ジャパン

「ユナイテッド・マネージャーズ・ジャパンとヴァレックス・パートナーズによるドリームインキュベータ株の買い占め」

「ユナイテッド・マネージャーズ・ジャパンとヴァレックス・パートナーズによるドリームインキュベータ株の買い占め」

今回のドリームインキュベータの買い占めを主導しているのは、ヴァレックス・パートナーズとユナイテッド・マネージャーズ・ジャパンという投資ファンドです。

詳細は後述しますが、ユナイテッド・マネージャーズ・ジャパンの投資先の一つにヴァレックス・パートナーズが運用するファンドが含まれています。したがって、実質的にはヴァレックス・パートナーズが今回の急騰劇を引き起こした首謀者だと言えるでしょう。

ヴァレックス・パートナーズとは?

「ヴァレックス・パートナーズの投資哲学」同社のホームページより

「ヴァレックス・パートナーズの投資哲学」同社のホームページより

ヴァレックス・パートナーズは、バリュー投資を専門とする独立系の投資ファンドです。日本の優良な中堅上場企業を投資対象に、長期投資を行うことで知られています。代表取締役の安治郎氏はバリュー投資で有名なファースト・イーグル・インベストメント・マネージメント社のシニア・バイス・プレジデントを務めていたので、その投資哲学や投資戦略をそのまま引き継ぐ形で独立したようです。

同社はドリームインキュベータの他にオークネット(3964)、メディキット(7749)、ユニデン(6815)といった企業に投資しています。

どの投資先も安定した事業を有しており、豊富な内部留保・簿外資産を抱える会社ばかりであること、投資理由を「純投資及び状況に応じて重要提案を行うこと」としていることから、同ファンドは単純な長期投資家ではなく物言う株主(アクティビスト)としての側面も持っているようです。

ユナイテッド・マネージャーズ・ジャパンとは?

「ユナイテッド・マネージャーズ・ジャパンホームページ」

「ユナイテッド・マネージャーズ・ジャパンホームページ」

ユナイテッド・マネージャーズ・ジャパンは、銀行、生損保、証券会社といった顧客と投資一任契約を結び、その契約内容に基づいて受託資産を運用する投資運用業を行っています。

MEMO
投資一任契約とは、投資家が銘柄の選定、数量の決定、売買執行などの投資に必要な権限を投資運用業者に一任(委任)する契約のことです。投資方針の決定を除いて、資産運用のすべてが委任されている点に特徴があります。

同社が投資対象として組み込んでいるファンドの一つにヴァレックス・パートナーズがインベストメントマネージャーを務める「VPL-I Trust(フレンドリーアクティビスト戦略)」というファンドがあります。

運用戦略に関する説明文が下記のような文言となっているため、ドリームインキュベータの買い付けは実質的にヴァレックス・パートナーズの投資判断によるものと考えられます。

日本市場の中堅上場企業を主な投資対象とし、真の価値に対し著しく割安に放置されていると考える企業に投資を行います。投資先企業の割安解消や真の価値成長の為、超長期的な株主として様々なサポートも行います。

ファンドの狙いは子会社のアイペットホールディングス株か?

アイペットホールディングスの買い付け後に、ドリームインキュベータ株を買い占める

「アイペットホールディングスとドリームインキュベータ株式の買い付けに関する大量保有報告書と変更報告書」edinetより

「アイペットホールディングスとドリームインキュベータ株式の買い付けに関する大量保有報告書と変更報告書」edinetより

ヴァレックス・パートナーズとユナイテッド・マネージャーズ・ジャパンは、ドリームインキュベータ株式の買占め(2021年11月)に先立って、アイペットホールディングス株式を買い付け(2021年3月)ています。

ドリームインキュベータはアイペットホールディングス株式の56.1%を保有し、連結子会社化しています。このことから、投資ファンドの狙いはドリームインキュベータではなく、同社が保有するアイペットホールディングス株にあると考えられます。

ファンドが狙うアイペットホールディングスとは?

「ペット保険の競争環境」アイペットホールディングスIR資料より

「ペット保険の競争環境」アイペットホールディングスIR資料より

アイペットホールディングス(7339)はドリームインキュベータの子会社で、ペット保険業界2位の保険会社です。日本ではペット保険に対する認知度が未だ低い状態となっていますが、市場の拡大に伴って順調に成長を続けています。

「アイペット中期経営計画」同社IR資料より

「アイペット中期経営計画」同社IR資料より

同社の業績は新規契約者数が順調に増加することでトップラインは伸長してはいるものの、保険業界特有の会計制度によって短期的に利益の出にくい構造となっています。利益面での苦戦が今後も継続する見込みとなっているので大きな話題になることはありませんが、高い成長性が評価されて時価総額は200億円を超えています。

投資ファンドはなぜドリームインキュベータ株を買い付けたのか?

「ドリームインキュベータとアイペットホールディングスの親子関係が逆転していた」

「ドリームインキュベータとアイペットホールディングスの親子関係が逆転していた」

投資ファンドがドリームインキュベータ株を狙った背景に、「親子関係のねじれ(親会社と子会社の時価総額の逆転現象)」があると考えています。

2021年11月末まではアイペットの時価総額約240億円に対し、ドリームインキュベータの時価総額は80億円程度しかありませんでした。ドリームインキュベータはアイペットホールディングス株式の56.1%を保有しているので、少なくとも理論上は135億円(アイペットの保有株式時価総額:240億円×56.1%)以上の時価総額でなければなりません。

もちろんベンチャー投資事業や他の事業投資会社の赤字があるので、135億円以下の時価総額になっても仕方ない面もあります。それでも、理論株価との乖離があまりにも大きくなりすぎていたので、バリュー投資を得意とするヴァレックス・パートナーズは「親子関係のねじれ」を突く形で買い占めに入ったのだと考えられます。

現在、12月8日の終値(1,303円)ベースでドリームインキュベータの時価総額は約135億9,000万円に達しています。最終赤字が続いている同社の事業価値を考えると株価の上昇にも一服した感がありますが、アイペットの業績が改善して株価が上昇すればまた「親子関係のねじれ」が生じるかもしれません。

今後の株価の動きに注目しましょう。

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