誰でもわかるダウ理論|投資の知識

ダウ理論 アイキャッチ

誰でもわかるダウ理論|投資の知識

この記事のポイント
  • ダウ理論は、ダウ工業平均株価指数(Dow Jones Industrial Average)で有名なチャールズ・H・ダウが考案した理論です。この理論の最大の功績は、未成熟だった投資の世界にトレンドという概念を広く普及させたことにあります。
  • ダウ理論には「エントリータイミングが遅すぎる」、「人によって解釈が異なる場合がある」といった批判・問題点が確かにあります。実際の運用には様々な問題はあるものの、それでも67年間の売買記録を見れば今でもその優位性は失われていません。

ダウ理論とは

「チャールズ・H・ダウの写真」wikipediaより

「チャールズ・H・ダウの写真」wikipediaより

ダウ理論は、ダウ工業平均株価指数(Dow Jones Industrial Average)で有名なチャールズ・H・ダウが考案した理論です。もっとも、初めから理論として体系立てて紹介されたことはなく、ダウがウォール・ストリート・ジャーナルに投稿した断片的な論説を、彼の死後に同紙の編集長であるウィリアム・P・ハミルトンが理論としてまとめあげたものになります。

ダウ理論が広まる前から、多くの株式がおなじような値動きをすることが知られていました。しかし、その重要性が注目されることはなく、全体的なトレンドに関心を払う人はいませんでした。ダウ理論の最大の功績は、未熟だった投資の世界にトレンドという概念を広く普及させたことにあります。

ダウ理論の9の原則

「ダウ理論とは?」

「ダウ理論とは?」

ダウ理論には下記の9の原則があります。

  1. 株価はすべてを織り込んでいる
  2. メジャートレンド、修正トレンド、マイナートレンドの3つのトレンドが存在する
  3. 強気相場が存在する
  4. 弱気相場が存在する
  5. 2つの平均株価は確認されなければならない
  6. 出来高はトレンドとともに変化する
  7. 「ライン」は一種の中期的な調整局面である
  8. 終値だけを使用する
  9. トレンドは決定的なシグナルが出るまでは継続する

 原則1.株価はすべてを織り込んでいる

株価は金利、経済指標、企業の財務情報などの公表されたありとあらゆる情報を織り込んでおり、たとえ事前に予測できない情報であったとしても、それが明らかになればすぐに株価が織り込んでしまうという原則です。

値動きは結局のところ需給のバランスを意味しています。需要と供給を引き起こす要因が政治的なものであれ、経済的なものであれ、すべて株価に反映されます。したがって、株価は変動を引き起こすすべての要因を織り込んでいます。

原則2.メジャートレンド、修正トレンド、マイナートレンドの3つのトレンドが存在する

メジャートレンドは1年以上にわたって継続するトレンドで、20%以上の株価の上昇・下落をもたらします。高値を更新して前回の安値よりも高い値段で下げ止まれば上昇トレンドを示し、反対に安値を更新して前回の高値よりも安い値段で上げ止まれば下降トレンドを示しています。

修正トレンドはメジャートレンドと逆の方向に動くトレンドです。メジャートレンドの修正的な調整・戻りであり、メジャートレンドの最高値から3分の1から3分の2程度逆行します。いあっぱん的に修正トレンドは3週間から数か月程度継続します。

最後のマイナートレンドは6日から長くても3週間以内に収まる意味のない小さな変動です。チャートにはこれら3つのトレンドが存在します。

原則3.強気相場が存在する

上昇メジャートレンドは3つの局面に分けられます。第1の局面は先見性のある投資家が安値で株を拾い集めるアキュミュレーション(Accumulation)の段階です。この時期は企業の財務報告書の数字も悪く、取引が活発に行われないため、出来高も低水準で推移します。

第2の局面は底値圏から上昇を見せる局面です。企業の収益が改善するにつれて、多くの人から注目を集めるようになります。取引が活発におこなわれ、出来高も急増します。

第3の局面は買い注文一色に染まり、市場が活況に沸く局面です。財務情報もよいニュースが続き、株価の上昇に拍車がかかります。注文が殺到し、出来高は高水準で推移します。ただ、この局面はトレンドがある程度継続した後の段階なので、売りを考えるべき場面です。

原則4.弱気相場が存在する

下降メジャートレンドも3つの局面に分けられます。

第1の局面は強気相場の最終局面で、先見性のある投資家が高値で株を売り抜けるディストリビューション(distribution)の段階です。この時期は株価収益率などの指標が割高を示しており、売買は活発に行われているものの、株価が上昇する際の出来高は減少傾向になります。

第2の局面はパニックの段階です。出来高の急増を伴う突然の急落が何度も繰り返され、買い方がどんどん減少していきます。企業業績はまだ悪化してはいないものの、株価が先行して下落していきます。

第3の局面は第2の局面から横ばい状態が続いた後に起こります。この最後の局面は企業業績の度重なる悪化に、投資家の失望売りが大量に出る局面です。弱気相場は最悪のニュースがすべて織り込まれた後(悪いニュースが出尽くす前)に終了します。

原則5.2つの平均株価は確認されなければならない

トレンドが上昇・下降トレンドにあることを確認するには、ひとつの平均株価の有効なシグナルだけでは十分ではないということです。

例えば、日経平均の上昇トレンドを確認するには、TOPIXや東証マザーズ指数も上昇トレンドに転換していることを確認しなければなりません。2つの平均株価が同時に新高値や安値を付ける必要はなく、どちらかが1~2か月遅れることもあります。

原則6.出来高はトレンドとともに変化する

株価がメジャートレンドに沿って動くとき、出来高が増加する傾向にあります。したがって、強気相場では株価が上昇するときに出来高が増加し、下降するときは出来高が減少します。

逆に、弱気相場の時は株価が下降するときに出来高が増加し、株価が上昇する時に出来高が減少します。なお、強気相場の最終局面で株価が下落する際は、株価が自分の重みで下落するため、出来高の増加は必要ありません。

原則7.「ライン」は一種の中期的な調整局面である

「ライン」とは株価の横ばいの動きを指します(ここでいう「ライン」は支持線や抵抗線といったサポートラインのことではなく、長方形のチャートパターンに近い概念です)。ラインが形成されれば株価は5%以内のせまい範囲で推移し、小さな値動きが長ければ数か月続きます。

ラインは買い方と売り方が拮抗している状態を表しており、ラインの上放れや下放れの動き(ブレイクアウト)はその均衡が破れたことを意味します。そのため、株価の上放れは強気の、株価の下放れは弱気のシグナルとなります。

一般的に、ラインの期間が長く続けば続くほどポジションが積み上がっていくため、ブレイクアウト時のロスカットが増え、その後の値動きが大きくなります。

原則8.終値だけを使用する

終値はその日の株式市場が最後に評価した株価を表しています。ダウ理論ではその日に付けた高値やあ安値に注意を払わず、その日の終値だけを考慮します。ブレイクアウト時のシグナルに関しては、終値で1円でも超えれば有効なシグナルとみなすことができます。

原則9.トレンドは決定的な反転シグナルが出るまでは継続する

この原則は、反転シグナルが出るまではトレンドが継続する可能性が高い、という確率的な考え方を示しています。つまり、確たる理由なく現在のポジションを変更したり、先走って行動するなという警告を意味しています。

ダウ理論に対する批判やダウ理論の問題点について

ダウ理論に対する批判:ダウ理論は遅すぎる

ダウ理論への批判として、ダウ理論のシグナルに従って売買をすると、利益の大半を取り逃がすというものがあります。実際に、特定期間のダウ理論の実績とバイ・アンド・ホールド戦略(買ってからずっと保有し続ける戦略)の実績を比較すると、ダウ理論のパフォーマンスが劣っているケースがあります。

こうした批判への反論として、①タイミングよく安値で買って高値で買うことは不可能に近い、②長期間にわたってダウ理論とバイ・アンド・ホールド戦略を比較すると、ダウ理論に従った方がパフォーマンスが良い、ということが指摘できます。

①に関してごく当たり前なことですが、誰も天井や底値を予測することはできません。したがって、安値で買って高値で売るのは至難の業です。また、高値掴みをする可能性も当然考慮しなければなりません。

「ダウ理論に基づいてトレードした場合のトレーディング損益実績」thedowtheory.comより

「ダウ理論に基づいてトレードした場合のトレーディング損益実績」thedowtheory.comより

②に関して、ジャック・シャネップ氏が運営する「The Dow Theory.com」では、ダウ理論に従って売買した場合のパフォーマンスとバイ・アンド・ホールド戦略に従って売買した場合のパフォーマンスを67年間にわたって比較しています。

ダウ理論に従って1953年12月31日に1万ドル(1$=100円換算で100万円)投資したとすると、2020年12月31日時点で12,479,349ドル(1$=100円換算でおよそ12億4793万円)になり、年平均収益率は11.22%になります。

一方で、バイ・アンド・ホールド戦略に基づいて1953年12月31日に1万ドル(1$=100円換算で100万円)投資したとすると、2020年12月31日時点で9,707,953ドル(1$=100円換算でおよそ9億7079万円)になり、年平均収益率は10.81%になります。

このように、ダウ理論とバイ・アンド・ホールド戦略を比較すると、ダウ理論に従って売買したほうが優れたパフォーマンスを実現できることが分かります。

ダウ理論の問題点:ダウ理論は完璧ではない

ダウ理論には重要な問題点があります。

それは、メジャートレンドが形成される初期の段階ではダマシが良く発生するということです。特に、長期投資を前提にしてチャートを分析する場合、シグナルが出るまで数か月、場合によっては数年の時間が必要になります。したがって、シグナルが確認できるまでは様々な解釈の余地があり、チャートの見方は人によってに大きな違いが生まれます。

もっとも、この欠点に限らず様々な問題は存在するものの、「The Dow Theory.com」にある67年間の売買記録を見れば、ダウ理論の優位性は明らかです。解釈の違いから多少エントリーが遅れたとしても、ダウ理論に従いトレンドに乗って投資することで大きな利益を得ることができます。

ダウ理論について学ぶならこの本がおすすめです

マーケットのテクニカル分析 トレード手法と売買指標の完全総合ガイド

先にも述べましたが、ダウ理論はチャールズ・H・ダウがウォール・ストリート・ジャーナルに投稿した断片的な論説を、彼の死後に同紙の編集長であるウィリアム・P・ハミルトンが理論としてまとめあげたものになります。したがって、考案者であるダウが執筆した本はありません。

ただ、上の画像の「マーケットのテクニカル分析 ――トレード手法と売買指標の完全総合ガイド」という本は、ダウ理論を体系立てて解説しているのでとても勉強になります。

「ダウ理論の3つのトレンドについての解説」マーケットのテクニカル分析より(Amazon-kindle位置情報952ー6105)

「ダウ理論の3つのトレンドについての解説」マーケットのテクニカル分析より(Amazon-kindle位置情報952ー6105)

例えば、ダウ理論の「原則2.メジャートレンド、修正トレンド、マイナートレンドの3つのトレンドが存在する」という部分についても、上の画像のようなチャートを使って分かりやすく解説しています。

また、ダウ理論以外にも「支持線・抵抗線」や「チャート・パターン」といった基礎的な概念から「サイクル理論」や「市場間分析」に至るまで、他の本ではあまり取り上げられていないことまで幅広く網羅されています。

値段は高いですが、テクニカル分析はこの1冊で十分に学べます。ぜひご一読ください!

まとめ

ダウ理論は、ダウ工業平均株価指数(Dow Jones Industrial Average)で有名なチャールズ・H・ダウが考案した理論です。ダウ理論の最大の功績は、未熟だった投資の世界にトレンドという概念を広く普及させたことにあります。

実際の運用には様々な問題がありますが、67年間の売買記録を見ればその優位性は明らかです。些末な問題はありますが、多少エントリーが遅れても、あるいはシグナルの確認に時間をとられても、トレンドに従って売買を行えば十分なリターンを得ることができるでしょう。

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