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積極的な設備投資が裏目に出る可能性が…。次の不況は深刻に!?
この記事のポイント
- 日本企業の利益水準は経済活動正常化や円安の影響によって過去最高を更新する見込み。好決算を受け、リーマンショック以降落ち込んでいた設備投資も過去最高水準に迫ると予想されている。
- 日本企業の多くが生産能力増強に動いているが、OECDの景気先行指数は景気後退を示唆し、中国経済の鈍化もすでに観測されている。世界経済の落ち込みに、これまでの成長を牽引していた中国経済の低迷が加われば、深刻な不況は避けられない。日本企業の大規模な設備投資が裏目に出る可能性が高まっている…。
経済活動正常化や円安の影響で経常利益率は過去最高水準に…
日本企業の経常利益率は経済活動正常化や円安の影響によって過去最高水準で推移しています。朝日新聞の報道によれば、上場企業の2021年度の純利益も前年比35.6%増の33.5兆円となり、過去最高を更新する見通しとなっています。
設備投資の伸び率も過去平均を大きく上回る
目下の好業績を受けて、設備投資の伸び率は過去平均(2000-2021年度)を大きく上回って推移しています。2022年度の設備投資額も計画ベースで前年比+14.1%と予想されており、伸び率はさらに伸長する見込みとなっています。
これまで、日本企業はリーマンショック前の過剰投資が重荷となって積極投資に踏み出せずにいました。しかし、今回の好決算で生まれた原資を能力増強に充てようという動きが顕著に出ており、設備投資額も金融危機前の水準に戻りつつあります。
積極投資が裏目に出る危険性が…。次の不況は深刻に!?
日本企業の投資意欲が改善する一方、積極的な設備投資が裏目に出る危険性も高まっています。OECD(経済協力開発機構)の景気先行指数をみると、世界景気の転換点となる100を下回っており、景気の後退が懸念されています。
MEMO
OECD (Organisation for Economic Co-operation and Development)はEU加盟国22カ国(ドイツ、フランス、イタリア、オランダ、ベルギー等)とその他16カ国(日本、イギリス、アメリカ合衆国、カナダ、メキシコ、オースラリア等)の38カ国で構成されています。また、過去の記事(「中国は不動産バブル崩壊を阻止するため躍起になる?」、「中国の7月の小売売上高は前月比でマイナスに…。景気後退の可能性も…!?」)でも取り上げたように、不動産市況の悪化やゼロコロナ政策による都市封鎖を受けて、中国の経済成長率も低迷しています。
世界経済が落ち込み、コロナ禍からの復興をけん引した中国経済も苦境に陥れば、これから迎える不況はかなり深刻なものになります。拡大路線に舵をきった日本企業が過大な生産設備を抱えてしまわないよう、祈るばかりです。