中国の2023年第1四半期GDPに潜む闇

中国の2023年第1四半期GDPに潜む闇

中国の2023年第1四半期GDPに潜む闇

この記事のポイント
  • 中国国家統計局が2023年4月18日に発表した中国の2023年第1四半期GDP(速報値)は、28兆4,997億元(1元=20円換算で約569兆9,940億円)で前年比+4.5%の増加となった。不動産セクターのGDPも前年比+1.3%の1兆9,611億元(およそ39兆2,220億円)とプラス成長を遂げているが疑問が残る。
  • 2023年1~3月累計の中国の不動産の販売額は前年比+4.1%の3兆0,545億元(およそ61兆0,900億元)まで伸びているが、不動産開発投資額は前年比△5.8%の2兆5,974億元(およそ51兆9,480億円)と減少したままになっている。両者の規模を比較すると、GDPに占める新規不動産投資の割合の方が大きいと考えられるため、不動産セクターのGDPは減少していないとおかしい。
  • 統計データの捏造の可能性も捨てきれないため、解釈には注意が必要かもしれない。

中国の2023年第1四半期GDPは順調に見えるが…

「中国の2023年第1四半期GDP速報値」中国国家統計局より

「中国の2023年第1四半期GDP速報値」中国国家統計局より

中国国家統計局が2023年4月18日に発表した中国の2023年第1四半期GDP(速報値)は、28兆4,997億元(1元=20円換算で約569兆9,940億円)で前年比+4.5%の増加でした。これまで実質GDP成長率5%を目標に掲げてきた中国政府にとってはあまり喜ばしくない結果かもしれませんが、インフレとそれによる景気の停滞が続く世界経済にとってはある意味でうれしい誤算だったと思います。

さて、中国のGDP速報を詳しく見てみると、不可解な点を発見しました。それは、市況の冷え込みにもかかわらず、不動産セクターのGDPが前年比+1.3%の1兆9,611億元(およそ39兆2,220億円)とプラス成長を遂げている点です。以下で詳しく見ていきたいと思います。

中国の不動産市況は冷え込んでいる…

「中国の不動産開発投資額の推移(2023年4月19日公表)」中国国家統計局資料より

「中国の不動産開発投資額の推移」中国国家統計局資料より

中国の不動産市況は政府による不動産規制強化と新型コロナウイルスの影響で壊滅的な打撃を受けています。昨年10月に不動産開発会社に対する融資規制の緩和や不動産購入支援策が導入されたことで落ち込み幅は大きく改善しましたが、それでもマイナス成長は止まっていません。

「中国の不動産開発投資の内訳(2023年1~3月期累計)」中国国家統計局資料より

「中国の不動産開発投資の内訳(2023年1~3月期累計)」中国国家統計局資料より

2023年1~3月累計の不動産開発投資額は前年比△5.8%の2兆5,974億元(およそ51兆9,480億円)と減少したままになっています。また、不動産開発投資額が細ったことで、建設中の建物の床面積は前年比△5.2%の△76億4,577万平方メートル、新規着工建物の床面積も前年比△19.2%の2億4,121万平方メートルまで減っています。

他方、不動産開発会社に対する融資規制が強化されたことで不動産開発プロジェクトが頓挫して建設中の建物が放置される事例が相次いだことから、中国銀行保険監督管理委員会は住宅・建設関係当局や中国人民銀行(中央銀行)と連携を強め、地方政府が住宅引き渡しを保証する意向を示しました。これによって、竣工した建物の床面積は前年比+14.7%の1億9,422万平方メートル、不動産の販売額は前年比+4.1%の3兆0,545億元(およそ61兆0,900億元)まで伸びています。

このように、公開されている統計データをみると、新規プロジェクトに対する支援は依然として限定的なものになっており、中国の不動産開発会社に対する規制の緩和は既存プロジェクトの完成を援助するためのものであったことが分かります。両者の規模(不動産開発投資額:前年比△5.8%の2兆5,974億元・建設中の建物の床面積:前年比△5.2%の△76億4,577万平方メートル、不動産の販売額:前年比+4.1%の3兆0,545億元・竣工した建物の床面積:前年比+14.7%の1億9,422万平方メートル)を比較すると、新規プロジェクトの落ち込み幅の影響の方が大きいと考えれるので、中国の2023年第1四半期の不動産セクターのGDPはマイナスに転じていないと整合性がとれないということになります。

中国の不動産セクターのGDPはプラス成長していますが、データを改ざん・捏造している可能性があります。統計データを鵜呑みにせず、日々のニュースを細かくチェックした方が良いでしょう。

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