目次
近づく米中間選挙。選挙と株価の関係は?
- 2022年11月8日にアメリカ中間選挙が実施されます。現在、共和党の優勢が伝えられており、上院・下院ともに過半数を超える議席を獲得すると予測されています。
- 共和党が議会を支配することで、バイデン政権の不法移民問題や環境規制に対する姿勢がより中立的な立場に変化する可能性があり、株式市場にとってはプラスの影響があると思われます。
- ただし、一時的にねじれ状態が発生することを警戒して株価が下落する危険もあります。どちらにせよ株価のボラティリティ(変動幅)が大きくなるので、ポジションサイズには細心の注意を払いましょう。
11月8日の米中間選挙が迫る
11月8日のアメリカ中間選挙が迫っています。現状では2大政党(民主党と共和党)の勢力が拮抗しており、ある意味バランスの取れた政治を実現できていました。しかし、バイデン政権の数々の失策(アフガニスタンからの米軍撤退の失敗、止まらないインフレ、過去最大の不法移民者数)によって民主党の支持率が下落し、代わりに共和党が幅広い層から支持を集めています。
リアル・クリア・ポリティクスという米世論調査会社の公開データをみると、ここ1年間はほぼすべての時期で共和党が優位に立っていることが分かります。どのような選挙結果になるかは蓋を開けてみないと分かりませんが、このまま上院でも下院でも共和党が過半数を超えるものと予想されています。
共和党が議会の過半数を握るとどうなるか?
不法移民問題が沈静化し、経済が安定に向かう!?
個人的な考えですが、共和党が議会の過半数を握ることで不法移民問題などが沈静化し、経済が安定に向かうと思っています。というのも、バイデン大統領が不法移民問題に寛容な姿勢を取り続けたことで、不法越境者数の数が統計開始後の過去最大数を更新するなど、アメリカ経済が混乱する要因となっているからです。
具体的なデータをみると、2021年度(20年10月~21年9月)のメキシコ国境からの不法移越境数(アメリカへの不法入国を試みた人の数で、入国不許可者、逮捕者、国外通報処分となって人数の合計)は165.9万人に達しています。ちょうど鹿児島県の全住民(令和4年:156.3万人)がアメリカに押し寄せているようなものなので、すべてを管理できるはずがありません。
さらに、警備の網にかからずに不法入国した人もいるので実態としてははるかに規模が大きな問題であること、不法移民の波に紛れて麻薬の密輸入犯やテロリストの入国も確認されている(安全保障上の問題も絡んでいる)ことを踏まえれば、不法移民問題の解決は経済の安定化に寄与すると考えられます。
インフレも終息に向かう!?
共和党が議会を支配することで、インフレも終息に向かう可能性もあります。
バイデン政権は環境政策に重点を置いており、「内務長官に対して、石油・ガス開発のための連邦所有地・水域の新規リースを一時停止し、リース許可・手続きの包括的な見直しを行うよう指示」した他、「各政府機関に対し、化石燃料に対する補助金を特定し、連邦予算が化石燃料に直接充てられることがないように保証するための措置を講じるよう指示」するなど、国内・国外問わず化石資源の開発を禁止してきました。
ロシアによるウクライナ侵攻で世界的に資源価格が上昇したことを受けて、2022年4月15日にようやく連邦公有地における石油・ガス開発リース販売計画を再開すると発表しましたが、それでもリース予定面積を約80%削減するなどの一定の制限を加えています。
アメリカはシェール革命によって2017年に原油の生産量が世界一になるなど、世界有数の資源大国となっています。特に近年は原油・石油製品の輸出が輸入を上回るなど、資源輸出国家としての側面も持ち合わせています。
共和党政権に交代することで、バイデン政権の厳しい環境規制が緩和・撤廃されれば、原油をはじめとするエネルギー価格は今以上に下落するでしょう。小麦などの食料不足によって一部のインフレは継続するかもしれませんが、急激なインフレも終息に向かうかもしれません。
選挙と株価の関係は?
最後に選挙と株価の関係について見ていきたいと思います。結論だけを述べると、中間選挙のある年(大統領選挙年の翌々年)は投資パフォーマンスが著しく悪化していくことが分かります。
一般に、大統領選挙の前年・選挙の年は新しい政策への期待感から株が買われますが、選挙の翌年と翌々年はそれが失われることで株価は下落します。中でも選挙の翌々年は、政権の運営能力が中間選挙の結果に左右されるため、相場が不安定化して投資パフォーマンスが下がりがちです。
個人的には共和党が大勝することで株価にプラスの影響があると予想していますが、大統領が所属する政党と議会の支配政党が異なる「ねじれ状態」が生じることで、一時的に市場が混乱する可能性もあるのかもしれません。もしそうなれば、2016年のトランプ大統領当選時のような乱高下が起きる危険があります。ポジションサイズには注意が必要しましょう!
参考文献
引用元 | 配信日 | 記事タイトル |
独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構 | 2022年9月22日 | 「米国:石油生産量、パンデミック前の水準にようやく回復」 |
JETRO | 2021年1月29日 | 「バイデン米大統領、気候変動対策の大統領令署名、気候変動危機を外交・安全保障の中心に」 |
JETRO | 2022年4月21日 | 「米内務省、連邦公有地での石油・ガス開発リース計画を発表、バイデン政権で初」 |
JETRO | 2018年4月10日 | 「2017年以来、原油の輸出量増大と輸出先多様化が進展中 – 米国」 |