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中国がGDP統計の発表を延期。中国経済の実態と日経平均への影響を分析!
- 中国国家統計局は10月18日に予定していたGDP統計の発表を延期しました。結果が悲惨なので、第20回共産党大会(10月16日から22日)に水を差さないための配慮だと思われます。
- OECDの景気先行指数をみると、中国は2021年後半に景気の転換点となる100を下回り、景気後退局面に突入しています。同指数は経済実態よりも6~9ヵ月程度先行するので、中国経済は景気の底を探っている状況です。
- 日経平均の動きを見る限り、円安によって株価が下支えられていることが分かります。今後は世界経済の悪化によって実体経済が停滞していきますが、円安が続く限りは株価の下落も限定的なものになりそうです。なお、逆に言えば、為替レートが円高に振れると一気に株価が急落します。為替レートの動きには気をつけましょう。
中国がGDP統計の発表を延期
中国は18日に予定していた7-9月(第3四半期)国内総生産(GDP)の発表を延期した。国家統計局がウェブサイトで17日明らかにした。新たな発表スケジュールや公表を遅らせた理由は示していない。同じく発表予定だった9月の工業生産とエネルギー生産、小売売上高、住宅価格と1-9月の固定資産投資と不動産投資・販売の公表も先送りされた。税関総署も14日に発表する予定だった9月の貿易統計をまだ公表していないが、延期理由は示していない。ブルームバーグのエコノミスト調査では、7-9月のGDPは前年同期比3.3%増と見込まれていた。新型コロナウイルス対策で上海などの大都市がロックダウン(都市封鎖)された4-6月(第2四半期)のGDPは0.4%増だった。2022年10月17日 Bloomberg 「中国、7-9月のGDP統計発表延期-新たなスケジュール示さず」
中国国家統計局は10月18日に予定していたGDP統計の発表を延期しました。その理由については何も明らかにしていませんが、同じく発表予定であった9月の工業統計、エネルギー生産、小売売上高、住宅価格と1-9月の固定資産投資と不動産投資・販売の公表も先送りされたので、内容がかなり酷かったのではないかと噂されています。
現在、中国では中国共産党の指導体制や基本方針を決める第20回共産党大会が開催(10月16日から22日)されています。同大会では習近平総書記の3期目続投が確実視されており、閉幕後の23日には今後5年間の政権運営を担う新閣僚人事の発表も控えています。
下手な統計データを発表して政権批判の声が高まれば、習近平政権は出だしから躓くことになるので、中国政府が自らの体裁をとり繕うために統計発表を遅らせたのかもしれません。
いずれにしても、3月末から5月にかけて実施された上海ロックダウンや現在進行形で行われている北京市のロックダウンの影響もあり、中国経済は低迷しています。世界的なインフレやアメリカの金利引き上げといった外部環境も重なっているので、事態はかなり深刻です。次章では中国経済の実態と日経平均への影響について探っていきたいと思います。
中国経済の実態は?
OECD(経済協力開発機構)が公開している景気先行指数(CLI)というデータをみると、世界経済は2022年初頭の時点で景気循環の転換点の目安となる100を割り込んでしまっていることが分かります。この指標は経済実態よりも6~9か月程度先行して動くので、そろそろ本格的な景気後退局面に突入しそうな状況です。
一方、中国経済は世界経済に先立って2021年後半に転換点の目安となる100を割りこんでしまっています。この指標が実態よりも6~9か月程度先行することを踏まえれば、時期的には既に本格的な不況に陥っており、景気の底を探っている段階にあると言えるでしょう。
実際、2022年7月の統計データによると、若年層の失業率は19.9%に達しています。同数字は8月には18.7%に下がりましたが、依然として高い水準を保っており、予断を許さない状態です。リーマンショックやコロナショック時のように景気が急激に悪化するかどうかは分かりませんが、大規模な景気刺激策が導入されない限りは、世界経済の軟化に伴って中国経済もさらに悪化していきそうです。
日経平均への影響は?
中国の株価指数(上海総合:赤、香港ハンセン指数:緑)をみると、OECD景気先行指数の変動に合わせて2021年後半から値を崩していることが分かります。株価も経済実態に先んじて動くと言われているので、両者の動きを考慮すればやはり中国経済は2021年終わり頃から衰退していたのだと判断できます。
他方で、日経平均の動きをみると中国の株価指数には連動せず、OECD景気先行指数を反映するように横ばいの動きを見せていることが分かります。これは、日銀が量的緩和政策と低金利政策を堅持し、円安が進行していることが原因です。
上のチャートをみれば分かるように、日銀が積極的な金融緩和政策を維持していること、アメリカが急速に金利を引き上げていることが要因となって、ここ最近円安が加速しています。日経平均採用銘柄には輸出企業や海外展開が進んでいる企業が多いので、円安は企業利益の増加につながり、目先の株価を押し上げる効果を持っています。
また、円安になると輸出商品の販売価格が下がるため、海外に移転した生産拠点の国内回帰の動きにつながり、経済成長率を押し上げる効果も持っています。こうした円安がもたらす直接的・間接的効果によって、日経平均株価は今の水準で支えられているのです。
中国経済の悪化は当然ですが、今後は世界経済も次第に軟化していきます。日経平均の下落圧力はより一層強まることが予想され、円安による株価の下支え効果が無くなれば、一気に崩れてくるでしょう。今後の日経平均の動きを予想する場合は、為替レートの動きに注意が必要です。