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中国の7月の小売売上高は前月比でマイナスに…。景気後退の可能性も…!?
- 中国の7月の消費財小売売上高は前年比2.7%の3兆5,870億元(約71兆7,400億円)となりました。前月の成長率が3.2%だったので、早くも減速の兆候がみられます。
- 小売売上高を品目別にみると、金・銀・宝飾関連、石油関連製品などのインフレの影響を受けやすい品目ばかりが伸びており、消費全般が回復したとは言い難い状況です。これらの商品は値上がりによって数字が膨らんでいるだけで、実態が伴っていません。
- 中国の若年層(16歳から24歳)の失業率は19.9%に達しています。中央政府による大規模な景気刺激策がない限り、経済は失速すると思われます。
7月の中国小売売上高は前月比でマイナスに…
中国の7月の消費財小売総額は3兆5,870億元(1元=20円でおよそ71兆7,400億円)で、前年比2.7%の増加となりました。上海ロックダウンの解除に伴う反動もあり、先月の成長率は3.2%を記録していましたが、早くも前月比でマイナスに落ち込んでいます。
1月から7月までの累計小売総額も前年比0.2%減少の24兆6,302億元(約492兆6,040億円)と奮わず、需要回復に遅れが出ている格好です。世界的にインフレが進み、商品価格が値上がりしていることを考慮すれば、実質的に消費は減退しているように思います。
品目別にみると購買意欲の鈍化は明らか
中国の小売売上高を品目別にみれば、購買意欲の鈍化は明らかです。
売上高が大きく伸長しているのは金・銀・宝飾関連商品(前年比+22.1%)や石油・石油関連商品(前年比+14.2%)といったインフレの影響を受けやすい製品ばかりで、衣料品(前年比+0.8%)や化粧品(前年比+0.7%)などの不要不急の品は需要が大きく減少しています。
金銀、石油関連製品は商品の値上がりによって表面的な売上高が伸びているだけで、消費需要が拡大しているわけではありません。購買意欲の鈍化は明らかです。
なお、一部自動車(前年比+9.7%)や家電・AV機器などの耐久消費財も売上高を伸ばしていますが、これは北京市などの地方政府が消費促進に向けた補助金支給などの支援措置を発表したためです。こうした景気浮揚策がなければ実態はさらに悲惨なものになっていたでしょう。
大規模な支援策が無ければ景気後退の可能性も…
中央政府による大規模な景気支援策がなければ、景気後退に向かう可能性が高まります。
2022年7月の中国の主要31都市の失業率は5.6%と低い水準を維持していますが、16歳から24歳までの若年層に限れば失業率は19.9%に達しています。消費の中核を担う若年層が消費意欲を失えば、北京市などの地方政府がいくら景気刺激策を出してもその場しのぎにしかなりません。
中国人民銀行(中央銀行)は今年8月15日に政策金利と位置づける中期貸出制度(MLF)の1年物金利を0.1%引き下げると発表しました。今後、さらなる緩和に動くと予想されますが、その内容次第で株価が乱高下すると思われます。中国政府の動向には注意が必要です。