れいわ新選組の政策チラシはツッコミどころが多すぎる(3)

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れいわ新選組の政策チラシはツッコミどころが多すぎる(3)

この記事のポイント
  • れいわ新選組の政策チラシにツッコむ記事の第3弾で、今回が最後の記事になります。

前回の記事はこちらです。

れいわ新選組の政策チラシにはツッコミどころが多すぎる(2)れいわ新選組の政策チラシはツッコミどころが多すぎる(2)

れいわ新選組政策チラシ(ページ4)は虚実入り混じった不思議な理論が展開される

「機関紙82号-ページ4」れいわ新選組ホームページより

「機関紙82号ページ4」れいわ新選組ホームページより(画像はすべてクリックすると拡大します)

政策チラシの最後のページは虚実入り混じった不思議な理論が展開されています。

基本的にれいわ新選組は自分達にとって都合の良いデータだけを並べているだけなので、データと政策の整合性がとれていません。そのため、読めば読むほど、調べれば調べるほど理解するのが困難になってしまいます。本当はもっときちんと書きたかったのですが、文章が長くなりすぎるため割愛しました。ご了承ください。

1.ページ左半分:事実とウソが入り混じる

「嘘と事実が入り混じる」れいわ新選組機関紙ページ4

「事実とウソが入り混じる」れいわ新選組機関紙82号ページ4より

れいわ新選組の機関紙の左上部分(上の画像部分)は基本的にほぼ正しい内容となっています。ただし、前回の記事でみたようにれいわ新選組は政策として大幅な減税(消費税の廃止等)と大規模な財政支出(教育費無償化等)を謳っており、それも踏まえて考えれば自分たちに都合の良い部分を切り抜いているだけだと分かります。部分的には正しくても、全体としては間違っているので、注意が必要です。

ページ左上部:「政府の赤字は民間の黒字」は正しい

「ISバランスとは?」経済セミナー「財政赤字の仕組み①」貯蓄投資バランスより

「ISバランスとは?」経済セミナー「財政赤字の仕組み①」貯蓄投資バランスより(画像はすべてクリックすると拡大します)

経済学の世界ではISバランスといって「民間貯蓄(S-I:右辺の国内投資を左辺に移項)=政府支出(G-T:財政支出から税収入を差し引いたもの)+経常収支(X-M:海外への輸出から輸入を引いたもの)」という式が事後的に成立します。したがって、仮に経常収支が一定だとすれば、政府支出の拡大(支出が税収を上回る=赤字)は民間貯蓄の拡大(国内貯蓄が国内投資を上回る=黒字)につながります。れいわ新選組の言う「政府の赤字は民間の黒字」はまぎれもなく事実であるということが分かります。

ページ左下部:「日・米などの先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない」は正しいが、デフォルトしないからといって何でもしてよいわけではない

「外国格付け会社宛意見書要旨」財務省ホームページより

「外国格付け会社宛意見書要旨」財務省ホームページより

ページ左下部は、おおざっぱに言うと正しいですが、細かい条件に注意する必要があります。まず、「日・米などの先進国の自国通貨建て国債のデフォルトは考えられない(財務省の外国格付け会社宛意見書要旨)」という意見に関しては、麻生太郎元財務大臣の発言にあるように、お札を刷って返済すればよいだけなのでデフォルトすることはありません。

一見すると奇妙に感じますが、日本政府は主権を有する国家なので自由に政策を実行できる立場にあります。それゆえ、お札をいくら刷ったとしても誰からも非難されることはありません。さらに、日本国債はすべて円という基軸通貨・不換紙幣を用いて発行しています。そのため、円には一定の需要が存在するので引受先に困ることはなく、金などの通貨の裏付けとなる正貨と換える必要もありません。

MEMO
不換紙幣とは、金などの正貨(本位貨幣)に交換する義務のない紙幣のことです。明治時代の日本は金本位制を採用しており、1円=金1.5gの価値となる兌換紙幣(だかんしへい)を発行していました。しかし、度重なる戦争によって貿易赤字が増えたことで、円(その裏付けとしての金)が海外に流出する事態となりました。そこで、日本政府は1931年に金貨との兌換を停止し、1942年からは金との交換を必要としない不換紙幣を発行するようになりました。

日本国債がデフォルトしないと言えるのは、基軸通貨で一定の需要があり、自国通貨建ての国債を発行できる環境下にあるからです。もし、円という通貨への需要がなくなったり、信用不安から海外投資家や国内投資家が日本国債を敬遠するようになれば、大幅な円安に陥って輸入が滞ることになります。そうなれば当然インフレ率も上昇し、経済の混乱は避けられません。日本国債がデフォルトしないからと言って、為替相場への影響を考えずにお札をひたすら刷ったり、無秩序に財政支出を拡大させて良いわけではないので注意が必要です。

MEMO
MMT理論の第一人者であるL・ランダル・レイ氏は自身の著書の中で、過大な政府支出を制約する理由として、インフレを起こす可能性がある点や為替レートに圧力を加える可能性がある点を指摘しています。また、同氏は「『支出能力』の制約がないことは、政府が制約なしに支出をすべきだという意味ではない」とも述べており、財政支出を無秩序に増やしてはならないとしています。

2.ページ右半分:良くわからないデータと意味不明な主張が展開されている

「右ページは意味が分からない」機関紙82号ページ4れいわ新選組ホームページより

「右ページは意味が分からない」機関紙82号ページ4より

ページ右半分は良くわからないデータと意味不明な主張が展開されています。

ページ右上部:良くわからないデータを提示しており、意味が分からない(為替への影響等は考慮されているのか?)

「良くわからないデータを提示しているが…」機関紙82号ページ4れいわ新選組ホームページより

「良くわからないデータを提示しているが…」機関紙82号ページ4れいわ新選組ホームページより

れいわ新選組は「4年連続で毎月10万円給付したら物価上昇率はどう変化するか?」というシミュレーションを行い、その結果(上の画像)を提示しています。この試算では1年後の物価上昇率が1.215%、2年後が1.436%、3年後が1.809%、4年後が1.751%と推計されており、これを根拠に「日銀の掲げる2%のインフレ率を達成するためには毎月10万円給付のような大規模な直接給付が必要である」と主張しています。

このデータは参議院調査情報担当室に委託して作成されたようですが、詳しい情報が開示されていないので前提条件であったり、計算モデルの内容が良くわかりません。そのためなんとも言えませんが、仮に毎月10万円給付を行えば年間144兆円の費用が発生します。2022年度予算の一般会計歳出が107.6兆円なので、予算の実に1.4倍近くの財政支出を伴うことになります。

おそらくMMT理論のような考え方に影響されたのだと思いますが、先にも述べたように同理論は「支出能力」があるからと言って支出をすべきだと主張するものではないし、為替レートなどへの影響も当然考慮すべきでしょう。したがって、このような良くわからないデータを見せられてもなんとも言えませんし、「4年間連続で毎月10万円を配る」という主張がどういう意味を持つのかも分かりません。

ページ右下部:日本は物価目標の2%を達成できていないが、ゆるやかなインフレ傾向にある

「意味の分からない主張が続く」機関紙82号ページ4れいわ新選組ホームページより

「意味の分からない主張が続く」機関紙82号ページ4れいわ新選組ホームページより

れいわ新選組はインフレ率を測るのに消費者物価の変動を示す総合指数から気候変動の大きい生鮮食品と海外要因の大きいエネルギー(原油など)を除いた「コアコアCPI」を見ることが重要だと述べていますが、基本的に日銀は総合指数から生鮮食品だけを除いた「コアCPI」に基づいて指標を算出しています。

「消費者物価の基調的な変動」日銀基調的なインフレ率を捕捉するための指標より

「消費者物価の基調的な変動」日銀基調的なインフレ率を捕捉するための指標より

また、れいわ新選組は2022年1月のコアコアCPIが前年同月比△1.1%であることを理由に、「まだまだお金を出す(財政支出を増やす)余地がある」と言っていますが、日銀が公表している消費者物価の基調的な変動という統計データ(コアCPI)を見ると、物価目標の2%に達してはいないものの、調査品目の多くが緩やかに値上がりしていることがわかります。

加えて、ウクライナ問題やサプライチェーンの混乱を受けて2022年4月のコアコアCPIは+0.8%となっています。輸入小麦の政府売渡価格の上昇も見込まれるので、「コアコアCPI」は今後さらに高くなると予想されます。コアコアCPIから除外されている原油価格などの高止まりも考慮すれば、生活実態としてはさらなるインフレに直面するでしょう。この状況で毎月10万円給付を行えば、インフレの加速は避けられません。

まとめ

れいわ新選組は自分たちの意見に合ったデータだけを提示し、耳障りの良い政策を声高に叫んでいます。都合の悪いデータや意見を無視しており、政治姿勢としてはかなり悪質です。本当はもっとツッコミどころがあったのですが、数が多すぎて収拾がつきませんでした。れいわ新選組に限ったことではありませんが、表面的な議論に騙されないように気を付けましょう。

2 COMMENTS

ラリー

あなたの指摘は「反論のための反論」の域を出ません。

まず、政党の「政策のチラシ」はマクロ経済学の講義や論文ではありませんよ。
自民党や立憲の政策チラシに細かい計量モデル等のデータや出典が明示されていますか?
https://jimin.jp-east-2.storage.api.nifcloud.com/pdf/pamphlet/202206_pamphlet.pdf

「参院調査情報担当室のシミュレーションの計算モデルの内容がわからない」と指摘していますが、この計量モデルの算出法は公開されていません。
例えば同じようなモデリングである日経NEEDSの算出法が公開されていますか?公開されるわけがないことは誰にでも理解できます。
ご自身で当局に問い合わせて確認してみましょう。

政府支出額の多寡が為替レートに影響を与えることはあまり考えられません。
そして政府支出が即インフレに繋がるとも考えられているようですが、それは20世紀的な貨幣数量説にもとづく誤りです。
これらは現在のマクロ経済学の基本知識となります。

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かぶこい

コメントありがとうございます。

1.「参院調査情報担当室のシミュレーションの計算モデルの内容がわからない」という部分に関してですが、「参議院の調査室作成資料というページをみても該当資料が見当たらず、計算モデルの前提条件が分からない」という意味で書きました。
そもそも、「コロナ下で実施された特別定額給付金(予算総額12.7兆円)の経済効果は3.5兆円でGDPを0.7%押し上げる効果がある」という試算*があり、4年連続毎月10万円給付を行った場合のインフレ率が本当に1.2~1.7%に収まるのか疑問に感じています(*三菱総合研究所のレポート)。
日本の国家予算(一般会計)はおよそ100兆円であり、毎月10万円給付(127兆円の支出)を行えばそれだけで年間予算を超えてしまいます。
また、日本のGDPが500~600兆円であることを踏まえれば、毎月10万円給付による物価上昇率は直感的にもっと高いのではないかと考えました。
そこで、詳しい情報がないか引用元を調べましたが何も見つからなかったので、先のような記述になりました。

2.「まず、政党の「政策のチラシ」はマクロ経済学の講義や論文ではありませんよ。
自民党や立憲の政策チラシに細かい計量モデル等のデータや出典が明示されていますか?」
⇒自民党のリンク先を拝見させていただきましたが、モデルを使って分析された箇所がないのですが…。

3.「ご自身で当局に問い合わせて確認してみましょう。」
⇒政策チラシなので、れいわ新選組が根拠を明示する必要があると思うのですが…。

4.「政府支出額の多寡が為替レートに影響を与えることはあまり考えられません。」
4年連続毎月10万円給付のような大規模な財政支出を行えば、通貨(円)の価値が下がるので円安になると思うのですが…。
ぜひ、「MMT現代貨幣理論入門(特に219/552ページ)」をご一読ください。

5.「そして政府支出が即インフレに繋がるとも考えられているようですが、それは20世紀的な貨幣数量説にもとづく誤りです。これらは現在のマクロ経済学の基本知識となります。」
⇒「現在のマクロ経済学」について詳しくありませんが、この部分に関してもぜひ「MMT現代貨幣理論入門(特に219/552ページ)」をご一読ください。

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