目次
中国の不動産価格が大暴落。バブル崩壊から中国経済は低迷へ。
- 22年に入ってから不動産価格が急落していますが、4月に入ってもその傾向は変わらず、むしろ悪化しています。20年のコロナショック時の住宅価格を下回る地域も出てきているので、事態はかなり深刻です。
- 不動産開発会社の資金繰りも悪化しています。国内借入(人民元建ての債券)が前年比△24.4%の6837億元(約12兆9903億円)、自己調達資金も前年比△5.2%の1兆6271億元(約30兆9149億円)となっており、資金流入量が急減しています。
- 2021年の中国のGDPは114兆3670億元(約2172兆9730億円)で、そのうち不動産セクターはGDPの6.7%にあたる7兆7561億元(約147兆3659億円)を占めています。不動産関連市場が1割縮小するとGDPが2.2%下振れするとの試算もあるので、不動産バブルが崩壊すれば中国経済は長期にわたって低迷するでしょう。中国の不動産市況には注意が必要です。
中国の不動産価格が大暴落
前回の記事でもお伝えしたように、2022年に入ってから中国の不動産価格が大きく下落しています。その傾向は今回発表された4月の統計データでより顕著なものになっています。上の画像をみると、多くの主要都市で不動産価格が値下がりしていることが分かります。新築・中古住宅ともに前月比はもちろんのこと、前年比を割る地域も出てきており、事態はかなり深刻です。
コロナショックで値下がりしていた2020年に比べるとまだ全体的に不動産価格は高止まりしていますが、太源市やハルビン市などの一部都市で20年の価格水準を下回る地域も出てきています。こうした状態が長引けば、不動産の購入をためらう(値下がりを期待して買い控える)人が増えるので、不動産市況の回復が期待できなくなってしまいます。
不動産開発会社への資金流入がさらに減少。不動産バブル崩壊へ。
不動産開発会社への資金流入がさらに減少。
2020年8月に「三条紅線」という実質的な融資規制が導入されて以降、不動産開発会社の資金調達が困難になっています。特に、中国の大手不動産開発会社である恒大集団の倒産が囁かれるようになってからは、不動産セクター全体へ信用不安が広まり、資金流入量が急減しています。
22年に入ると不動産市況も悪化したため、資金繰りがより一層逼迫し、4月には資金調達額が前年比△23.6%まで減っています。
詳しく内訳をみると、22年1月から4月の不動産開発会社の支出額は4兆8522億元(1元=19円で約92兆1918億円)となっています。
うち、国内借入(人民元建ての債券)が前年比△24.4%の6837億元(約12兆9903億円)、自己調達資金が前年比△5.2%の1兆6271億元(約30兆9149億円)となっており、中国国内からの資金調達が難しくなっていることが分かります。また、不動産販売も低調なので住宅ローンを通じた資金調達額も前年比△25.1%の8037億元(約15兆2703億円)に大きく減少しています。
不動産バブル崩壊へ
【デフォルト(債務不履行)・倒産した中国の不動産開発会社の一覧】
発生日 | 会社名 | 負債額等 |
2022年1月6日 | 世茂集団 | 信託会社からの融資6億4500万元(約117億円)の延滞 |
2021年12月7日 | 中国恒大集団 | 米ドル債の利息8249万ドルのデフォルト |
2021年12月5日 | 陽光100中国 | 米ドル建て社債1億7000万ドルのデフォルト |
2021年10月18日 | 新力控股(集団) | ドル建て社債2億4600万ドルのデフォルト |
2021年10月15日 | 協信遠創実業 | 破産申請受理(倒産)。負債総額300億元(約5400億円) |
2021年10月4日 | 花様年 | ドル建て社債2億0600万ドル |
2021年7月11日 | 四川藍光発展 | 人民元建て社債9億元のデフォルト |
2021年2月1日 | 華夏幸福基業 | 人民元建て社債52億5500万元のデフォルト |
投資家や金融機関から資金を借り入れることができず、営業活動からも資金を獲得できない以上、不動産開発会社は手持ちの不動産を売却して当座の資金をかき集めるしかありません。しかし、資産売却を急げば急ぐほど不動産価格が下落し、保有する資産の価値が大きく低下してしまいます。資産価値が下がれば担保としての価値を失うため、融資が困難になって不動産開発会社の資金繰りはさらに困窮してしまいます。
不動産開発会社は「資金繰りが難しくなる→手持ちの不動産を売却→資産価値(担保としての価値)が下がって融資しにくくなる→資金繰りが難しくなる…」という負の連鎖から抜け出せない状況となっています。
このまま不動産価格の下落が続けば買い控えが起こり、不動産市況はさらに悪化してしまいます。一部の地方都市で不動産の購入補助などの政策が導入されていますが、今のところ目立った効果がみられません。不動産バブルは直実に崩壊へ向かっています。
不動産バブル崩壊から中国経済は低迷へ
2021年の中国のGDPは114兆3670億元(約2172兆9730億円)となっています。そのうち、不動産セクターの寄与分は7兆7561億元(約147兆3659億円)で、GDPの6.7%を占めています。表面上は大きな数字ではありませんが、雇用が失われたり、関連資材の需要が減る等の波及効果を考えれば、その影響は小さくありません。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングのレポートでは不動産関連業が1割縮小すると、中国のGDPが2.2%減少するとの試算が出ています。不動産バブルがはじけ、不動産開発会社の連鎖破綻が起これば、1割縮小どころの話ではありません。中国経済は長期にわたって低迷するでしょう。今後の中国の不動産市況には注意が必要です。
参考資料
引用元 | 資料名 |
中国国家統計局(National Bureau of Statistics of China) | Sales Prices of Residential Buildings in 70 Medium and Large-sized Cities in April 2022 |
中国国家統計局(National Bureau of Statistics of China) | National Real Estate Development and Sales in January to April 2022 |
中国国家統計局(National Bureau of Statistics of China) | Preliminary Accounting Results of GDP for the Fourth Quarter and the Whole Year of 2021 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | 中国経済レポート(No. 70) 苦境に直面する不動産業界 ~ 中国経済の減速要因に |