- 2022年2月24日にロシアはウクライナへの本格的な軍事侵略を開始しました。その背景にはNATOの拡大による安全保障上の脅威があったのだと思われます。
- ロシア系住民の保護を大義に侵攻を続けていますが、ウクライナの3分の2を占領することが目的ではないかと考えています。
- 西側諸国は厳しい経済制裁を科していますが、食料自給率が100%を超え、豊富な地下資源に恵まれているロシアにとっては停戦の理由になりません。当初の戦略目標を達成するまで侵略を続けるでしょう。
- 日経平均はきれいな下落トレンドを描いています。200日移動平均線を下抜けているので、株を買うのは終戦後からでも十分でしょう。
目次
ロシアによるウクライナへの軍事侵略が本格化
ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領は2022年2月24日のテレビ演説で、ウクライナ東部のロシア系住民を保護することを目的として特別な軍事作戦を実施すると発表しました。これによって、事実上ロシアによるウクライナ侵攻が本格的に開始されることになりました。
プーチン大統領はウクライナを占領する意図はないとの声明を出していますが、これまでウクライナ侵攻そのものを否定してきただけに、それが真実かどうか誰にもわかりません。ただ、国境周辺に少なくとも10万人以上の軍隊を配備していたことを考慮すると、ロシア系住民の安全だけが目的ではないことは明らかです。
詳細は後述しますが、ロシアは住民保護を大義名分に掲げてウクライナの3分の2を占領することで、NATO(北大西洋条約機構)加盟承認へプレッシャーを与えつつ、地政学的な優位性を手に入れてその軍事的圧力に抵抗しようとしているのだと推測しています。
ロシアによるウクライナへの軍事侵略の目的は?
ロシアによるウクライナへの軍事侵略の目的は?
ロシアによる軍事侵攻の真の目的はウクライナのNATO加盟を阻止しつつ、拡大するNATOの軍事的圧力に対抗するためだと考えられます。上の画像をみれば分かるように、NATOの加盟国は年々増加しており、現在は30カ国にまで拡大しています。
その中には旧ソ連が占領していたバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)も含まれており、ロシアから見れば新たにウクライナがNATOに加わることで、①旧ソ連の構成国が連鎖的に親米・親欧路線に傾き、②ヨーロッパとの緩衝地帯が無くなって安全保障上の脅威が増す恐れがあります。
したがって、ロシアは自国系住民の保護を名目にウクライナへの侵攻を正当化することで、NATO加盟承認へプレッシャーを与えつつ、地政学的な優位性を手に入れてNATOの軍事的圧力に抵抗しようとしているのだと思われます。
ロシア系住民の保護という大義名分を掲げれば、ウクライナ3分の2の占領を正当化できる
ウクライナは旧ソ連構成国の1つだったこともあり、今でもロシアを第1言語とする住民が東部を中心に数多く存在します。一方、公用語のウクライナ語を話す人は西部に集中しており、結果として東部と西部で文化的な隔たりが生まれやすい状況にあります。
そこで、ロシアは自国系住民の保護を大義名分として掲げることで、ウクライナの3分の2(ロシア語を母語とする人々の多い地域)を占領する口実を作ったのではないかと考えています。
ウクライナの3分の2を掌握できれば、地政学的な優位性を得られる
ウクライナの3分の2を掌握できれば、地政学的な優位性を得ることができます。
具体的には、①弱体化したウクライナ(残り3分の1)を新しい緩衝地帯にでき、②アゾフ海の支配を完全にすることでアゾフ海→黒海→地中海→大西洋という外洋につながる進軍ルートを獲得でき、③占領地域を流れるドニエプル川という天然の要害を対ヨーロッパの防衛ラインにすることができます。
ウクライナの親EU路線に疲れて決断か?
ウクライナは1991年に独立を宣言した後、1994年にNATOとの間で「平和のためのパートナーシップ協定」を結び、1997年には「ウクライナ・NATO間の特別な関係に関する憲章」に署名するなど、早くからNATOとの関係強化を明確にしてきました。
ロシアからすれば、ウクライナの持つ地政学的な優位性をNATOに奪われたり、外交交渉に利用される状態が続くのは容認できない事態です。国際社会から浴びる批判と得られるメリットを考えれば、侵略を決断したとしても不思議ではありません。
ロシアによるウクライナへの軍事侵略はいつ終わるのか?
西側諸国の経済制裁とウクライナ支援は想定外…
軍事力はロシアに分があるが…
ロシアは約1,710万平方キロメートルの領土と1億4,680万人の人口を有しており、GDPは1,478十億ドルで世界11位となっています。他方、ウクライナの領土は60万3,700平方キロメートルで、人口も4,159万人に過ぎません。GDPも155十億ドルしかなく、ロシアの10分の1程度となっています。
国力が違いすぎるため、軍事力にもかなりの差があります。上の画像をみれば分かるように、ロシアはウクライナに比べて約4倍以上の兵力を有しており、核兵器などの保有兵器に関しても完全にロシアに分がある状況です。
西側諸国の経済制裁とウクライナ支援は想定外…
ウクライナ侵略を阻止しようと、米国やEUは経済制裁を加えています。当初はロシアの大手金融機関の資産凍結が中心でしたが、SWIFTからの除外を決定したり、外貨準備を凍結するなど、厳しい追加制裁を科しています。
さらに、シェルやエクソンモービルなどが地下資源開発事業から撤退したり、マスターカードやビザがロシアの銀行を決済網から排除するなど、民間企業による制裁も激化しています。
これによって、ロシアの通貨(ルーブル)が暴落したり、証券取引が停止を余儀なくされるなど、ロシア経済は大きく混乱しています。正直、ここまで国際社会が一致団結してロシア経済に制裁を加えることは想定していませんでした。おそらくプーチン大統領も同じだったのではないかと思います。
それでも侵略は止まらない
西側諸国の経済制裁にもかかわらず、最新のウクライナ情勢をみると徐々にロシア軍が浸透している様子が見て取れます。ロシアは穀物自給率が124%と完全自給を達成しており、豊富な鉱物資源にも恵まれています。そのため、どのような制裁を与えられても軍事侵略を止める必要がありません。
ロシアが住民保護を目的に自国の安全保障を実現しようとしている以上、青いラインまで占領するか、少なくともドニエプル川より東を支配できるまでは停戦しないと考えています。
株を買うのは終戦後で大丈夫
6ヵ月日足チャートを見ると、高値を切り下げる形で下降トレンドが続いていることが分かります。200日移動平均線を割っているため、一時的な反発を試しても28,000円~28,500円の抵抗ゾーンに確実に阻まれてしまいます。したがって、今買い向かうことは得策ではありません。
また、ロシアによるウクライナへの軍事侵略で資源価格が高騰しています。戦況がどう推移するかは分かりませんが、物価高から不況に陥ったり、経済が低迷することは良くあります。少なくとも株価が200日移動平均線を超えるまでは手を出さない方が良さそうです。
参考資料
配信元 | 配信日 | 記事タイトル |
AFP BB NEWS | 2022年2月23日 | 「【図解】ウクライナとNATO」 |
BBC NEWS | 2022年2月15日 | 「【解説】 ロシアのウクライナ侵攻準備、どれくらい完了しているのか」 |
CNN.com | 未記載 | 「地図で見るウクライナhttps://www.cnn.co.jp/special/interactive/35044749.html」 |
ロイター | 2022年1月31日 | 「アングル:緊迫するロシアとウクライナ、グラフィックで見る現状と経緯」 |