インテグレイテッド・コア・ストラテジーズの空売り手法とは?|投資の知識

インテグレイテッド・コア・ストラテジーズの空売り手法とは?

インテグレイテッド・コア・ストラテジーズの空売り手法とは?|投資の知識

この記事のポイント
  • インテグレイテッド・コア・ストラテジーズ・アジア(Integrated Core Strategies Asia Pte.Ltd.)は、シンガポールに拠点を置く非公開の有限責任株式会社(Private Limited Company)で、実態のよくわからない機関投資家です。
  • 同社の空売り銘柄には、①東証1部企業で時価総額が比較的小さく、1日の出来高・売買代金が少ない、②下降トレンドに入っているという特徴があり、株価操縦しやすい銘柄に絞って空売りを行っているようです。
  • インテグレイテッド・コア・ストラテジーズはファンダメンタルを考慮せず、テクニカル面で条件が揃えば積極的に空売りを行っています。空売りするポイントも「移動平均線へのタッチ」、「移動平均線のデッドクロス」といったテクニカルの要素を重視しています。

インテグレイテッド・コア・ストラテジーズとは?

「インテグレイテッド・コア・ストラテジーズ会社情報」

「インテグレイテッド・コア・ストラテジーズ会社情報」ブルームバーグより

インテグレイテッド・コア・ストラテジーズ・アジア(Integrated Core Strategies Asia Pte.Ltd.)は、シンガポールに拠点を置く非公開の有限責任株式会社(Private Limited Company)です。2007年に設立され、証券業・その他金融サービス業を営んでいます。

「Pte. Ltd.」という表記をみれば分かるように、非公開の会社なのでホームページはおろか詳細な情報がまったく開示されていません。正体不明の機関投資家です。

インテグレイテッド・コア・ストラテジーズの空売り銘柄選定基準は?

「インテグレイテッド・コア・ストラテジーズの空売り銘柄(12月2日報告分)」

「インテグレイテッド・コア・ストラテジーズの空売り売買銘柄(12月2日報告分)」

インテグレイテッド・コア・ストラテジーズは直近で、福田組(1899)、明星工業(1976)、中部飼料(2053)といった企業を空売りしています。これらの銘柄には、①東証1部企業で時価総額が比較的小さく、1日の出来高・売買代金が少ない、②下降トレンドに入っている、という特徴があります。

注意
ここで取り上げた3銘柄とも11月25日にエントリーしています。その後、一部銘柄を追加で売り増ししながら、11月30日にほとんどすべて買い戻してポジションを解消しています。本格的な空売りというよりも、「試しで入ったらあっさり利益が出たのですぐに撤退した」という感じのトレードでした。本格的な売り崩し事例は「インテグレイテッド・コア・ストラテジーズの直近の売買事例」の章で取り上げています。

基準①:東証1部企業で時価総額が比較的小さく、1日の出来高・売買代金が少ない

「インテグレイテッド・コア・ストラテジーズの空売り銘柄の株価指標」マネックス証券より

「インテグレイテッド・コア・ストラテジーズの空売り銘柄の株価指標」マネックス証券より

インテグレイテッド・コア・ストラテジーズは、時価総額300億円~1,000億円くらいの東証1部企業を対象に空売りを行っているようです。東証1部の時価総額は平均するとおよそ3,200億円(2021年11月の単純平均)なので、東証1部企業の中でも比較的時価総額が小さい企業を選んでいるようです。

こうした銘柄は1日の出来高が少なく、売買代金も数億円程度しかないので、1銘柄当たりの空売りポジション金額を抑えながら市場に大きな影響力を行使することができます。相場操縦とは言えませんが、それに近い状況を作り上げることができます。

MEMO
トヨタ自動車の時価総額はおよそ33兆円で、1日の売買代金は600億円前後あります。仮に6億円の空売りポジションを持つ場合、トヨタ自動車に投資しても市場に与える影響力は微々たるものでしかありません。一方、時価総額300億円の企業を空売りする場合、時価総額の2%に相当する額を使って巨大なポジションを作ることができます。

したがって、インテグレイテッド・コア・ストラテジーズが「東証1部企業で時価総額が比較的小さく、1日の出来高・売買代金が少ない」銘柄を好む理由は、①東証1部企業なので市場からの注目度も高く、ある程度の流動性がある、②時価総額が小さく、1日の出来高・売買代金が少ないので、自由に相場をコントロールできるためだと考えられます。

なお、空売り企業の業績についてはあまり考慮していないようです。福田組や明星工業は今期の決算が減収減益予想になっていますが、中部飼料に関しては減収ながら増益予想となっています。また、3社ともPERは7~10倍、PBRは1倍割れとかなり割安な水準になっています。ROEも市場平均を上回っているので、ファンダメンタル面からは積極的に空売りしにくい銘柄と言えます。

基準②:下降トレンドに入っている

「福田組、明星工業、中部飼料の5年週足チャート」

「福田組、明星工業、中部飼料の5年週足チャート」マネックス証券より

インテグレイテッド・コア・ストラテジーズは空売り基準として、「長期チャートでみて下降トレンドに入っているか」を重視しているようです。3社の5年週足チャートを見ると、どの企業も直前の支持線を下方向にブレイクアウトしていることが分かります。

先ほどみたように、ファンダメンタル面を考慮していない事実を踏まえると、インテグレイテッド・コア・ストラテジーズの空売り基準はむしろテクニカル部分に比重を置いているようです。

インテグレイテッド・コア・ストラテジーズの直近の売り崩し事例

「LIFULL(2120)6ヵ月日足チャート」マネックス証券より

「LIFULL(2120)6ヵ月日足チャート(赤:売り建て、青:買い戻し)」マネックス証券より

最後に、インテグレイテッド・コア・ストラテジーズの直近の売り崩し例を紹介したいと思います。上の画像はLIFULL(2120)の6ヶ月日足チャートになります。全体的に要所要所で空売りし、チャートが崩れたところで買い戻している様子がよく分かると思います。

ポイント①は、「25日移動平均線の突破を許さないための空売り」です。この売り増しによって下降トレンドがその後も継続していることが分かります。

ポイント②は、「200日移動平均線へのファーストタッチで下落させるための空売り」です。株価が戻りを試す形で長期移動平均線(200日移動平均線)に触れた場合、1回目のタッチなら長期移動平均線に押されて株価が下落することが多いのでエントリーしたのだと思います。もっとも、この時は残念ながら長期移動平均線で反発せずに上昇を続けています。

ポイント③は、「100日移動平均線で反発を確認後、6日移動平均線と25日移動平均線をデッドクロスさせるための空売り」です。LIFULLの株価は200日移動平均線で上げ止まらず、100日移動平均線でようやく反発しました。その後、ポイント③で移動平均線のデッドクロスが起こりそうだったので、強気に空売りしたのだと考えられます。

ポイント④は、「決算失望売りを利用した売り崩し」です。LIFULLは、2021年11月11日の決算で減損損失の計上により従来の黒字予想から一転、赤字に陥ったことを発表しました。さらに、翌期の利益予想もコンセンサスの半分程度だったことから、決算明け後に株価は暴落しました。

インテグレイテッド・コア・ストラテジーズはこの決算失望売りに乗じて大きく売り増し。下降トレンドを演出しています。そして、その後も戻りを試そうとするたびに売り崩し、株価を下落させています。

機関投資家の空売り手法を学ぶなら「オニールの空売り練習帖」がおすすめ

「ルーセント・テクノロジーズの2000年の日足チャート」オニールの空売り練習帖より.

「ルーセント・テクノロジーズの2000年の日足チャート」オニールの空売り練習帖より(画像はすべてクリックすると拡大します)

機関投資家の空売り手法を学ぶなら「オニールの空売り練習帖」という本がおすすめです。同書は空売り手法に特化した珍しい投資書籍で、豊富なチャートを基に「どういったタイミングで空売りを行えば良いか?」が解説されています。

上の画像はその一部ですが、前章のLIFULL(2122)の空売り事例とそっくりなチャートパターン描いていることが分かります。どちらも50日移動平均線と200日移動平均線がデッドクロスし、何度か200日移動平均線への戻りを試した後、失速するように株価が下落しています。

LIFULLの事例は「オニールの空売り練習帖」に記載されている通りの「教科書通りの空売りポイント」であり、インテグレイテッド・コア・ストラテジーズも同じ場面で空売りポジションを追加していることが分かります。

著者のウィリアム・J・オニール氏は「CAN-SLIM」という銘柄選択基準を編み出したことで有名な投資家で、現在は500社以上の機関投資家を顧客に持つ証券会社(William O’Neil & Co. Inc)を経営しています。機関投資家に対するアドバイザリー(助言)業務も行っているので、本書を読めばその手口を存分に学ぶことができると思います。ぜひ、ご一読ください!

 

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まとめ

インテグレイテッド・コア・ストラテジーズは企業業績に関係なく、一定の流動性とテクニカル面の条件が確保できれば積極的に空売りしてきます。LIFULLの事例をみればわかるように、同社は要所要所でしつこく売り増ししてくるので、下降トレンドからなかなか脱却できません。

インテグレイテッド・コア・ストラテジーズが関わる銘柄は避けた方が良いでしょう。

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