誰でもわかる有価証券報告書|投資の知識

誰でもわかる有価証券報告書

誰でもわかる有価証券報告書|投資の知識

この記事のポイント
  • 有価証券報告書とは、金融商品取引法第24条によって提出が義務付けられている開示書類のことです。
  • 経理の状況(貸借対照表や損益計算書などの財務諸表)をはじめ、企業の概況、事業の状況、提出会社の状況など、所定の様式に従って作成した開示書類を、事業年度終了後3か月以内に内閣総理大臣に提出しなければなりません。

有価証券報告書とは?

有価証券報告書とは、金融商品取引法第24条によって、上場会社や総額1億円以上の有価証券の募集・売出しを行う会社などに提出が義務付けられている開示書類のことです。事業年度(決算日)終了後3か月以内に内閣総理大臣に提出することが求められています。

開示内容には経理の状況(貸借対照表や損益計算書などの財務諸表)をはじめ、企業の概況(主要な経営指標等)、事業の状況(事業等のリスクなど)、提出会社の状況(株式の状況等)などが記載され、提出企業の詳細な情報が把握できるようになっています。

【トヨタ自動車21年3月期有価証券報告書】

トヨタ自動車2021年3月期有価主権報告書

有価証券報告書と決算短信・事業報告書の違いは?

決算短信とは?

決算短信とは、決算内容の要点を直ちに開示することを目的として作成される資料のことです。法律で提出が義務付けられたものではなく、証券取引所のルール(上場規定404条)に則って作成、開示される資料になります。決算短信は、決算短信(サマリー情報)と決算短信(添付資料)で構成され、速報性が求められる事項に限定した内容が記載されることになっています。

【トヨタ自動車21年3月期決算短信】

トヨタ自動車21年3月期決算短信

事業報告書とは?

また、事業報告書とは、会社法435条第2項によってすべての株式会社に作成が義務付けられている報告書のことで、株主総会の招集通知とともに株主に提供しなければならない書類の一つです。事業報告書には定まった形式がありませんが、株式会社の現況に関する事項や株式に関する事項などが記載されます。

【トヨタ自動車 事業報告書】

トヨタ自動車 事業報告書(第117回定時株主総会招集通知)

有価証券報告書と決算短信・事業報告書の違いとは?

有価証券報告書とこれらの開示書類は、法的根拠やその対象など多くの面で異なっています。例えば、有価証券報告書は金融商品取引法によって作成が義務付けられていますが、決算短信は証券取引所の上場規則に、事業報告書は会社法に作成義務が定められています。

それぞれの法的根拠が異なっているため、提出先や開示内容にも違いがあります。有価証券報告書は多くの投資家に不利益を与える可能性があるため、提出先は内閣総理大臣となっており、開示内容も提出企業に関する情報を事細かに記載・開示する必要があります。

一方、決算短信は上場会社の業績をスピーディーに開示することを目的に作成されるため、開示内容は有価証券報告書よりも簡素なものになっています。同様に、事業報告書は非上場の会社を対象にしているため、有価証券報告書や決算短信に比べると、記載すべき内容がさらに簡単なものになっています。

主だった違いを下記の表にまとめましたので、ぜひご確認ください。

【有価証券報告書・決算短信・事業報告書の違い】

  有価証券報告書 決算短信 事業報告書
法的根拠 金融商品取引法 証券取引所の上場規則 会社法
作成義務 上場会社・1億円以上の有価証券の募集・売出しを行う会社 上場会社 株式会社
開示内容 企業情報(企業の概況や事業の状況等の詳細な情報) サマリー情報(経営成績・財政状態の概況など) 年次報告(事業の状況)
開示タイミング 事業年度終了後3ヶ月以内 決算期末後30日以内(遅くとも45日以内) 株主総会まで(事業年度末日から3ヵ月以内)
監査の有無 公認会計士による監査 なし 監査役による監査
開示先・提出先 内閣総理大臣 投資家 株主
閲覧場所 EDINET(金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)や企業のホームページ TDnet(東京証券取引所が運営する適時開示情報伝達システム)や企業のホームページ 基本的になし(株主に郵送されるため)。ただし、上場企業はホームページで株主招集通知書と一緒に開示していたりします。

有価証券報告書の調べ方

「EDINETホームページ」

「EDINETホームページ」

有価証券報告書はEDINET(金融商品取引法に基づく有価証券報告書等の開示書類に関する電子開示システム)というサイトで閲覧することができます。もっとも、有価証券報告書の作成対象はIRの充実した上場企業や大企業が中心なので、各企業のホームページを確認したほうが手っ取り早いでしょう。

有価証券報告書の読み方・確認すべき内容

「有価証券報告書-目次」トヨタ自動車2021年3月期有価証券報告書より

「有価証券報告書 目次」トヨタ自動車2021年3月期有価証券報告書より(クリックで拡大)

有価証券報告書を読み進める場合は、関係会社の状況や事業等のリスクなど、有価証券報告書でしか開示されていない情報に注意を払う必要があります。

特に最近は新型コロナウイルスの影響で部品供給が滞ってしまい、製品の生産に支障をきたす企業が増えています。例えば、日機装(6376)はベトナムの製造子会社Nikkiso Vietnam MFG Co.,Ltd.で従業員の新型コロナ感染が確認されたため、工場の操業を一時停止していました。

こうしたサプライチェーンの混乱は企業の決算に悪影響を与える可能性があります。したがって、関係会社の状況や事業等のリスクなどの有価証券報告書にしか記載されていない情報をしっかりと読み込み、事業のリスクを把握したうえで投資判断を行う必要があります。

その他の確認すべき内容は下の表に簡単にまとめています。是非ご確認ください。

【有価証券報告書で確認すべき内容(トヨタ自動車2021年3月期有価証券報告書の一例)】

記載場所(企業によって異なります) 記載内容(企業によって異なります) 確認すべき内容
第一部【企業情報】第1【企業の概況】4【関係会社の状況】 子会社・関連会社の名称、議決権の所有割合、関係内容など 重要な子会社かどうか、子会社の所在地などをチェックし、グループ全体の企業活動に問題がないかを確認する
第一部【企業情報】第2【事業の状況】1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 会社の経営の基本方針、会社の対処すべき課題など 経営環境の変化にどのように取り組んでいるかを確認する(トヨタ自動車は対処すべき課題として、電動化やソフトウェア・ファーストなどを挙げています)
第一部【企業情報】第2【事業の状況】2【事業等のリスク】 市場及び事業に関するリスク、金融・経済のリスク、政治・規制・法的手続・災害等に関するイベント性のリスクなど 企業を取り巻くリスクを把握する(トヨタ自動車は事業等のリスクとして、自動車市場の競争激化、為替および金利変動の影響、自動車産業に適用される政府の規制などを挙げています)
第一部【企業情報】第2【事業の状況】3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 経営成績等の状況の概要、経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容など 企業の経営成績や経営状況を確認する(生産、受注及び販売の実績などは有価証券報告書でしか開示していない企業もあるので注意が必要)
第一部【企業情報】第5【経理の状況】1【連結財務諸表等】 連結財務諸表など 決算短信と異なり、投資有価証券の明細などが細かく開示されているため、必ず一度は確認する

 

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