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機関投資家の基本的な売買手口|投資の知識
- 機関投資は豊富な資金量を持つがゆえに、「順張り投資」しか行うことができません。機関投資家が売買すると、出来高が増加したり、新しいトレンドが生じます。市場に与える影響力はとてつもなく大きいので、彼らの動向に注意を払う必要があります。
機関投資家は順張り投資が基本
機関投資家の資金量は圧倒的
銀行や保険会社などの機関投資家は豊富な資金力を有しています。事業活動の一環として日々株式取引を行っており、海外投資家も含めればその売買代金は1日あたり約2兆円、総取引額の7~8割を占めています。
機関投資は必然的に「順張り投資」が基本に
機関投資家は株式市場に対して大きな影響力を持っています。しかし、豊富な資金量を有するがゆえに、却って機動的な売買ができないという問題を抱えています。投資金額が巨大すぎるので、一度に売買しようとすると市場価格が歪んでしまうのです。
そのため、機関投資家は何日にも分けて投資を行う必要があり、結果として自分自身の取引の影響でトレンドが生じてしまいます。上の画像をみると、機関投資家が買えば日経平均が上昇し、売れば日経平均が下落していることが分かります。
このように、機関投資家は資金量が多すぎるので分割して売買しなければならず、結果的に自分の作り出したトレンドに乗る形で取引が行われます。つまり、機関投資家の投資手法は必然的に「順張り投資」が基本にならざるを得ないのです。
機関投資家の買い手口
機関投資家の買い手口を具体的に見ていきたいと思います。
ひふみ投信で有名なレオス・キャピタルワークス株式会社は、2021年8月6日にJTOWERに係る大量保有報告書を提出しました。報告書の中でレオス・キャピタルワークスとその親会社であるSBI証券がJTOWERの発行済株式数の5.16%を保有したことが明らかにされています。
上の画像のオレンジ色の矢印が大量保有報告書を提出した日で、オレンジ枠が買い集めた期間(筆者の推測)を表しています。この画像をみると、レオスの買い集めに伴って出来高が増加し、同時に株価も上昇していることが分かります。
このように、機関投資家が株式を買い集める場合、数度にわたって取引を行わざるを得ないので、出来高が増加したり、取引する方向にトレンドが発生してしまうことが分かります。
機関投資家の売りの手口
最後に、機関投資家の売りの手口を具体的に見ていきたいと思います。
上の画像はシステムソフトの6ヶ月日足チャートになります。システムソフトはAPAMANグループのシステム開発会社で、ここ数年パッとしない業績が続いていました。
しかし、2021年1月1日にシェアオフィス事業を展開するfabbit株式会社を買収。段階取得に係る差益を特別利益に計上したことから、4月27日に2021年9月期の通期業績予想を上方修正しました。そしてさらに、5月6日の第2四半期決算発表ではこの通期予想をほぼ達成。
さらなる上方修正が期待されて株価は年初来高値を連日更新しましたが、8月2日に公表した第3四半期の決算で四半期純利益が赤字に陥ったことが分かります。株価が割高な水準だったことから、ゴールドマン・サックス証券は翌8月3日から悪材料を理由に空売りを仕掛けました。
画像をみると分かるように、他の機関投資家も同じタイミングで空売りを仕掛けていたこともあって、システムソフトの株価は大きく下落しました。ゴールドマン・サックス証券はその後も利益確定と追加の空売りを細かく重ねることで、下降トレンドを演出。思惑通り、大きな利益を得ています。
【機関投資家の空売り手口の詳細はこちらの記事にまとめています。併せてご確認ください!】
機関投資家の空売りの手口~空売り成功例と失敗例~|投資の知識まとめ
機関投資家は投資資金が多いため、一度に売買ができずに何日にもわたって取引を行います。そのため、自分自身の取引でトレンドが生じてしまい、結果として「順張り投資」の方法でしか売買を行うことができません。
機関投資家が投資を行うと、出来高が増加したり、トレンドが発生するなど、至る所にその痕跡が残ります。チャートに何か違和感を感じた場合は、機関投資家が関与していないか確認してみましょう。