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17人のトップトレーダーから投資理論を学べる本「マーケットの魔術師」
- マーケットの魔術師は、トップトレーダーの投資理論が学べる本です。どのようなきっかけでマーケットに興味を持つようになったか?、過去に犯した最悪の失敗とそのことから何を学んだか?、自ら構築したトレード手法とその背景にある概念は?、といった様々な質問を17名の有名投資家にぶつけ、その内容をインタビュー形式でまとめた本です。
- なお、同じようなインタビュー形式の本として「成長株投資の神」という本があります。マーケットの魔術師が有名トレーダーの人生、体験から得た教訓や投資哲学を聞き出すことに重きを置いているのに対し、成長株投資の神は有名投資家の投資手法に紙幅を割いています。本書のような投資哲学にあまり興味の無い方や有名投資家の投資手法を知りたい方は「成長株投資の神」をおすすめします。
「マーケットの魔術師」のハイライト
ファンダメンタル、テクニカル、場味、この三つがそろったとき、初めて最高のトレードが可能になる。第一にファンダメンタル分析では、大きなをつかむ上で大切な需給関係のアンバランスを読む。第二チャートでファンダメンタルに基づいた方向へ相場が向いているかを確認する。そして、何か材料が出ると、場味を反映して相場は本来の方向へ反応しようとするものなんだ。No.573(Amazon Kindle位置情報)
このハイライトは、運用資産を10年間で2500倍に増やした伝説的なトレーダーであるマイケル・マーカスが語った言葉です。マーカスはクラーク大学で心理学の博士号をとったとき、友人の紹介でジョンという男性と知り合います。「時計が時を刻むように2週間ごとに資金を倍にしてみせる」という彼の甘言に乗せられた結果、マーカスは持ち金を失ってしまいました。
この失敗を機にマーカスは投資の世界に本格的に足を踏み入れ、相場の研究を重ねていきました。何度も資金を失いながらも挑戦を続け、ついに合板と材木の先物市場で成功を収めます。そして、その後も数々の成功を収め、トップトレーダーとして安定した成績を収めました。
インタビューの中でマーカスは、ファンダメンタル、テクニカル、場味の三つの要素が重要であると述べています。これらの要素がそろったときはポジションを普段の5~6倍にして大きな儲けを狙い、ポジションに自信がなくなれば素早く損切りすることで、利益の最大化を図っています。
それからは不安定になるような損が出た場合、フロアを離れ、家に帰って昼寝をするなり何なりして、次のトレードの決断を下すまでに少し時間をあけるということを学んだよ。こっぴどくやられているときは撤退すべきだ。振り返ってみれば、損に対するルールを自分で持っていれば、あんな不愉快な思いをしなかっただろうということがわかった。No.1652
このハイライトは、わずか400ドルの元手から2億ドルを超える資産を築いたリチャード・デニスが語った言葉です。デニスはミッド・アメリカ取引所でフロントランナー(注文の取次人)として働いていましたが、次第にコモディティー市場に興味を持ち、商品先物のトレーダーとしてのキャリアをスタートさせます。家族から借りた1600ドルの資金のうち、会員権の取得に1200ドルを費やし、残りの400ドルというわずかな資金での船出でした。
これ以上はひどくならないと思えるほどのひどいトレードを繰り返しながら、1970年のトウモロコシ相場を当て資金を2000ドルに増やすことに成功します。そして、その後も数々の成功を収め、伝説的なコモディティ・トレーダーになりました。
インタビューでデニスは、損をしたときは取り戻そうとか取り戻すために資金を2倍にしたりせず、次のトレードまでに時間を空けるべきだと述べています。損をするようなときは大体すべての市場で横ばいの状態になっており、だましにあう確率が高くなります。したがって、自分の心を落ち着け、資金を来るべきチャンスのために残すために、損した時は時間を置くべきです。
ほとんどの人は損が出た取引のことを悪い賭けだったと思う。これは大間違いだ。良い賭けでも損が出ることはある。勝算が五〇対五〇で、一ドル損するか二ドル儲かるかだとしよう。これは負けたとしても良い賭けだ。大事な点は、これに何度もかけ続ければいずれ勝つということだ。No.3187
このハイライトは、投資ファンドマネージャーのラリー・ハイトが語った言葉です。ハイトは役者、脚本家、ロックのプロモーターといった職を転々とした後、ウォール街に転じた異色の経歴を持っています。ウォール街で株式ブローカーの職に就いたハイトは、数年後にフルタイムで商品取引のブローカーとして働きました。
ウォール街で働く中で、市場が効率的だと言っている人はみんな貧乏だと気付きます。市場は非効率で、投資が成功するかは単なる勝算の問題にすぎないと考えたハイトは、徹底的なバックテストを行い、市場に打ち勝つ方法を編み出します。ミント投資顧問を設立したハイトは、統計的なアプローチを用いて、1981年から1988年の半ばまでで年平均複利利益率30%以上を達成しました。特筆すべきはそのリスクの低さで、運用期間6か月間の最大損失は15%で、12か月では1%以下になっています。
インタビューでラリー・ハイトは勝ちか負けかではなく、リスクとリターンのバランス、とりわけリスクを抑える重要性を繰り返し語っています。リスクを総資産の1%以下に抑え、トレンドを追いかける手法を固く守ることで、成功を収めることができます。
「マーケットの魔術師」のおすすめポイント
「マーケットの魔術師」は、有名投資家の投資哲学が学べる本です。
どのようなきっかけでマーケットに興味を持つようになったか?、過去に犯した最悪の失敗とそのことから何を学んだか?、自ら構築したトレード手法とその背景にある概念は?、といった様々な質問を17名の有名投資家にぶつけ、その内容をインタビュー形式でまとめた本になります。
この本の著者であるジャック・D・シュワッガーはトレード歴はあるものの、有名投資家といえる存在ではありません。そのため、各投資家へのインタビューの際に事前準備をしっかりと行い、そのトレーダーの本質を炙り出そうと苦心している様子が伺えます。
各質問に対する回答の違いや共通点を探すことで、成功者が持つ様々な価値観や普遍的な法則を学ぶことができるでしょう。
なお、同じようなインタビュー形式の本として「成長株投資の神」という本があります。マーケットの魔術師が有名トレーダーの人生、体験から得た教訓や投資哲学を聞き出すことに重きを置いているのに対し、成長株投資の神は有名投資家の投資手法に紙幅を割いています。
本書のような有名トレーダーの経歴や投資哲学にあまり興味の無い方、有名投資家の投資手法についてより深く学びたい方は、「成長株投資の神」をおすすめします。
「マーケットの魔術師」の著者
「マーケットの魔術師」の著者はジャック・D・シュワッガーです。
シュワッガーは大学卒業後にコモディティのリサーチ・アナリストの職に就きました。その後、アナリストレポートを執筆する傍らで、自己資金を使ってトレードをはじめ、現在はマサチューセッツ州にあるマーケット・ウィザーズ・ファンドの代表を務めています。
本書のほかにも「新マーケットの魔術師」、「シュワッガーのテクニカル分析」といった本を出版しており、会社経営だけでなく一般投資家への投資啓蒙活動も積極的に行っています。