目次
テクニカル分析の教科書ともいうべき一冊「テクニカル投資の基礎講座」
- 「テクニカル投資の基礎講座」は、タイトルの通りテクニカル分析について解説された本です。著者は経済紙やメディアへの寄稿、機関投資家へのアドバイザリーを行っているだけあり、説明がとてもわかりやすくなっています。
- 著者は、株価の動きを底値固めの第1ステージ、上昇局面の第2ステージ、高値圏で揉み合う第3ステージ、そして下落局面の第4ステージの合計4ステージに分け、各段階の説明を行っています。
- 頻出するチャートパターンや、買いと売り双方のエントリータイミング、目標株価の算出方法についても解説しているので、投資未経験の方でも実際の取引をイメージしながら読み進めることができます。
- 売買の一連の流れを豊富なチャートを用いて解説しているので、投資初心者から中級者の方まで多くの方にとって勉強になる本だと思います。ぜひご一読ください!
「テクニカル投資の基礎講座」のハイライト
同銘柄を1986年に買い推奨したとき、直近の12か月間の確定1株当たり利益は37セントで、まあまあであるが、さほど関心するほどのものではなかった。15ヵ月後に株価が200%上昇したとき、1株当たり利益はさらに悪化し、9セントであった。 p255
テクニカル分析を重視する理由として、著者が挙げた例がこのハイライトになります。一般的に、ファンダメンタルの観点からみれば、一株当たり利益が下がると収益性が低下するので、当然株価は下がります。
しかし、現実にはこの銘柄の株価は200%上昇しました。こういった現象は単なる偶然ではなく、市場の至る所でみられます。テクニカル分析―マーケットがいかに動いているか―を学ぶ必要性を、このことからも理解できると思います。
たとえPER(株価収益率)がそのときたった10倍であったとしても、さらにその1株当たり利益が増加していても、この株は明らかにトラブルに遭遇していた。同株は、いったん24ドルを下方にブレイクした時に第3ステージの天井が完成され、第4ステージが展開される準備が整ったのである。第4ステージに突入したICHコーポレーションは、その後の6か月間で―歴史的な大強気相場の真っただ中を―50%以上も下落したのである! p654
この本では、株価の動きを底値固めの第1ステージ、上昇局面の第2ステージ、高値圏で揉み合う第3ステージ、そして下落局面の第4ステージの合計4ステージに分け、各ステージでの基本的な株価の動きを説明しています。
このハイライトは、30週移動平均線を下回る第4ステージ(株価の下落局面)の注意事項を示しています。株価が下落する第4ステージではたとえ指標が割安であっても、相場環境が良好であったとしても、株価が大きく下落する可能性があります。したがって、30週移動平均線が水平に近づき、底値固めが進むまでは買いを入れてはいけません。
しかし、この手法に限らず私が教示するすべての手法を、完璧なものであると過信してはならない。失敗する可能性は常にあるし、連続的な騙しに遭遇することもある。それは単に、ビジネスをする上での一種のこすとである。この完璧さの欠如は、われわれが手に入れたいと思っている大きな利益を獲得するための規律あるアプローチに対して支払うべき、小さな対価である。 p2656
実際の投資に当たっては、レンジ相場や機関投資家のふるい落としによって、ブレイクアウトや売買シグナルを見誤ることが良くあります。
しかし、どんな状況であったとしても、あらかじめ決めた損切ラインに達したら、潔くポジションを縮小するか損切を行うべきです。小さな損失を受け入れずにナンピンを繰り返せば、悲惨な下落局面で大きな損害を被る可能性があります。
投資家は決して機械的な損切率を使ってはならないが、私の長年の経験によると、短期間で大勝利につながるブレイクアウトでは、そのブレイクアウト・ポイントから4~6%以上プルバックする(押す)ことはほとんどない。したがって、何らかの意味あるストップ・ポイント見いだすことができない場合、ブレイクアウト水準より4~6%下に設定すればよい。 p2743
エントリー時(売買時)のストップ・ロスの置き方についての解説です。なお、スタン・ウエンスタインはストップ・ロスを機械的に置くのではなく、意味のある価格(50,100,200,500などのキリの良い価格)の下に置くべきだとしています。
キリ番は多くの投資家が意識する節目になりやすいため、売買の注文が多く入っています。よって、そのラインで株価が反転する可能性が高いと考えられます。もし、反転することなく勢いよく突破すれば、そのトレンドは強力なものです。ストップロスをキリ番のすぐ下に置くことで、こうした強力なトレンドに巻き込まれずに済みます。
なすべきことは、重要な下落が開始する前の高値から次の安値を引くことである。 p2859
ブレイク・アウト(直近の節目を突破)後の目標株価は、直近高値から安値を引いた値幅と等しくなります。例外ももちろんありますが、かなりの高い精度を有しています。著者はこの目標値幅算出方法をスイングルールと呼んでいます。
「テクニカル投資の基礎講座」のおすすめポイント
テクニカル投資の基礎講座は、タイトル通りテクニカル分析について書かれた本です。単なるチャート解説に終始せず、チャートパターンの原則的な動きや利益目標の目途となる値幅理論、ストップロスの置き方といった具体的な取引手法についても触れられており、包括的・網羅的な解説本になります。
この本の構成としては、株価の動きを底値固めの第1ステージ、上昇局面の第2ステージ、高値圏で揉み合う第3ステージ、そして下落局面の第4ステージの合計4ステージに分け、各段階の基本的な株価の動きを説明しています。
市場の環境認識について触れた後、頻出するチャートパターンや、買いと売り双方のエントリータイミング、目標株価の算出方法についても解説しているので、エントリーから利食いまで投資未経験の方でもイメージしながら読み進めることができます。また、要所要所で読者の理解を問うクイズが出題されているため、自分の理解度を簡単に把握することができます。
テクニカル分析についてここまでわかりやすく書かれた本はなかなかありません。環境認識の方法から具体的な個別銘柄の分析、エントリータイミングに、取引の際のストップロスの置き方など、投資の最初から最後まで豊富なチャートを用いて、流れに沿って説明されているので、投資初心者や中級者までの方におすすめな本です。
「テクニカル投資の基礎講座」の著者
プロフェッショナル・テープ・リーダーの編集長で発行人。ウォール・ストリート・ジャーナルやバロンズ、ニューヨーク・タイムズ、ビジネス・ウィークなどアメリカの主要な新聞・雑誌に寄稿しています。現在は機関投資家向けのアドバイザリーを行っています。