【難しい数式なし】成長株投資の極意が分かる「ピーター・リンチの株で勝つ」

株の本を読んでみた ピーター・リンチの株で勝つ

【難しい数式なし】成長株投資の極意が分かる「ピーター・リンチの株で勝つ」

この記事のポイント
  • 著者のピーター・リンチは1977年から90年までマゼラン・ファンドを運用。同ファンドは年率29.2%を達成し、全米有数の投資信託に成長しました。
  • 「ピーター・リンチの株で勝つ」は、投資の可否をその企業の資産や利益に基づいて判断する「ファンダメンタル分析」の重要性を説く本です。具体的な判断基準も示されているので、どういう銘柄に投資すればよいか分からない人にとって最適の本です。
  • 数式は一切使用されておらず、専門用語も少ないため、初心者の方でも読みやすい内容となっています。

「ピーター・リンチの株で勝つ」のハイライト

あなたは時価総額が増えることを望んでいるのであり、そしてそれは新しい買い手があなたより高値で買ってくれない限り望めない。このことを念頭に置いて、ドット・コム企業が10倍株(テンバガー)になるには、その時価総額も10倍、つまり100億ドルが1000億ドルになっていなければならないことがわかる。この目標となる時価総額を算出したら、あなたは、ドット・コム企業が1000億ドルの値打ちを持つためにはどれほどの利益を出さなければならないか?と自問自答しなければならない。 p148

インターネットバブルを振り返り、一般投資家への教訓として書かれた文章です。バブル期のIT企業のように収益見通しが不透明な企業への投資は、つい株価に注目してしまいます。

IT企業の株価が30ドルをつけ、優良企業の株価が10ドルであれば、株価を重視する人はIT企業のほうが優れていると考えます。しかし、それは錯覚に過ぎません。株価が将来収益を織り込むことは当然のことですが、時には行き過ぎてしまうこともあります。

企業の価値を評価する唯一の指標は利益しかなく、利益見通し、財務状況、競争上の位置、成長計画など綿密に調査して理解しない限りは投資してはいけません。

注意
某掲示板には「あの銘柄は〇×円でこの銘柄は△◇円だからあの銘柄の方が良い」といった書き込みが散見されますが、これは不適切な考え方です。例えば、収益を生まない純資産額100円の企業が100株発行すれば、一株当たりの純資産額(実質的な株式価値)は1円になります。また、同じ企業が1株しか発行しなければ、一株たりの純資産額は100円ということになります。同じ企業でも発行する株式の数が異なれば、当然その価値も異なります。単純に株価だけを比較しても意味がないので注意が必要です。

私の値下がり株は、重要なことを思い起こさせてくれる。それは、自分の選んだすべての株で儲ける必要はない、ということである。私の経験では、ポートフォリオの10銘柄中の6銘柄が値上がりすれば満足すべき結果が得られる。 p251

株式投資で生じる損失は、信用取引に手を出さない限り、投資金額に限られます。つまり、100万円分株式投資を行えば、損失額は最大で100万円にとどまります。一方で、株価の上昇には天井がありません。

素晴らしい株に投資できれば100万円が1,000万円や1億円にも膨れ上がります。ピーター・リンチは「株式投資で成功するために必要なのは大幅に値上がりするいくつかの銘柄であり、それらによるプラスは期待外れの株の損失を埋めて余りある」と述べています。

私の個人的な好みは、年に20~25%の成長を遂げ、うまくすれば株価は10倍から40倍、あるいは200倍にもなりそうな積極性のある小企業である。 p1866

ピーター・リンチは各企業をそれぞれの特徴に合わせ、低成長株、優良株、急成長株、市況関連株、業績回復株、資産株の6つに分類しました。個々の企業を徹底的に調査して割安な有望企業に投資するピーター・リンチは、中でも急成長株への投資を好みました。というのは、成長を続けれられる限り、急成長株は好調な業績に伴って株価の方も急上昇するからです。

急成長株は低成長産業にも存在し、ある場所で成功した方法を次々に新しい店舗に応用することで、収益は驚異的に増加。株価をはるか高みに押し上げます。

経営的にも資金繰り的にも無理をしがちな急成長会社への投資には多くのリスクが伴います。しかし、財務内容や収益性を綿密に調べることでいつ成長が止まり、どれだけの資金をその成長に賭けるべきかを見極めることができます。急成長株は高いリターンをもたらす可能性が高いため、しっかりとした調査を行い積極的に投資を検討すべきです。

人はよく日本や韓国の投資家の動向を気にするが、結局は収益が株価を決定するのである。また、短期的な相場のアヤを気にするが、長期的な株価動向は収益にかかっている。時に例外もあるが、自分の持ち株のチャートを調べれば、私の言おうとしていることはわかるだろう。 p2563

ピーター・リンチの投資原則は「企業収益がどう変化するか」ということに尽きます。株というものが宝くじではなく、ある会社の部分的な所有権である以上、株価は必ず収益に基づいた価値に収束します。企業をその資産価値や収益力に基づいて評価する、ファンダメンタル投資の大家ならでは言葉だと思います。

私の考え方としては、以下のような銘柄をたくさん保有することがベストである。①自分の得意な分野に関係する銘柄、②あらゆる調査の結果、非常に有望な見通しを発見したとき。 p3729

投資家はいくつの銘柄を保有すればよいか?という問題には、2つの見解があります。

一つは運用の手間と成功した場合のリターンを重視する考え方で、「あなたの持っている卵は全部一つのバスケットに入れなさい」というものです。反対に、「卵を全部一つのバスケットに入れてはいけません。穴が開いているかもしれないから」というパフォーマンスの安定性に重きを置く考え方もあります。

この問題に対して、ピーター・リンチはハイライトのように回答しています。なお、ピーター・リンチの運用するファンドでは30~40%を成長株に、10~20%をその時々で確実な株に、10~20%を市況関連株に、残りを業績回復株に投資しています。リンチは、綿密な調査を通して成功する確証を得られたのなら、自信を持った銘柄をすべて購入すべきだという考えのようです。

「ピーター・リンチの株で勝つ」のおすすめポイント

「ピーター・リンチの株で勝つ」は、ピーター・リンチ自らが自身の投資手法をまとめ、一冊の本に書き上げたものです。難しい数式などは一切用いず平易な言葉で書かれているため、とても読みやすくなっています。

リンチは「結局は収益が株価を決定する」ので、企業業績が大きく拡大しそうな銘柄を選択すべきだと主張しています。そして、そうした銘柄を見つけ出すには日常生活の中で話題となったり、優れた製品を生み出す企業に注意を払うべきだと指摘しています。

業績が大きく伸びる企業は、一見すると成長する見込みのない低成長産業にも存在します。このような企業は新しい技術や優れたコンセプトを応用することで、どんなにさえないセクターでも落ち目の他社を追い落とすことで急成長を遂げていきます。

したがって、気になった企業が花形産業やアナリストが注目する銘柄ではなくても心配する必要はありません。むしろ、誰にも注目されていない銘柄こそ大きなリターンを生み出す可能性があるとリンチは述べています。

ハイライト部分ではまとめきれませんでしたが、本書でピーター・リンチは株を6つに分類し、それぞれの特徴に合わせて投資判断基準や注意点などをまとめています。また、株にまつわる誤った考え方(「もうこんなに株価が下がったからこれ以上は下がらない」といった誤解)についてもピーター・リンチの考え方が示されており、興味深い内容となっています。

「ピーター・リンチの株で勝つ」はどういう銘柄に投資すれば良いか分からないような、株式投資を始められたばかりの方にお勧めの本です。是非ご一読ください!

「ピーター・リンチの株で勝つ」の著者

この本の著者であるピーター・リンチは、1969年にフィデリティ社に入社し、1977年から90年までマゼラン・ファンドの運用を担当しました。70年代から80年代前半の「株式の死」と呼ばれる相場環境下にあっても、運用期間を通して年率29.2%という圧倒的なリターンを挙げました。

在任中のダウ平均株価のリターンが2倍であるのに対し、マゼラン・ファンドのリターンは20倍を超えています。ピーター・リンチは、他の追随を許さない圧倒的な投資パフォーマンスで、同ファンドを全米でも有数の投資信託に育て上げることに成功しました。

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