【投資家必読】伝説的の投資家をリアルに描いた小説「欲望と幻想の市場 伝説の投機王リバモア」

株の本を100冊読んでみた 欲望と幻想の市場 伝説の投機王リバモア

【投資家必読】伝説的の投資家をリアルに描いた小説「欲望と幻想の市場 伝説の投機王リバモア」

この記事のポイント
  • 「欲望と幻想の市場」はジャーナリストのエドウィン・ルフェーブルが伝説の投機家として知られるジェシー・リバモアを取材して著したものです。ジェシー・リバモアの著書ではありません。
  • この本は投資手法を解説する類の本ではありません。また、ほぼ100年前に書かれた作品であるため、時代背景や取引制度が異なっています。現代の視点から読み進めていくと、少し理解しにくい部分があります。
  • しかし、描かれる相場観や人物像にはリアリティーがあり、金言にあふれています。リチャード・デニスやデビット・ライアンなど著名投資家も勧める良書です。株式投資家なら一度は読むべき必読の書といえます!

「欲望と幻想の市場 伝説の投機王リバモア」のハイライト

今日の変動の理由は時がたてばわかるかもしれない。あるいは、数日たっても、数週間、数か月たってもわからないかもしれない。それでも何ら問題はない。重要なのは現在である。だが、ただちに行動しなければ手遅れになるのだ。 p124

この本の主人公ジェシー・リバモアは初等中学を卒業してすぐ証券会社の相場ボードの黒板書きという職に就きます。14歳という若さでありながら、数学的なセンスに恵まれていたリバモアは、すぐに相場の価格変動に興味を持ち、研究を始めます。

このハイライトは、リバモアが初めて相場から導き出した信条の一つで、一生を通し終始変わることがありませんでした。市況や相場の研究を熱心に行っても自分の信念に固執せず、常に変動する相場と向き合ってきたリバモアらしい信条だと思います。

相場で生計を立てていくつもりであれば、自分を、自分の判断を信じなければならない。この信条ゆえに俺は他人の情報を信用しないのだ。他人の情報によって株を買ったなら、売る時もその情報に従わねばなるまい。p670

市場の研究を十分に行ったリバモアは、その成果を合百(ごうひゃく)で試し、大成功を収めます。若くして大金を手にしたリバモアでしたが、出入りできる合百が減ったことから、ニューヨークに行き、本格的な取引を始めます。

しかし、合百と市場の取引方法の違いから、リバモアは破産。この文章は、合百と市場のルールの違いを冷静に分析し、破産という手痛い失敗から立ち直る場面で出てきます。トレーダーは誰にも頼ることができず、ある種の強さが必要です。そんな相場参加者としての覚悟が感じられる良い文章だと感じました。

すべきではないことを学ぶには、持てるもの一切合切を失うというのが一番だ。金を失わないためには何をすべきでないかが分かった時、相場で勝つのに何をすべきかということがようやくわかり始めるのだ。俺の言っていることが理解できたら、そう、進歩しているということだ。 p1071

合百では簡単に資金を増やせるにもかかわらず、リバモアはニューヨークに来ると破産してしまいます。何度も無一文に陥ったリバモアでしたが、挫けることはありませんでした。失敗の都度自省し、ニューヨークでの再起を図ります。この描写は、3度目のニューヨーク進出に賭けるリバモアの心情を描いたものです。

大きく儲けるには個々の株の変動ではなく、全体の動きをみなければならないということ―換言すれば、テープの情報を読み取るのではなく相場全般の状況とトレンドを判断しなければならないということ―を分かった時点で、相場の学習が大きく一歩前進したと、俺は思う。 p1249

テープリーディングで個々の株式の投資判断を行っていたリバモアでしたが、相場全体の動きには注意を払っていなかったことに気づきます。当時の強気相場においては、上昇局面がそろそろ終わると確信するまで、株を保有し続ける辛抱強さが必要でした。

リバモアはこの教訓を学び、ニューヨークでも成功を収め始めます。リバモアの転機となる言葉です。

そしてトレーダーは、トレンドに従って建玉を積み増していくべきなのだ。まず、手持ち資金の五分の一を回に投入する。もしここで利益が上がらなかったら、それ以上建玉を増やすべきではない。なぜなら取引の開始時点からミスが明らかだからだ。一時的にせよ誤ったわけで、過てば利益はありえない。p2376

ニューヨークで成功を収めたリバモアは何度も手痛い失敗を犯しますが、そのたびに失敗から学び、名声を築きました。このハイライトは、リバモアの特徴的な取引手法が記されている数少ない部分です。

ピラミッティングと呼ばれるこの手法は、相場の流れ(トレンド)に少額で飛び乗り、利益が増えるにつれて徐々にそのポジションを積み増していくというものです。一回で大きなポジションをとる手法と比べればうまくいった場合の利益額は減りますが、間違っていた場合の損失が少額で済むという利点があります。

「欲望と幻想の市場 伝説の投機王リバモア」のおすすめポイント

「欲望と幻想の市場」は、ウォール街を中心に活動するジャーナリストのエドウィン・ルフェーブルが著した作品(小説)です。絶頂期を迎えていたジェシーリ・バモアに丹念なインタビューを繰り返して描かれたため、圧倒的なリアリティーを感じさせる素晴らしい作品となっています。

注意
原作では主人公の名がラリー・リビングストンとなっており、リバモアの名が伏せられています。しかし、翻訳者の思い入れから翻訳版の「欲望と幻想の市場」では主人公の名がモデルとなった「ジェシー・リバモア」に戻されています。

本作はハイライト部分で分かるように、随所に金言があふれてています。また、巨額の資金を操って相場を張り、成功と挫折を繰り返すリバモアの投資家心理が丁寧に描写されており、下手な投資関連の書籍よりも相場や投資家の本質を突いています。

相場を知る人も知らない人も、この本を読めばジェシー・リバモアの人生に魅了されること間違いなしの良作と言えるでしょう。

なお、この本はほぼ100年に書かれているため、時代背景や制度など理解しがたい部分が多々あります。それでも、この作品はリチャード・デニスやデビット・ライアンのような有名投資家が推薦する名著の一つです。相場の醍醐味を味わえる良作なので、ぜひご一読ください!

「欲望と幻想の市場 伝説の投機王リバモア」の著者

この本の著者は経済ジャーナリストのエドウィン・ルフェーブルです。ウォール街を中心に取材を重ねており、本書のほかにも「ウォール・ストリート・ストーリーズ  ―投機家たちのオンリーイエスタデー」などの著書があります。

この「欲望と幻想の市場」はエドウィン・ルフェーブルが最盛期のリバモアにインタビューを行い、執筆した作品です。リバモア自身の著書ではないので注意が必要です。リバモア自身の著書としては「リバモア流投機術」という本がありますが、チャートの記入方法など内容が独特なのであまりお勧めできません。本書の方が良い作品だと思います。

モデルとなったジェシー・リバモアについて

モデルとなったリバモアは、1987年に貧しい農家の子として生まれました。14歳で証券会社の相場ボードの黒板書きという職に就きます。そして、数学的なセンスから相場に興味を持った彼は、15歳の時に相場の世界に足を踏み入れます。

以後、紆余曲折を経て4度の成功と4度の破産、そして4度の結婚を重ねます。成功と挫折を繰り返して心身をすり減らしたためか、晩年は鬱状態であったといわれ、1940年にホテルの一室で拳銃自殺を図りこの世を去ります。

なお、この作品は取材・執筆時期の関係上、リバモアの悲惨な最期が描かれていません。それが良いことか悪いことかは分かりませんが、個人的には彼の築いた名声が守られたことに安堵しています。

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