誰でもわかる配当性向|投資の知識

誰でもわかる配当性向

誰でもわかる配当性向|投資の知識

この記事のポイント
  • 配当性向とは、当期純利益のうち企業がどれだけ配当金を支払ったかを表す指標で、配当金額を当期純利益で割って(一株あたりの配当金を一株あたり純利益で割って)計算されます。
  • 配当性向の数値が高ければ高いほど、稼ぎ出した利益から多くのお金を株主に分配していることになります。ただし、配当性向が高すぎると事業運営にまわす余力がなくなるので、数値が高いほど良いというわけではありません。
  • 配当性向は、各企業が置かれている事業環境や経営者の判断によって、大きく左右されます。具体的な目安はありませんが、売上高成長率(売上高の伸び率)が1桁の成熟企業は配当性向30~50%、売上高成長率2桁の成長企業は配当性向0%~20%くらいが適切だと個人的に考えています。

配当性向とは?

配当性向とは、企業が1年間に稼いだ利益(当期純利益)の中からどれだけ配当金の支払いに充てたかを表す指標で、1年間の配当総額を当期純利益で割ることで計算されます。

投資家は株式の値上がり益(キャピタル・ゲイン)や配当金(インカム・ゲイン)を計上することで利益を得ますが、株式の値上がり益はその時々の相場環境に左右される一方、配当金は毎期安定して支払われるので収益獲得の見通しを立てやすくなります。配当性向を確認することで、その企業がどれだけ株主還元に力を入れているかがわかります。配当性向が高い企業ほど株価も高値で安定しやすいので、投資の際には配当性向を必ず確認するようにしましょう。

配当性向の計算式

配当性向は配当総額を当期純利益で割って(一株あたりの配当金を一株あたり純利益で割って)計算されます。配当性向の数値が高いほど多くの利益を配当に回していることを意味し、会社の資産を無駄な事業投資で失う可能性が低くなります。そのため、配当性向が高い企業の方が投資リスクが低いと判断され、株価が高値で安定しやすくなります。

【計算式】

$$配当性向(%)=配当総額(一株あたり配当金×発行済み株式総数)÷当期純利益×100$$

または、

$$配当性向(%)=一株あたりの配当金÷一株あたりの当期純利益×100$$

なお、売上高が10%を超えるような成長企業にとっては、配当金を出さずに自社に再投資(事業拡大)した方が効率よく成長できます。そのため、グロース市場(高い成長可能性を有する企業向けの市場)に上場している企業は配当性向が低い方が良い場合もあります。配当性向だけに注意を払うのではなく、投資企業の状態を見極めて投資判断を行うように気を付けましょう。

MEMO
個人的には、売上高成長率(売上高の伸び率)が1桁の成熟企業は配当性向30~50%、売上高成長率2桁の成長企業は配当性向0%~20%くらいが適切だと考えています。この範囲から外れていてもすぐに問題となるわけでもありませんが、配当性向100%を謳うような企業は利益のすべてを配当に回すことになるため、事業拡大に費やす資金や事業環境の変化(例えば、コロナによって売上が減る等)に対応するための資金が確保できません。こうした企業は経営者に問題がある場合が多いので、配当性向が高すぎる企業には投資しない方が良いでしょう。

総還元性向とその計算式

配当性向によく似た用語として総還元性向というものがあります。総還元性向とは、配当総額に自社株取得金額を加えたものを、当期純利益で割って算出します。企業は自社の株価が過小評価されていると判断すれば、自社株買いを行うことができます。自社の株式を買い付けることで一株当たりの価値が上昇することから、配当と併せて株主還元の重要な手段の一つと位置付けられています。

注意
自社株買いとは、文字通り企業が自身の会社の株を購入することです。自社株買いを行うことで流通する株式数が減るため、株価が上昇しやすくなります。また同時に、発行済み株式数が減ることから、一株あたりの利益が増えて将来の配当金支払額も抑えることができます。

【計算式】

$$総還元性向(%)=(配当総額+自社株取得額)÷当期純利益×100$$

なお、総還元性向は配当性向と同じく、数値が高ければ高いほど株主還元に力を入れていることを示しています。しかし、企業の成長のためには一定の自己資金が必要となるため、総還元性向があまりにも高すぎる場合は問題があります。投資の際は必ず企業の財務状態をチェックした上で総合的に判断しましょう。

配当性向の目安

繰り返しになりますが、配当性向の数値が高ければ高いほど、より多くの資金を株主に分配していることになります。ただし、配当性向が高すぎると事業運営にまわす余力がなくなるので、数値が高いほど良いというわけではありません。一般的に上場後間もない企業や成長企業は、事業成長に多額の資金を必要とするため、配当性向は低くなる傾向があります。一方、ある程度の事業規模に達した成熟企業は、事業投資に資金をまわす必要がないため、配当性向が高くなります。

配当性向は各企業が置かれている事業環境や経営者の判断によって大きく左右されます。具体的な目安はありませんが、いくつかの事例を紹介したいと思います(2023年9月24日執筆時点)。

ゆうちょ銀行(7182)の株主還元方針

「ゆうちょ銀行の株主還元方針」同社HPより

「ゆうちょ銀行の株主還元方針(2023年9月時点)」同社HPより

ゆうちょ銀行の株主還元方針は、「株主還元・財務健全性・成長投資のバランスを考慮し、配当性向は50%程度とする方針」となっています。また、これ以外に自社株買い(2023年3月22日~2023年4月27日:取得総額79,999,985,300円)を不定期で行っている他、500株以上保有している株主に対して株主優待制度を実施しています。

「ゆうちょ銀行の損益の状況」同社HPより

「ゆうちょ銀行の損益の状況(2023年9月時点)」同社HPより

ゆうちょ銀行は日本郵政グループに属する銀行であり、全国に展開する郵便局ネットワークを通じて、幅広い個人客に総合的な金融サービスを提供しています。企業体質としてコスト高の構造(ネット銀行に比べて店舗網の維持に多額の費用が発生する)となっているため、業績はゆるやかな右肩下がりとなっており、その反面株主還元は手厚くなっています。典型的な低成長・高配当性向の企業と言えます。

アンビスホールディングス(7071)の株主還元方針

「アンビスホールディングスの株主還元方針」同社2023年9月期第3四半期決算説明会資料より

「アンビスホールディングスの株主還元方針」同社2023年9月期第3四半期決算説明会資料より

アンビスホールディングスの株主還元方針は「安定的な株主配当を基本とし、市場環境、規制動向、財務健全性等、総合的に勘案し、年1回の期末配当を実施」することとなっています。具体的には「中長期的に、TSR(株主総利回り)を重視し、成長ステージの変化に関わらず安定した利回り提供を企図」しているため、前年の配当性額を下回らないように安定配当に努めているようです。

MEMO
TSR(Total Shareholder Return:株主総利回り)は「(各事業年度末日の株価+当事業年度の4事業年度前から各事業年度までの1株当たり配当額の累計額)÷ 当事業年度の5事業年度前の末日の株価」で計算され、株式投資により得られた収益(キャピタルゲインと配当)を投資額(株価)で割った比率で表されます。端的に言えば、4年間の配当と測定日時点の株価の合計値を5年前の株価で割った、5年間の総投資利回りのことです。
「アンビスホールディングスの10年月足チャート(2023年9月24日時点)」マネックス証券より

「アンビスホールディングスの10年月足チャート(2023年9月24日時点)」マネックス証券より

アンビスホールディングスの配当性向は2023年9月24日時点で6.80%とかなり低い値となっていますが、利益の大部分を事業拡大の資金に充てているので、前期の売上高成長率は+50.46%、今期の売上高予想成長率は+32.98%と高成長を維持しています。業績が急拡大していることから株価も堅調に推移しており、2019年10月9日の上場から現在までの間に株価は約5倍ほど上昇しています。典型的な高成長・低配当性向の企業と言えるでしょう。

まとめ

配当性向とは、企業が1年間に稼いだ利益(当期純利益)の中からどれだけ配当金の支払いに充てたかを表す指標で、1年間の配当総額を当期純利益で割ることで計算されます。この数値が高いほど多くの利益を配当に回していることを意味するので、投資リスクが低いと判断されて株価が高値で安定しやすくなります。

ただし、売上高が2桁増を続けるような企業にとっては、利益を配当に回さず事業投資に使った方が効率よく成長できます。実際、アンビスホールディングス(7071)の配当性向は6.80%とかなり低いものの、前期の売上高成長率は+50.46%と高成長を達成しており、株価もこの4年間で約5倍ほど上昇しています。

配当性向に具体的な目安はありませんが、売上高成長率(売上高の伸び率)が1桁の成熟企業は配当性向30~50%、売上高成長率2桁の成長企業は配当性向0%~20%くらいが適切だと個人的に考えています。企業の経営状態によって求められる配当性向も変わってくるので、投資企業の財務諸表を必ずチェックし、総合的に判断して投資の可否を決定しましょう。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA