目次
中国の不動産市況は引き続き低迷。衝撃に備えよ。
- 2022年1~6月の中国の不動産開発投資額は累計で前年比△5.4%の6兆8,314億元(約140兆0,437億円)と低迷が続く。主要都市の販売価格指数も前月比・前年比割れが目立つ結果に。
- 不動産市況の悪化を受けて、市中銀行は不動産開発業者への融資を渋るように。結果として、恒大集団をはじめ、世茂集団、新力控股(集団)などの大手不動産開発会社が次々と債務不履行(デフォルト)を起こしている。
- 不動産開発会社の倒産は今後も続くと予想される。不動産セクターは関連産業も併せると中国GDPの24%に影響を与えるため、被害は甚大。連鎖破綻による衝撃に備えよ。
中国の不動産市況は引き続き低迷
中国の不動産開発投資額は引き続き減少傾向
2022年1~6月の中国の不動産開発投資額は累計で前年比△5.4%の6兆8,314億元(1元=20.5円でおよそ140兆0,437億円)となっており、2021年初から引き続き減少傾向にあります。新規に着工した住宅の面積は前年比△34.4%の664.23百万平方メートルまで落ち込み、竣工した住宅の面積も前年比△21.5%の286.36百万平方メートルに過ぎません。
中国の不動産販売価格も下落が続く
また、主要70都市の新築住宅の販売価格指数をみると、前月比や前年比割れを起こす地域が増えていることが分かります。特に、山西省太原市、河北省石家荘市、安徽省安慶市といった主要都市から距離のある地域で価格の下落が目立っており、バブル崩壊の足音は地方から忍び寄っているようです。
不動産開発業者の資金繰りは悪化
中国の不動産市況が軟化したことで、不動産開発会社の資金繰りがかなり厳しいものとなっています。2022年1~6月にかけての銀行借り入れによる資金調達額は前年比△27.2%の9,806億元(約20兆1,023億円)、増資や起債などの自己資金調達額は前年比△9.7%の2兆7,224億元(約55兆8,092億円)となっており、資金の確保が上手くできていないことが分かります。
現在、中国では不動産開発業者の倒産が相次いており、今年だけでも恒大集団をはじめ、正栄地産集団、世茂集団、中梁控股集団、新力控股(集団)、禹洲集団などが債務不履行(デフォルト)を起こしています。外貨の確保が難しいドル建て債だけでなく、返済の容易な元建て債でもデフォルトが発生していることから、状況はかなり深刻なようです。
連鎖破綻による衝撃に備えよ
ブルームバーグの報道(中国当局が市中銀行に圧力、不動産融資伸びず-貸し手は共倒れ警戒か)によれば、中国当局が金融機関に対して不動産開発業者向けの融資を増やすように指導しているようですが、市況の悪化と開発業者の度重なる債務不履行を警戒して市中銀行も及び腰となっているようです。
中国において「当局の意向が反映されない」ということはあり得ない事態です。それが起きているということは、実態が驚くほど悲惨なものなのだと思います。不動産セクターは中国のGDPのおよそ6.7%を占めており、関連産業も併せるとGDPの24%が影響を受けると推定されています。当局の指導でさえ効果を発揮しないのなら完全に打つ手はありません。衝撃に備えた方が良さそうです。