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機関投資家の空売りの手口~空売り成功例と失敗例~|投資の知識
- 機関投資家の空売りの手口は企業によって大きく異なります。ゴールドマン・サックス証券やモルガン・スタンレーMUFG証券などの一部の機関投資は、細かく売買を行って本格的な売り崩しを狙ってきます。豊富な運用資金を使って長期間にわたり巨大な売りポジションを維持するので、機関投資家が空売りしている銘柄には手を出さないほうが良さそうです。
機関投資家の空売りの手口~空売り成功例と失敗例~
空売り成功例~システムソフト(7527)~
ドイツ銀行の空売り手口
上の画像はドイツ銀行によるシステムソフト(7527)の空売り例です。
8月2日に発表されたシステムソフトの2021年9月期第3四半期決算が前四半期比で減益だったことから、決算明け後の8月3日(①)と翌8月4日に465,300株と225,200株の売りポジションを建てています。
その後、他の機関投資家も空売りを行っていたこともあり、システムソフトの株価は順調に下落していきました。最終的にドイツ銀行は8月17日、20日、24日(②~③の期間)に空売り分を買戻し、ポジションをすべて手仕舞っています。
この例から考えると、ドイツ銀行の空売り手口は「割高な銘柄が期待外れの決算を出したタイミングで空売りし、10~20%の利益が乗った段階で利益確定する」という手法のようです。
ゴールドマン・サックス証券の空売り手口
画像はゴールドマン・サックス証券によるシステムソフト(7527)の空売り例です。
エントリーポイントはドイツ銀行と同じで、2021年9月期第3四半期決算の決算発表を確認してから空売りを開始しています。決算明けの8月3日(①)と翌8月4日に824498株、335300株を売り建てています。
ドイツ銀行と異なる点はエントリー後の売買手法にあります。ゴールドマン・サックスの場合は25日移動平均線(黄色線)に触れたタイミング(②)や短期移動平均線(緑線)を上抜けそうなタイミングで一部利益確定を行い、短期移動平均線を大きく超えた翌日(③)に新しく売りポジションをつくり直して売り崩しを図っています。
その後も、短期移動平均線と中期移動平均線がデッド・クロスしそうな場面(④)や25日移動平均線への戻りを試した局面(⑤)で売り圧力を加えて、チャートを積極的に操縦しようと試みてます。
この事例を踏まえると、ゴールドマン・サックスの空売り手口は「細かくポジションを調整しながら相場をコントロールし、トレンドが継続する限り利益を増やし続ける」戦略のようです。
空売りの失敗例~ジェイリース(7187)~
野村インターナショナルの空売り手口
次に機関投資家の空売りが失敗した例を見ていきたいと思います。上の画像は野村インターナショナルによるジェイリース(7187)の空売り失敗事例です。
野村インターナショナルは2021年8月4日と5日にダブルトップの形(①)を狙って、空売りを仕掛けました。ただし、エントリー後に25日移動平均線を強く下抜けしなかった(②)ので、8月10日、11日、12日に空売り分を買戻し、すぐさま撤退しています。
その後、野村インターナショナルは10月11日、12日、13日にダブルトップの形を狙って(③)、再度空売りポジションを仕掛けています。
この事例を見る限り、野村インターナショナルの空売り手口は「チャートがダブルトップをつけるタイミングでエントリーし、25日移動平均線を強く下抜けるか否かで投資を継続するか撤退するか」判断しているようです。
モルガン・スタンレーMUFG証券の空売り手口
最後にモルガン・スタンレーMUFG証券の空売り失敗例を見ていきたいと思います。
モルガン・スタンレーMUFG証券はゴールドマン・サックス証券と同じような空売り手法を採用しているようです。8月25日に割高な銘柄が大きい陰線をつけたのを見て、翌々日の8月27日(①)から63,719株の空売りポジションを作っています。
その後、細かくポジションを調整しながら短期移動平均線と中期移動平均線がデッド・クロスするタイミングでさらに空売りポジションを増やし、本格的な売り崩しを図っています。
しかし、売り圧力に負けずに株価は力強く上昇し、移動平均線もゴールデン・クロスしてしまいます。モルガン・スタンレーMUFG証券はダブルトップの形(②)を狙って9月16日に最後の空売りを行いますが、他の機関投資家の空売りポジションが踏みあげられたこともあって、最終的に株価は高値で引けました。最後の売り崩しも失敗したため、翌17日、21日に空売りポジションを返済し、撤退しています。
モルガン・スタンレー証券の空売り手口は「割高銘柄が高値圏で値を崩したタイミングで売り仕掛け、株価が下落すればポジションを継続、株価が上昇して直近高値を抜ければ損切する」という手法のようです。
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ノムラ(野村)・インターナショナルの空売り手法とは?|投資の知識機関投資家の空売りの手口を学べる本は?
空売りの手口について学ぶなら、「オニールの空売り練習帖」という本がおすすめです。
この本によると、適切な空売りポイントが出現する前に「多くの場合、株価は天井をつけたあと、50日移動平均線を下方に急激にブレイクする。これが起こると、多くの場合、株価は2回から4回、50日移動平均線を上抜くような反発を試す。(amazon kindle位置情報 435/1054)」といった現象が起こるとされています。
そして、適切な空売りポイントとして「株価が出来高を伴って50日移動平均線を下方に急激にブレイクアウトするかどうか注意しなくてはならない。この2回目のブレイクアウトが起こった場合こそが、天井からの最初のブレイクアウトで始まった下降トレンドの確認であり、このとき50日移動平均線の下方へのブレイクアウトにできるだけ近いポイントで空売りを始めるべきである」と説明しています。
この本の中では他にも、空売り銘柄の選定基準、空売りする際の注意点、買戻しポイントなどにも触れられており、この一冊で空売りのテクニックを存分に学ぶことができます。空売りに特化した本は数が少なく、ましてや内容の伴っている本はほとんどありません。空売りについて学べる貴重な一冊なので、ぜひご一読ください!
まとめ
機関投資家の空売りの手口を見てきましたが、その手法は企業によって大きく異なるようです。
ドイツ銀行や野村インターナショナルは、空売り後にポジション調整をほとんど行いません。反対にゴールドマン・サックス証券やモルガン・スタンレーMUFG証券は、利益確定と新規の空売りを細かく行いながら本格的な売り崩しを狙ってきます。
機関投資家は資金量も豊富なので、個人投資家が太刀打ちできる相手ではありません。どんな機関投資家であっても、大口の売りが入っている銘柄は避けた方が無難でしょう。