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あまりおすすめはできないがリバモアの投資手法が分かる唯一の本「孤高の相場師リバモア流投機術」
- 孤高の相場師リバモア流投機術は、「欲望と幻想の市場」とは異なり、ジェシー・リバモア本人が自らの取引手法をまとめた本です。
- マーケットに関する考え方やリバモアの思想が随所に垣間見れます。オリジナリティーという面では圧倒的に面白い本になります。
- チャートが記載されておらず、すべて言葉による説明のため、トレードの再現性が乏しいと思います。また、最後のリバモア流のチャートのつけ方もそうですが、説明が不足しているため理解しがたい部分があります。
- この本を読んだからといってリバモアと同じような再現性のあるトレードはできません。執筆された年代が古くリバモア独自の手法なので仕方ありませんが、少し残念に感じました。
この本のハイライト
成功によって手にできる成果は、自ら記録をつけ、自ら考え、自ら結論を出すという点において、どれだけ偽りなく誠実に努力したかに比例する。 p78
この本の著者であるジェシー・リバモアは、愚か者や怠け者、感情の不安定な人、一攫千金を狙うものは必ず破産すると述べています。
投資で成功するには次におこる価格変動がどうなるか自分の見解を持たなければならず、そうした見解を持つには明確な根拠を持たなければなりません。根拠を持つために必要な作業を他人委ねても、結局のところ結果を負うのは自分自身です。
したがって、リバモアは自分の見解に確信を持つために不断の努力が必要であると述べています。
マーケットはけっして誤らないが、個人の見解はしばしば誤る。個人的見解など、市場がその通りに動かなければ、投資家や投機家にとって何の意味もない。だれ一人として、あるいはどんな集団であっても、市場の動きを決めることなどできはしないのだ。 p121
ある情報が市場に公にされたとき、その情報が市場に明確な強気あるいは弱気な影響を与えそうだと判断しても、市場の実際の動きで裏付けが得られるまでは、行動に出てはいけません。
なぜなら、自分の予測が外れ、予想していたほど市場が反応しない場合があるからです。特に、市場にトレンドが発生し、それが一定期間継続した後は、売られすぎや買われすぎの状態にあるため、強気のニュースも弱気のニュースも市場に影響をほとんど与えません。
その株が正しく動き、マーケットが正しいのであれば、利益の確定を焦ってはいけない。もし間違っていればまった利益が出ないのだから、自分の判断に自信を持っていい。そのままずっとマーケットに乗るのだ。それは時に非常に大きな儲けになるかもしれない。マーケットが不穏な動きを見せないかぎり、信念に従ってトレンドに乗り続けるのだ。 p165
リバモアはテープリーディングを得意としていました。そのため、直感的な判断を重視した短期売買を繰り返すイメージがあります。しかし、上記の文章を読めば、リバモアが市場トレンドに沿って売買を行う、トレンドフォロワーであることが分かります。
リバモアは個別銘柄のトレンドに従って売買するのではなく、複数の業種、複数の銘柄を観察することで相場全体のトレンドを判断していました。複数の観察銘柄が市場の反転を示唆し、はりっきりとした兆候が確認できれば、そこでようやく投資を行いました。
何年もの間、トレードで利益を出すたび、私は現金を引き出すことを習慣にしていた。一度に二十~三十万ドルの割合で金を引き出していた。これは得策であり、心理的価値がある。 p470
投機家はごく短期間のうちに富を増やしたいと考え、無謀な投資を繰り返します。また、まれに成功はしても、破滅的なことが起こるまで有り金をすべて賭け続けていつかは破産してしまいます。
そこで、リバモアは利益を出すたびに収益の半分を引き出すことを勧めています。実際に儲けたお金を手にすることで、利益を失う無鉄砲な賭けに出たい気持ちを抑えることができます。とはいうものの、リバモア自身も他の投資家と同様にこのルールを習慣化することができず、4度も破産する羽目になりました。
ある銘柄を500株買いたいとしよう。まずは100株買う。その後相場が上昇すればもう100株買う、ということを繰り返すべきだ。購入単価は常に前回よりも高くなければならない。 p655
このハイライトは、リバモアが得意とするピラミッティングと呼ばれる投資手法に関する説明です。ピラミッティングは「ある銘柄を購入する際に分割して投資し、思惑通りの値動きになれば段階的にさらにポジションを積み増していく投資方法」のことです。
こうすることで、トレンドが長く続けばそれだけ利益も増えていきます。また、逆に相場が期待外れの結果になったとしても、初期のポジション数が小さいので軽微な損失で済みます。
このピラミッティングという投資手法と市場トレンドの流れに沿って投資を行うトレードスタイルによって、リバモアは伝説的な投資家に上り詰めました。
この本のおすすめポイント
孤高の相場師リバモア流投機術は、リバモア本人が自身のトレード手法をまとめた本であるため、至る所に箴言や金言があふれています。
例えば、ピラミッティングと呼ばれる投資手法をはじめとして、株価が節目に絡んだ時のトレード手法や、利益の半分を出金することで破産のリスクを減らす方法など、リバモアの思想や投資哲学が至る所に垣間見れます。
また、文章中に数学的・学術的な用語が出てくることもないので、誰でも気軽に読むことができます。投資の初心者の方は軽く読んでみてもよいと思います。
おすすめしにくいポイント
おすすめしにくいポイントは、トレードの再現性が乏しいことです。例えば、この本は株価チャートによる解説がほとんどありません。文章による説明だけでは具体例に乏しく、イメージが湧きません。
加えて、最後のリバモア独自のチャートのつけ方に関しては、説明が不足していて理解するのが困難です。現在のように株価のチャートや各種の情報がすぐ手に入る時代ではなく、著者自身も早くになくなっているため仕方のないことですが、翻訳者や出版社による加筆があればよかったと思います。
なお、リバモア自身が書いた本ではありませんが、リバモアをモデルとして書かれた「欲望と幻想の市場」という本がおすすめです。物語として面白いだけだなく、リバモアという人物にも触れられます。ぜひご一読ください。
【投資家必読】伝説的の投資家をリアルに描いた小説「欲望と幻想の市場 伝説の投機王リバモア」この本の著者ジェシー・リバモアについて
この本の著者であるリバモアは、1987年に貧しい農家の子として生まれます。貧困から逃れようと、わずか14歳で証券会社の相場ボードの黒板書きという職に就き、数学的なセンスから15歳の時に相場の世界に足を踏み入れます。
百合での投機に成功したリバモアは、若くして大金を手にし、意気揚々とニューヨークに進出します。しかし、百合と取引ルールが異なる市場取引に戸惑い、破産の憂き目にあいます。
以後リバモアは、リバモアは4度の成功と4度の破産、そして4度の結婚を重ねます。成功と挫折を繰り返して心身をすり減らしたためか、晩年は鬱状態であったといわれており、1940年にホテルの一室で拳銃自殺を図りこの世を去りました。