高島屋(8233):適正株価を考える(2024年6月28日時点)

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高島屋(8233):適正株価を考える(2024年6月28日時点)

この記事のポイント
  • 高島屋(8233)はそごう・西武、三越伊勢丹ホールディングスに次ぐ業界3位の大手百貨店グループです。1831年(天保2年)創業の老舗で、皇室御用達・ギフトの百貨店として国内13店舗(旗艦店は日本橋・横浜・大阪・京都・新宿)・海外4店舗、ショッピングセンターを運営しています。
  • 高島屋は売上の89.8%(2024年2月期実績)を国内事業が占めていますが、少子高齢化、GMS(総合スーパー)、専門店などの競合が出現したことで、収益性が著しく悪化しています。立川高島屋ショッピングセンター(2023年1月に閉店)や岐阜高島屋(2024年7月)など、老朽化した店舗を相次いで閉鎖しており、売上高は2008年から2024年にかけて半分以下に落ち込んでいます。不採算店舗を整理することで利益は持ち直しつつありますが、国内事業の立て直し、長期的な成長戦略の策定・実行など、課題は数多く多く残されています。目下、ショッピングセンターなどの商業施設開発、クレジットカード・保険・資産運用相談等の金融事業に注力するようですが、各分野に特化した企業が既に存在しているので、競合他社との差別化が図れるとは思えません。
  • 高島屋のPERは11.2倍、PBRは0.91倍となっています。過去のデータを基にすると、PERは10~14倍、PBRは0.8倍~1倍くらいが妥当だと考えています。これらの株価指標に沿って理論株価を計算すると、PERベースで2,409円~3,372.6円、PBRベースで2,367.4円~2,959.3円と計算できます。現在の株価が2,707.5円なので、理論株価とほぼ同水準で推移していることが分かります。高島屋の株価は好決算を受けてPTSで2,800円前後で取引されていますが、思うほど上値は伸びないかもしれません…。
  • 高島屋の30年四半期チャートを見ると、3,000~3,500円、4,000円超でヒゲを伴ったローソク足が形成されていることが分かります。したがって、一時的に3,000円を超えることはあるかもしれませんが、3,500円、4,000円を超えていくには相当のエネルギーが必要です。今は円安とインバウンド需要の増加によって高値を維持していますが、世界経済が悪化して円高に振れ、訪日旅行者数が急減すれば、業績悪化は避けられません。高島屋の業績ばかりにとらわれず、為替相場や訪日旅行者数の推移に注意が必要です。

高島屋(8233)の企業概要

「高島屋(8233)の企業概要」高島屋のHPより

「高島屋(8233)の企業概要」高島屋のHPより(画像はすべてクリックすると拡大します)

高島屋(8233)はそごう・西武、三越伊勢丹ホールディングスに次ぐ業界3位の大手百貨店グループです。1831年(天保2年)創業の老舗で、皇室御用達・ギフトの百貨店として国内13店舗(旗艦店は日本橋・横浜・大阪・京都・新宿)・海外4店舗、ショッピングセンターを運営しています。国内事業は都市開発「街づくり」としてショッピングセンターとの併設店舗・フードホール設営(新宿店、日本橋店、玉川店、柏店)、百貨店単独店舗、子会社東神開発のショッピングセンターから構成されており、海外事業としては百貨店・ショッピングセンター併設店舗をシンガポール・上海・ベトナム・タイに出店しています。その他の事業としては、東神開発(子会社)の商業開発事業(ディベロッパー、ショッピングセンター建設・運営、海外拠点開発・事業開発)に取り組んでいる他、高島屋ファイナンシャル・パートナーズ(クレジットカード等の金融業)を営んでいます。

高島屋(8233)の業績は?

「高島屋の通期業績推移(2024年6月28日上方修正後のもの)」マネックス証券より

「高島屋の通期業績推移(2024年6月28日上方修正後のもの)」マネックス証券より(画像はすべてクリックすると拡大します)

高島屋の通期業績は上の画像のようになっています。高島屋は売上の89.8%(2024年2月期実績)を国内事業が占めていますが、少子高齢化、GMS(総合スーパー)、専門店などの競合が出現したことで、収益性が著しく悪化しています。立川高島屋ショッピングセンター(2023年1月に閉店)や岐阜高島屋(2024年7月)など、老朽化した店舗を相次いで閉鎖しており、売上高は2008年から2024年にかけて半分以下に落ち込んでいます。不採算店舗を整理することで利益は持ち直しつつありますが、国内事業の立て直し、長期的な成長戦略の策定・実行など、課題は数多く多く残されています。目下、ショッピングセンターなどの商業施設開発、クレジットカード・保険・資産運用相談等の金融事業に注力するようですが、各分野に特化した企業が既に存在しているので、競合他社との差別化が図れるとは思えません(商業施設開発ならイオン、三井不動産。クレジット等の金融事業ならイオンフィナンシャルサービス等)。

「高島屋の四半期業績の推移(2024年6月28日時点)」マネックス証券より

「高島屋の四半期業績の推移(2024年6月28日時点)」マネックス証券より(画像はすべてクリックすると拡大します)

長期的な成長戦略に問題を抱えている高島屋ですが、直近の四半期業績をみるとコロナで苦しんだ2021年2月期以降は堅調に推移していることが分かります。一見すると、事業のリストラが上手くいっているかのように思えますが、実態は全く異なっています。

「訪日外客数月別推移(2017年〜2024年)」観光庁HPより

「訪日外客数月別推移(2017年〜2024年)」観光庁HPより(画像はすべてクリックすると拡大します)

訪日外国人旅行者数の推移をみると、円高から円安基調に変わった2023年から2024年にかけて、訪日旅行者数が大きく増加していることが分かります。特に、直近の2024年3月以降は1ドル=150円超と大きく円安に傾いているため、月間旅行者数が300万人を超える月も出てきています。このように、高島屋のここ数四半期の好業績が円安とインバウンド需要(日本に訪れた外国人が日本国内で生み出した商品・サービスへの需要)によってもたらされていることが伺えます。

「高島屋の2025年2月期第1四半期決算概要(一部抜粋)」同社決算短信より

「高島屋の2025年2月期第1四半期決算概要(一部抜粋)」同社決算短信より(画像はすべてクリックすると拡大します)

なお、2024年6月28日に発表された高島屋の2025年2月期第1四半期決算は、売上高120,125百万円(前期比:+13.8%)、経常利益17,835百万円(前期比:+53.5%)、当期純利益12,821(前期比:+50.1%)と好調を維持し続けています。第1四半期が計画を上振れたことで早くも通期業績予想を上方修正しており、売上高は修正前の497,000百万円から511,400百万円に、経常利益は53,000百万円から58,000百万円に、純利益は34,000百万円から38,000百万円にそれぞれ上方修正しています。長い目で見れば業績回復は厳しそうですが、円安と訪日外国人旅行者数の増加が続く限り、短期的に業績は改善していきそうです。

高島屋(8233)の適正株価は?

「高島屋の予想PER・PBRの推移」マネックス証券より

「高島屋の予想PER・PBRの推移」マネックス証券より(画像はすべてクリックすると拡大します)

6月28日の株価は前日比+20円の2,707.5円で取引を終えました。この終値と2025年2月期の業績予想値を基に株価指標を計算すると、現時点のPERは11.2倍、PBRは0.91倍となっています。マネックス証券のデータによれば直近5年間の平均PERは22.6倍、平均PBRは0.56倍となっていますが、新型コロナウイルスのパンデミックの影響を受けており、正確な数値ではありません。パンデミック等の特殊事情を考慮して株価指標を算出すると、大雑把に見て平均PER10~14倍、平均PBR0.8倍~1倍程度が妥当だと考えています。

これらの平均的な株価指標に沿って高島屋の理論株価を計算すると、PERベースで2,409円~3,372.6円、PBRベースで2,367.4円~2,959.3円と計算できます。6月28日の終値が2,707.5円なので、理論株価の上限に近い水準で推移していることが分かります。高島屋の株価は好決算&上方修正を受けてPTSで2,800円前後で取引されていますが、思うほど上値は伸びないかもしれません…。

高島屋(8233)の株価はどう動く?

「高島屋の5年週足チャート(2024年6月28日時点)」マネックス証券より

「高島屋の5年週足チャート(2024年6月28日時点)」マネックス証券より(画像はすべてクリックすると拡大します)

高島屋の5年週足チャートを見ると、インバウンド需要の高まりを受けて株価も最高値を更新し続けていることが分かります。このまま円安が継続し、訪日外国人旅行者数も伸び続けていけば、同社の株価も上値を更新していきそうです。ただし、先にみたように現在の株価は理論株価の上限にかなり迫っています。長期的な成長戦略が欠けていることもあり、株価が2倍、3倍になる可能性はほぼありません。

「高島屋の30年四半期チャート(2024年6月28日時点)」マネックス証券より

「高島屋の30年四半期チャート(2024年6月28日時点)」マネックス証券より(画像はすべてクリックすると拡大します)

また、高島屋の30年四半期チャートを見ると、3,000~3,500円、4,000円超でヒゲを伴ったローソク足が形成されていることが分かります。今後、一時的に3,000円を超えることはあるかもしれませんが、3,500円、4,000円を超えていくには相当のエネルギーが必要です。今は円安とインバウンド需要の増加によって高値を維持していますが、将来的に世界経済が悪化して円高に振れ、訪日旅行者数が急減すれば、業績悪化は避けられません。高島屋の企業業績ばかりにとらわれず、為替相場や訪日旅行者数の推移に注意が必要です。

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