【2023年4月】中国の不動産市況は縮小へ向かう…

【2023年4月】中国の不動産市況は縮小へ向かう…

【2023年4月】中国の不動産市況は縮小へ向かう…

この記事のポイント
  • 2023年4月の中国主要70都市の新築住宅販売価格指数は大部分の地域でかろうじて100%超を維持している状態です。新築価格が前月割れとなっている地域は7都市に過ぎませんが、前年割れの地域は58都市に拡大しています。また、中古住宅価格が前月割れの地域は34都市、前年割れの地域は61都市となっており、不動産価格が横ばい・若干の下落傾向が続いています。
  • 中国政府は不動産需要を喚起しようと様々な支援策を打ち出していますが、その規模はあまり大きくありません。最近の動向を見る限り、中国政府は不動産市況を改善させようとしているのではなく、むしろ緩やかに縮小させようとしているのではないかと考えています。
  • 2023年1月から4月までの不動産開発投資は前年比△6.2%の3兆5,514億元(1元=19円で約67兆4,766億円)とマイナス圏で安定推移しています。また、竣工した建物の床面積が前年比+18.8%の2億3,678万平方メートルとなっているのに対し、新規着工した建物の床面積は前年比△21.2%の3億1,220万平方メートルとなっています。このままのペースで新規着工数が減少していけばあと2~3年で着工床面積が竣工件数床面積を下回ることになり、中国不動産市場の縮小均衡を達成することができます。
  • 中国政府は全国的な不動産登記システムを完成させており、固定資産税能の徴収に踏み切る可能性が高くなっています。もし、税収を固定資産税で賄うことになれば、これまでのように不動産使用権の売却によって税収を確保する必要がなくなります。不動産開発会社にとっては開発案件が減り、競争が激化することになるので、中国の不動産業界の未来は真っ暗だと言えるでしょう。

中国の不動産価格は横ばいの動き

「2023年4月の中国主要70都市の新築住宅販売価格指数」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

「2023年4月の中国主要70都市の新築住宅販売価格指数」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

中国の不動産市況は横ばいの動きとなっています。2023年4月の中国主要70都市の新築住宅販売価格指数はほとんどの地域でかろうじて100%超を維持している状態で、新築価格が前月割れとなっている地域は7都市に過ぎませんが、前年割れの地域は58都市に拡大しています。これは不動産市況が今後改善に向かうということではなく、むしろ、緩やかに縮小しようとしていることを意味しています。

「2023年4月の中国主要70都市の中古住宅販売価格指数」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

「2023年4月の中国主要70都市の中古住宅販売価格指数」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

こうした動きは中古不動産市場で特に顕著に表れており、中古住宅価格が前月割れの地域が34都市、前年割れの地域が61都市と、数字が今一つであることからも明らかです。中国政府は不動産需要を掘り起こそうと政策金利を据え置いたり、補助金を支給するなどの対策をとっていますが、不動産価格を維持・若干下落させる程度のものにとどめています。習近平政権の狙いとしては様々な政策をうまくコントロールしていくことで被害を最小限に抑え、不動産市場を相応の規模に縮小させることにあるようです。

不動産開発投資額も引き横ばいの動きを続ける

「中国の不動産開発投資の成長率の推移(2023年1~4月)」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

「中国の不動産開発投資の成長率の推移(2023年1~4月)」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

2023年以降回復に向かうと思われた不動産開発投資額も、横ばいの動きを続けています。2023年1月から4月までの不動産開発投資は前年比△6.2%の3兆5,514億元(1元=19円で約67兆4,766億円)とマイナス圏で安定推移してることから、投資額が前年比を超えることは今後数年間はなさそうです。

「2023年1~4月までの不動産開発投資の内訳」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

「2023年1~4月までの不動産開発投資の内訳」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

不動産業界が縮小に向かうことは床面積を見ても明らかです。竣工した建物の床面積が前年比+18.8%の2億3,678万平方メートルとなっているのに対し、新規着工した建物の床面積は前年比△21.2%の3億1,220万平方メートルとなっています。このままのペースで新規着工数が減少していけばあと2~3年で着工床面積が竣工件数床面積を下回ることになり、中国不動産市場の縮小均衡を達成することができます。

2023年初頭の段階では中国政府が不動産市況を活況に導くものと考えていましたが、まったくの誤りでした。習近平政権は間違いなく市場を縮小させる方針のようです。

中国政府の構造改革が進む

中国の国営新華社通信は25日、全国を網羅する不動産登記の統一システムの構築が完了したと報じた。不動産所有権の透明性が高まる。中国は2014年に不動産所有者に対し当局への登録を義務付ける規則を発表したが、情報公開に消極的な地方政府の強い抵抗に遭った。中央政府が住宅市場を規制し、地方政府当局者に不正取得した不動産を開示させる上で、全国的な不動産データベースは不可欠とみられていた。新華社によると、王広華自然資源相は会議で、10年間の努力の末にこのシステムを完成させたと述べた。全国的な不動産登記システムは将来的に固定資産税の導入につながる可能性がある。 ロイター  2023年4月25日

これまで中国政府の財源の多くは土地使用権の売却収入によって賄われてきましたが、2023年4月25日に不動産登記システムが完成したことで、今後は固定資産税能の徴収に踏み切るのではないかと考えています。仮にこれが実現すれば、中央・地方政府は不動産を開発業者に売却して財源を確保する必要がなくなります。不動産開発会社は物件の確保が難しくなり、競争が激化することで倒産してしまう企業も出てくるでしょう。中国の不動産開発企業やそれに関係している日本企業には投資しない方がよさそうです。

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