恒大集団の現状がヤバい…

恒大集団の現状がヤバい…

恒大集団の現状がヤバい…

この記事のポイント
  • 2022年6月24日に一部の債権者が恒大集団に対して清算の申し立てを提起しましたが、債権者との債務再編計画が進んでいることを理由に審理が保留となっていました。2023年3月22日になってようやく恒大集団が債務再編計画を提示したので、今回はその内容について記事にしました。
  • 恒大集団の債務再編計画について基本的には債権者には二つの選択肢が与えられ、保有債券をより低利回りの新たな10~12年債と交換するか、恒大集団とその上場子会社の株式に転換可能な証券および新たな5~9年債と交換するかを選択することになります。
  • しかし、恒大集団は2021年12月期に債務超過に陥っており、監査すら満足にできていません。上場子会社の財務状態も怪しいので、債権の完全回収は難しそうです。仮に恒大集団がこのまま倒産した場合、海外投資家は債権額の3.53%しか回収できません。多くの海外債権者はすでに損失処理を済ませていると思われますが、金融危機の火種になる可能性もあるので十分に注意しましょう。

恒大集団に対する会社清算の申し立ては依然として審理延期中

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(pdf下部の矢印をクリックするとページ移動ができます)

2022年6月24日に一部の債権者が恒大集団に対して清算請願(=恒大集団を倒産させるための訴訟)を提起し、一度は香港特別行政区高等法院に受理されました。しかし、恒大集団が債権者との和解の可能性があることを理由に審理の停止を申し立て、これを裁判所も認めことから、以降の審理はずっと延期されています。2023年3月22日になってようやく恒大集団が債務再編計画を提示したので、今回はその内容について触れていきたいと思います。

恒大集団の債務再編計画の内容とその現状について

恒大集団の債務再編計画

(pdf下部の矢印をクリックするとページ移動ができます)

恒大集団の債務再編計画については上記(19ページ以降の“Binding Restructuring Term Sheet”)のような形になっています。基本的に債権者には二つの選択肢が与えられ、保有債券をより低利回りの新たな10~12年債と交換するか、恒大集団とその上場子会社(不動産管理業を提供している恒大物業、EV事業を中心とする中国恒大新能源汽車集団)の株式に転換可能な証券および新たな5~9年債と交換するかを選択することになります。

「恒大集団の2021年12月期貸借対照表(未監査)」同社IR資料より

「恒大集団の2021年12月期貸借対照表(未監査)」再編計画資料の10pより

ただし、いずれを選んでも元利金が無事に返済される保証はありません。恒大集団は2021年の決算で債務超過に陥っていることを明らかにしています。2022年は2021年よりも不動産市況が悪化していたので、財政状況は開示されている数字よりもかなり逼迫しているはずです。また、本来であれば監査済みの2022年の決算書類が報告されていなければいけませんが、事業の継続性に問題を抱えているために監査手続きが滞っています。第三者による裏付けがない以上、この決算を信じて債券の借り換えに応じる投資家など存在しないでしょう。

「恒大物業と中国恒大新能源汽車集団の事業概況」同社IR資料より

「恒大物業と中国恒大新能源汽車集団の事業概況」再編計画資料の7-8pより

さらに、恒大集団の上場子会社2社(恒大物業・中国恒大新能源汽車集団)に関してですが、どちらも事業運営に問題を抱えています。恒大物業は業績が安定しているものの、同社の預金を親会社である恒大集団が自社の借り入れの担保として不正流用していたことが発覚し、親会社からの独立性や同社の財務健全性について疑問の声が出ています。他方、中国恒大新能源汽車集団は納車台数が未だ900台にとどまっており、資金調達ができなければ近いうちに事業閉鎖の憂き目にあうとされています。

したがって、債務再編計画を了承して債券の借り換えを認めたとしても恒大集団の倒産リスクは高く、子会社株への転換を選んでもやはり元利金が戻ってくる確率は低いでしょう。現債権者にとってはどちらを選んでも苦難が続くと予想されます。

「係争中の訴訟案件について」同社IR資料より

「係争中の訴訟案件について」再編計画資料の18pより

最後に、恒大集団はこの債務再編計画が発表された2023年3月22日時点で、係争中となっている1億元以上の訴訟件数が789件を超えており、その総額は3,313億元(1元=19円で約6兆2,947億円)に及びます。この他に、係争中の仲裁案件数は43件を超えており、総額322億元(約6,118億円)に達しています。既存の不動産開発プロジェクトを再開するために今後3年間で2,500~3,000億元(4兆7,500億円~5兆7,000億円)が必要になるという事実も踏まえると、恒大集団は倒産するしかなさそうです。

「恒大集団破綻時の債券回収率の推定値」同社IR資料より

「恒大集団破綻時の債券回収率の推定値」再編計画資料の9pより

仮に恒大集団が破産する場合、海外の無担保債権者は債権額の3.53%しか資金を回収することができません。多くの債権者はすでに損失処理していると思われますが、金融危機の引き金になる危険性もあるので注意が必要です。

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