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【会計不正のオンパレード】colaboの再調査結果がおもしろい(3)
- colaboに対する再調査の報告書を読みましたが、またしても衝撃的な内容でした。今回は紙幅の都合上、特に(5)医療費~(6)備品購入費の部分を中心に見ていきたいと思います。
- 前回も指摘しましたが、そもそも1回目と2回目の調査でなぜ結果が変わるのかが分かりませんでした。どちらもcolaboの帳簿を調査しているので差異など生じないはずなのですが、しっかりと結果が異なっています。
- (5)医療費については中身が不透明です。そもそも委託事業の内容が「アウトリーチから居場所の確保、公的機関や施設への「つなぎ」を含めたアプローチを実施する」となっているので、医療費が発生することはあり得ません。また、医師が必要と判断した場合は行政検査に該当するため、基本的にPCR検査代はかかりません。なぜこのような医療費がかかったのか、目的・回数・対象者等の確認が必要でしょう。
- (6)備品購入費については、減価償却の手続きを行っていないので、明らかにNPO会計基準に違反しています。会計ルールに基づいていない費用の計上がなぜ許されているのか、明らかにすべきでしょう。
colabo再調査の結果は?
東京都若年被害女性等支援事業について当該事業の受託者の会計報告に不正があるとして、当該報告について監査を求める住民監査請求に係る勧告に基づき知事が講じた措置について【左部の矢印をクリックするとページ移動ができます。】
東京都福祉保健局がcolaboを再調査した結果、2023年3月3日に上のような報告書が公開されました。前回は(2)事務所・居場所運営費~(4)通信運搬費までをみてきたので、今回はその続きの部分に触れていきたいと思います。
中身の不透明な(5)医療費
医療費は医療機関での診療費や薬代、PCR検査の費用を計上している。支出の確認に当たっては、管理台帳と領収書を突合した。その結果、医療費982,630円、薬代5,076円、PCR検査代352,270円の合計1,339,976円が支出されていることを確認した。
医療費については、①医療費が高額である点、②PCR検査代など目的・回数・対象者が分からない点が問題だと考えています。
①医療費が高額である
「東京都若年被害女性等支援事業実施要綱」【左部の矢印をクリックするとページ移動ができます。】
東京都若年被害女性等支援事業実施要項を読むと、そもそも東京都の委託内容が(1)アウトリーチ支援、(2)関係機関連携会議の設置、(3)居場所の提供に関する支援、(4)自立支援の4つであることがわかります。したがって、基本的に医療費が発生することはありません。
また、医療機関と連携する場合であっても基本的には同行支援が原則であり、居場所の提供に関する支援をする場合も「支援が長期化する場合、食事の提供及び居住に要する費用その他日常生活で通常 必要となるものであって利用者に負担させることが適当と認められる費用につい ては、利用者に負担させることができるものとする」とされています。支援が長期化する場合は相談者の生活保護の申請も手伝っているようなので、なおのこと高額な医療費が発生するとは思えません(生活保護受給者は医療費がかかりません)。
なお、10~20代の若年層は健康で病気にかかってもすぐに回復するため、医療費自己負担額は年間1.6万円程度となっています。colaboが支払ったとされる医療費982,630円から考えると、およそ60人前後の年間医療費を計上していることになります。
加えて、colaboは2021年活動報告書の中で病院への動向支援回数が36回であったと明らかにしています。もしこれが正しいなら、colaboは一回当たり平均2万7,295円の医療を負担していたことになります。何らかの理由で健康保険が使えない、妊娠中絶あるいは重病者の医療費を負担したという可能性はありますが、委託事業の内容が「アウトリーチから居場所の確保、公的機関や施設への「つなぎ」を含めたアプローチを実施する」ことにある以上、医療費が高額すぎると思われます。
②PCR検査代など目的・回数・対象者が分からない
PCR検査代など目的・回数・対象者が分からない費用を計上している点も問題です。基本的に「診療・検査医療機関等の医師が、診断のために必要と判断して行う検査(行政検査)については、検査に係る費用(検査料及び検査判断料)は、医療保険及び公費により賄われ、患者の自己負担はありません」。
また、colaboが受託している東京都若年被害女性等支援事業はあくまで東京都での活動が主なもので、海外に渡航するわけではありません。相談者から陰性証明書を求められるわけでもないので、PCR検査代が必要になるとも思えません。
そして、PCR検査代の計上額が352,270円となっているのも不可解です。民間企業の検査代は平均1~2万円のコストがかかります。仮に1回の検査代が1万円だったとするなら、合計で34回の検査を行ったことになりますが、なぜこれだけの回数しか検査していないのか説明がつきません。
例えばcolaboのアウトリーチ事業の①夜間見回り等については原則として週に1回以上行うこととされています。もしこれに事前のPCR検査が求められるのなら、最低でも52回以上の検査が必要となります。さらに、これが年34回実施したバスカフェ事業に関するものなら、運営に携わった人数分の検査が必要になるので、やはり検査回数・検査代はもっと多くなければなりません。*そもそも論として、東京都若年被害女性等支援事業実施要綱を読む限り、バスカフェ事業は委託内容に含まれていないようです。よって、同事業に係る検査費用を経費として申請することはできないはずです…。
colaboが計上しているPCR検査代については、そもそもなぜ必要となるのか?、必要だとするのならなぜこれだけの金額なのか?など、目的・回数・対象者を明らかにすべきでしょう。
不適切会計を行っている(6)備品購入費
備品購入費はパソコンの購入費用を計上している。支出の確認に当たっては、管理台帳と領収書を突合した。その結果、パソコンの購入費用として336,280円が支出されていることを確認した。一方で、実施状況報告書では、エアコン購入と記載があったが、実際はパソコンを購入していたことから、団体に対し、改めて実績報告書の記載内容に誤記が無いように指導した。
備品購入費については減価償却の手続きを行っておらず、明らかに不適切会計だと思われます。*購入品をエアコンと間違っていたという箇所については、どっちも語尾が「コン」となっていて間違える可能性があるのでスルーします笑。
NPO法人会計基準では減価償却について「貸借対照表に計上した固定資産のうち、時の経過により価値が減少するものは、減価償却の方法に基づき取得価額を減価償却費として各事業年度に配分しなければならない。」と定めています。端的に言えば、「車両やパソコンのように耐用年数(使用期間)が長いものは費用を一括計上せず、その期間にわたって一定の割合で按分して費用計上しなければならない」ということです。
この点に関し、colaboは減価償却費の計算をせずにパソコンを一括費用計上しています。あきらかにNPO会計基準に違反しています。
なお、中小企業者等の事業者に対しては、「取得価額が30万円未満である減価償却資産について、一定の要件を満たせば一括して損金の額に算入(費用計上)することができる」という規定があります。しかし、colaboは名目をエアコンと間違えているので、おそらく1台しか購入していません。取得価額が30万円を超える資産に該当するので、上記の規定はあてはまらず、やはり会計基準に反する会計処理を行っているようです。
~続く