【2023年1月】中国の住宅価格は持ち直す兆しをみせる

【2023年1月】中国の住宅価格は持ち直す兆しをみせる-アイキャッチ

【2023年1月】中国の住宅価格は持ち直す兆しをみせる

この記事のポイント
  • 2023年1月の中国主要70都市の新築住宅販売価格指数は対前月比で上昇に転じつつあり、70都市中37都市で前月比超え(前月比+22都市)、中古住宅価格指数についても前月比でプラスとなった地域は13都市(前月比+6都市)にのぼる。0コロナ政策が解除されて急激な感染拡大が起きた中での数字なので、かなりの朗報といえるでしょう。
  • ただし、中国の不動産セクターの「過剰な供給能力、過剰な住宅在庫」という問題は残されたままとなっています。新規に着工した住宅の床面積は8.8億平方メートル(前年比△39.4%)あり、実需を超える供給能力を持っている。また、建設途中の住宅の床面積は約10年分の供給量に相当する63.9億平方メートルもあり、過剰な住宅在庫を有している。

中国の住宅価格が持ち直す兆し

「2023年1月の中国主要70都市の新築住宅と中古住宅の販売価格指数」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

「2023年1月の中国主要70都市の新築住宅と中古住宅の販売価格指数」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

前回の記事では中国不動産開発会社に対する規制緩和が行われ、2023年に不動産市況が回復する可能性があることをお伝えしましたが、早くもそれが数字に表れているようです。2023年1月の中国主要70都市の新築住宅販売価格指数は対前月比で上昇に転じつつあり、70都市中37都市で前月比超えとなっています。2022年12月に前月比を超えた地域数はわずか15都市に過ぎなかったので、これはかなり明るい兆しです。

また、中古住宅価格指数についても前月比でプラスとなった地域は13都市にのぼり、2022年12月の数字と比較して6都市増える結果となっています。新築・中古住宅価格が上昇したのはいずれも北京、上海、南京などの大都市に限られていますが、0コロナ政策が突然解除されて混乱が続いた状況下での数字なので、間違いなく朗報と言えるでしょう。

もっとも、新築住宅価格が前年割れの地域は55都市(2022年12月は53都市)、中古住宅価格が前年割れの地域は64都市(2022年12月も64都市)あり、成長軌道に乗ったわけではありません。現状では不動産価格が持ち直す「兆し」をみせているにすぎず、予断を許さない状況が続いています。

不動産セクターの構造的な問題は放置されたまま…

習近平国家主席の政策により、中国の不動産業界では大量のコンドミニアムが空室のまま放置され、家計の債務が爆発し、システミックリスクに拍車がかかった。しかし習氏の望み通り、投機目的ではなく実際に住むための住宅建築に絞るようなら、かつて国内総生産(GDP)18兆ドルの4分の1に寄与した不動産セクターの需要は衰えるだろう。(中略)世帯形成スピードの減速と都市化を考えれば、2035年まで年間5億─7億5000万平方メートル相当の住宅を建設すれば実需は満たせると、ローディアム・グループのアナリストチームは推計している。ピーク時の2021年3月に建設された年率換算17億平方メートルに比べ、大幅に減る計算だ。しかもこの推計は、大量の空室物件が突然売り出されないことを前提にしている。業界が本当に投機向けの建設をやめるなら、GDPにおける不動産の寄与は現在の25%から、日本の12%に近い水準まで下がる可能性がある。 2023年1月17日 ロイター  「コラム:緩和された中国不動産規制、投機許容の有無が今後の鍵」より

先ほども述べたように中国の不動産価格は回復の兆しを見せていますが、不動産セクターが抱える「過剰な供給能力・過剰な住宅在庫」の問題は解決されずに燻り続けています。

「2022年(1~12月累計)の不動産開発投資の内訳」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

「2022年(1~12月累計)の不動産開発投資の内訳」中国国家統計局資料より(画像はすべてクリックすると拡大します)

上の不動産開発投資の内訳をみると、2022年に竣工した住宅の床面積は6.2億平方メートル(前年比△14.3%)と正常な範囲内にあるものの、新規に着工した住宅の床面積は8.8億平方メートル(前年比△39.4%)にのぼり、依然として過剰な住宅供給能力を持っていることが分かります。(これらのデータは不動産開発業者に対する融資規制を強化して事業を停止・中止させ、倒産の瀬戸際に追いやった末の数字であることから、潜在的な住宅供給能力はこれをはるかに上回ると考えられます。)

また、統計データをみると、建設途中の住宅の床面積は約10年分の供給量に相当する63.9億平方メートルもあり、過剰な住宅在庫を有していることが分かります。この数値を世帯数に置き換えると、全世帯の12.4%にあたる5,753万世帯の住宅を建設している計算になります(中国の2020年の世帯数は4億6500万世帯で、1世帯当たりの居住面積は平均111.18平方メートル。「2022年6月27日人民網日本語版『中国の2020年における都市部の各世帯一人当たり居住面積は36.52平方メートル』」より)。

中国政府は不動産セクターの歪な産業構造を正そうと厳しい規制を敷いてきましたが、不動産市況の悪化に伴う経済的な打撃があまりにも大きく、結局のところ業界を再編することはできませんでした。「過剰な供給能力・過剰な住宅在庫」の問題は残され、今後もいつ爆発するか分からない不発弾のように中国経済を脅かしつつけるでしょう。

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