「山口フィナンシャルグループ第9回期限前償還条項付無担保社債」はリスク・リターンが見合っていない!|買ってはいけない金融商品②

「山口フィナンシャルグループ第9回期限前償還条項付無担保社債」はリスク・リターンが見合っていない!-アイキャッチ

「山口フィナンシャルグループ第9回期限前償還条項付無担保社債」はリスク・リターンが見合っていない!|買ってはいけない金融商品②

この記事のポイント
  • 山口フィナンシャルグループ第9回期限前償還条項付無担保社債は、リスクとリターンが見合っていません。今後10年のうちに同社が破綻するとは思えませんが、拘束される資金額とその期間を考えれば、好き好んで負うリスクではありません。投資は見送るべきでしょう。

山口フィナンシャルグループ第 9 回期限前償還条項付無担保社債の概要

「山口フィナンシャルグループ第-9-回期限前償還条項付無担保社債の概要」野村證券資料より

「山口フィナンシャルグループ第9回期限前償還条項付無担保社債の概要」野村證券資料より

つい最近、野村證券の営業担当から「山口フィナンシャルグループ第9回期限前償還条項付無担保社債に投資しないか?」という勧誘の電話がありました。案内をみる限りかなりひどい内容だったので、今回はこの社債についてみていきたいと思います。

山口フィナンシャルグループ第9回期限前償還条項付無担保社債の条件は下記のようになっています。

【条件決定日は2022年10月14日となっており、現時点では仮条件の段階です。】

  1.  発行日・償還日:『発行日2022年10月31日、償還日、2032年10月31日(期間10年)』
  2.   利払日:『毎年4月30日及び10月31日(初回利払日:2023年4月30日)』
  3. 利率:『当初5年間:0.75%~1.25%、以降5年間:基準金利*+0.30%~1.00%』*基準金利は5年物円スワップミッド・レート
  4. 発行価格・申込単位:『面100円につき100円、100万円以上100万円単位』
  5. その他(条項・特約):『期限前償還条項、実質破綻時免除特約、劣後特約、グリーンボンド』

内容をみれば、一目で投資に値しないろくでもない金融商品であることが分かります。以下で一つずつ問題点を確認していきたいと思います。

問題点①:利率が低い

「東京円金利スワップレート5年のチャート(QUICK算出)」

「東京円金利スワップレート5年のチャート(QUICK算出)」

最大の欠点は利率が低いということです。

「当初5年間の0.75%~1.25%」という固定利率は数千億円規模の資産運用を行う機関投資家にとっては投資パフォーマンスを安定させる上で有用かもしれませんが、100万円単位で申し込みを行う個人投資家にとっては最大でも年間リターン1万2,500円しか見込めません。拘束される資金額やその期間を考えれば、投資する価値があるとは思えません。

また、「以降5年間の基準金利(5年物円スワップミッド・レート)+0.30%~1.00%」という利率についてですが、過去5年間の基準金利は△0.16%~+0.14%で推移しています。したがって、基準金利+0.30%~1.00%という金利は最大でも0.44%~1.14%に過ぎず、当初5年間の利率を下回ると予想されます。高くもない利率がさらに低くなるのなら、わざわざ買う必要はないでしょう。

問題点②:社債のリスクが実質的に株式と変わらない

「山口フィナンシャルグループ第9回期限前償還条項付無担保社債についての説明」三菱モルガンスタンレー証券の案内より

「山口フィナンシャルグループ第9回期限前償還条項付無担保社債についての説明」三菱モルガンスタンレー証券の案内より

次に、社債のリスクが実質的に株式と変わらない点も問題です。

この社債には「実質破綻時免除特約、劣後特約」という特約がついています。実質破綻時免除特約とは「債券の発行体が実質的に破綻状態になった場合に、その元利金や利息の支払い義務が全て免除される」というもので、劣後特約とは「劣後特約で定められた劣後事由(破産手続きや公社更生法の適用を受ける等)が発生した場合に普通社債に比べ元本利息の支払いの順位(弁済順位)が低くなる」という特約です。

一般的に会社が倒産した場合、会社が保有していた財産は(国税・地方税などの税金滞納があれば)国や(給与などの未払金があれば)従業員などの優先的破産債権者に分配され、残る財産があれば銀行や社債投資家などの一般の破産債権者に、さらに財産が残れば劣後的破産債権者に、そして最終的に残った財産は株主に分配されます。

実質破綻時免除特約や劣後特約といった特約がついていると、発行体が破産した際に弁済(元利金の補償)が受けられなかったり、弁済順位が下がってしまうため、リスクが高くなってしまいます。今回のケースで言えば、この社債は実質的に株式と同じようなリスクを負っているということになります。

なお、山口フィナンシャルグループの株式に投資した場合、配当利回りは4%を超えています。社債投資のリスク・リターン(リターンは最大1%強、その代わり10年間破綻しなければ元本保証)を考えればもう少し高いリターンを期待したいところです。

問題点➂:今後も苦しい経営環境が続く

「人口減少による資金需要の減少」金融仲介の改善に向けた検討会議資料より

「人口減少による資金需要の減少」金融仲介の改善に向けた検討会議資料より

最後に、今後も苦しい経営環境が続くという課題も指摘しておきます。

現在、全国的に少子高齢化によって人口減少が進んでおり、地域経済が縮小したことで企業の資金需要も減少しています。それに加えて、金融緩和による低金利の長期化や貸出競争の激化など、解決の難しい問題が山積しています。

「山口フィナンシャルグループの業績推移」マネックス証券より

「山口フィナンシャルグループの業績推移」マネックス証券より

実際、経営環境が悪化したことで、山口フィナンシャルグループの業績は低迷しています。今後10年のうちに倒産する危険性は低いかもしれませんが、好き好んで負うリスクではありません。関わらない方が良いでしょう。

まとめ

山口フィナンシャルグループ第9回期限前償還条項付無担保社債には、①利率が低い、②社債のリスクが実質的に株式と変わらない、➂今後も苦しい経営環境が続くという問題点があります。

この社債は株式と同等のリスクを持っている割に、株式よりも利回りが低く(山口フィナンシャルグループ株の配当利回りは4%強)、長期的な業績の改善が期待できません。リスク・リターンが見合っていないので、投資は見送った方が良いでしょう。

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