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中国の住宅ローン返済ボイコット運動の現状は?
- 中国では完成・引渡し前からローンを支払う慣行があったため、開発会社は内部留保を蓄える必要がなく、資本構造はかなり脆弱な状態でした。そこに、不動産開発会社の融資規制が導入されたことで、多くの開発プロジェクトが頓挫する結果となってしまいました。
- 2022年8月25日時点で117都市にわたる332のプロジェクトでボイコット運動が起きています。恒大集団 (ボイコット物件数:83件)、融創中国控股(同:20件)、緑地控股集団(同:17件)の上位3社は企業規模が大きいので、他にも建設が止まっている物件がたくさん存在します。この問題がさらに拡大し、金融危機に発展する危険性もあります。注意しましょう。
住宅ローン返済ボイコット運動の発端は?
前回の記事(「中国で住宅ローンの返済を拒否する運動が活発に。金融危機は起きるか?」)で取り上げたように、現在中国では住宅ローンの返済を拒否する運動が起きています。そこで、今回は同運動の現状についてあらためてまとめてみたいと思います。
もともと、中国では長期にわたって不動産価格が上昇していたこともあり、不動産開発会社の多くが有利子負債を積極的に活用して拡大路線を突き進んできました。また、中国では住宅価格の値上がりを見越して、完成・引渡し前から住宅ローンを支払う慣行があったため、開発会社は内部留保(現預金)を蓄える必要がなく、資本構造は脆弱な状態となっていました。
そんな中、中央政府は不動産価格の高騰を抑えようと、2020年8月に「三条紅線」という不動産開発会社に対する融資規制を導入。これによって事態は急変します。同規制によって財務状態の悪い(負債の多い)企業への融資が制限されたことから、多くのディベロッパーが資金難に苦しむことになりました。
突然の規制の導入と資金繰りの厳しさから、最大手の恒大集団をはじめ、新力控股(集団)、花様年、華夏幸福基業など、不動産開発会社のデフォルト(債務不履行)が相次ぎます。そして、不動産セクターのデフォルトが増加したことで、金融機関のどうえクターに対する融資姿勢はますます慎重になり、不動産開発会社の資金調達はさらに困難になっていきました。
悪循環に陥ったディベロッパーは資金流出を防ごうと、資産売却や人員整理、プロジェクトの中止を決定しますが、市況は回復せずに財政再建は難航。結果として、建設途中の建物と不動産購入者だけが取り残されることとなりました。
住宅ローン返済ボイコット運動の現状は?
先ほども触れたように、不動産購入者は不動産完成・引き渡し前から住宅ローンの支払いを求められます。建設プロジェクトが頓挫したり、遅れが生じると、購入者は現住する住まいの家賃と住宅ローンの2重の支出が発生することになり、そうした期間が延びるほど生活が厳しくなっていきます。
現在、住宅ローンの返済ボイコット運動は中国全土で広がっており、2022年8月25日時点で117都市、332のプロジェクトに及んでいます。この一か月ほどで5都市にわたる13プロジェクトが新たに加わっています。
この流れがどこまで拡大していくかは分かりませんが、恒大集団 (ボイコット物件数:83件)、融創中国控股(同:20件)、緑地控股集団(同:17件)の上位3社で全体の約3分の1を占めています。3社とも企業規模が大きいので、上記の他にも開発がストップしている物件が存在します。住宅ローンの返済をボイコットする運動は今後も続くでしょう。金融危機に発展する恐れもあるので、関連ニュースには注意が必要です。