「岸田インフレ」というデマ!インフレの本当の原因は?

「岸田インフレ」というデマ!インフレの本当の原因は?

この記事のポイント
  • 立憲民主党の泉代表がこのところのインフレを「岸田インフレ」と名付け、無理やり政権批判を行っています。しかし、今回の世界的なインフレはウクライナ情勢が絡んでいるので、誰が総理だろうと解決は不可能です。現在、米国が大幅な利上げを実施して商品市場を沈静化させようとしていますが、予断を許さない状況です。
  • 今の日本ができることは消費税の減税や高齢者への給付金支給ではありません。むしろ余計な歳出を減らし、有事の際に買い負けしないよう外貨を蓄えることが大切です。

「岸田インフレ」というデマ!

立憲民主党の泉健太代表は4日、東京・JR新宿駅西口の地下広場で、東京選挙区から立候補した元衆院議員で新人の松尾明弘氏の応援のために街頭演説に立った。(中略)聴衆は高齢者が多かったが、高校生などの若者もいた。泉氏は、1ドル=137円台と約24年ぶりの高水準となった円安や記録的な物価高に触れ、「当初はウクライナ情勢によるものといわれたが、どんどん度合いを強めている」などと岸田文雄政権の経済政策を批判し、「この物価高は『岸田インフレ』。これは事実だと思います。岸田インフレという言葉を最初につくったのも、わが党の国会議員でありました」と強調した。 夕刊フジ  7/5(火) 19:08 配信記事より

少し前のヤフーニュースに上のような記事が載っていました。立憲民主党の泉代表が街頭演説の中で最近の物価高を「岸田インフレ」と名付けたのは自分たちだと主張し、その対策として消費税の引き下げや年金生活者への給付金を訴えたという内容です。

この報道をみた時、「やっぱり今年も野党は野党だな」と思いました。というのも、(当たり前のことですが)インフレという世界的な現象を岸田総理一人の力で起こせるはずがないからです。日本のGDPは4,937.42(2021年名目値、単位は10億USドル)で、世界のGDPのおよそ5.1%に過ぎません。どう頑張ったところで、インフレを引き起こすことは不可能です。

問題を岸田総理一人に押しつけて矮小化し、まともに議論を交わそうとしない立憲民主党の姿勢はまさに「野党の中の野党」と言えるでしょう。

インフレの本当の原因は?

インフレの最大の原因はウクライナ問題にある

「原油先物と小麦先物の週足チャート」investing.comより

「原油先物と小麦先物の週足チャート」investing.comより(画像はすべてクリックすると拡大します)

インフレの本当の原因はウクライナ問題にあります。

上の画像をみれば明らかなように、ロシアによるウクライナ侵攻開始日から商品価格は急上昇しています。原油先物価格は侵攻後に最大40%、小麦先物価格は最大50%近く急騰しており、その影響の大きさが伺えます。

ロシアは原油と小麦の生産量で世界第3位のシェアを占めており、その大部分を輸出にまわしています。そのため、戦争による直接的な被害や経済制裁などの間接的な効果によって原油や小麦などの供給が滞るのではないかと市場が動揺し、一部の商品価格が高騰。それが商品市場全体に広がり、今も高止まりを続けています。

MEMO
国際通貨基金(IMF)の報告書によると、世界各国がこれまでに新型コロナウイルス対策として実施した財政支援は総額16.9兆ドルに上るようです。こうした世界規模で行われた財政支出による金余りも、インフレの要因の一つと言えるでしょう。

アメリカの急速な利上げによってインフレは沈静化に向かう?

「アメリカの政策金利の推移と今後の見通し」ジェトロビジネス短信より

「アメリカの政策金利の推移と今後の見通し」ジェトロビジネス短信より(画像はすべてクリックすると拡大します)

世界的なインフレ懸念に対して、連邦準備理事会(FRB)は急激な利上げを推し進めています。

2022年6月15日には実に1994年以来となる0.75%の大幅な利上げを発表するなど、かなり厳しい金融引き締めを行っています。連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録では2022年末までに政策金利を3.4%(前回予測は1.9%)まで引き上げる見通しを示しており、下期にかけて引き続き強硬な態度をとると予想されています。

MEMO
FRB(The Federal Reserve Board:連邦準備理事会)は米国の中央銀行制度の最高意思決定機関のことで、日本で言うところの日銀に相当します。また、FOMC(Federal Open Market Committee:米連邦公開市場委員会)は米国の金融政策を決定する会合のことで、日銀金融政策決定会合と同じような役割を担っています。
「原油先物と小麦先物の週足チャート」investing.comより

(再掲)「原油先物と小麦先物の週足チャート」investing.comより

こうしたFRBの強い態度もあって、商品先物市場は落ち着きを取り戻しつつあります。商品価格はウクライナ侵攻前の水準に近づいており、一先ずはインフレに歯止めがかかりそうな形です。下期も利上げを継続すれば、商品価格はある程度沈静化するのではないかと思います。

ただし、根本的な問題はウクライナ情勢にあるので注意が必要です。同地での戦闘が激化して小麦などの輸出が制限されれば、商品価格は再び高騰するでしょう。そして、それは戦争によってもたらされた構造的なインフレなので、争いが終結するまでは誰にも止めることができません。米国の利上げなど関係のない、未知のインフレに突入する危険性があります。

まとめ:消費税の引き下げや給付金でインフレは解決できない

以上のように、現在のインフレは主にウクライナ問題に起因しています。米国が政策金利を大幅に引き上げることで商品市場を沈静化させようとしていますが、ウクライナ情勢次第な部分もあって予断を許さない状態です。

立憲民主党の泉代表は今回のインフレを「岸田インフレ」と命名し、消費税の減税や年金生活者への給付金でこのインフレを乗り切ろうとしていますが、はっきり言って意味のないことだと思います。良くわからない減税や給付金で国庫を枯渇させるのではなく、むしろ外貨を増やして(買い負けしないよう)有事に備えるのが筋でしょう。

選挙結果がどうなるかは分かりませんが、野党は変わらず野党のままでいてほしいものです。

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