セーフィー(4375):反転の兆し。上昇トレンドに転じるのはいつか?|注目銘柄分析

この記事のポイント
  • セーフィー(4375)は当初のガイダンス通りの決算を発表。2022年12月期の売上高も高成長を維持する見込みとなっており、今後の業績は課金カメラ台数を年平均38%以上の割合で伸ばしていけるかにかかっている。
  • 株価は東証マザーズ指数の下落に伴って大きく売り込まれていたが、ここ最近はトリプルボトム(3度の反発)を形成し、反転する兆しが伺える。しかし、一部の空売りポジションを買い戻していた機関投資家が、再び空売りを始めていることから油断はできない。
  • アメリカの有名投資家であるデビッド・ライアンは「成長株投資の神」という本で上昇トレンドを「20日移動平均線>50日移動平均線>200日移動平均線となっている状態」と定義。セーフィーのチャートをみるとまだまだ本格的な上昇トレンドには程遠いことが分かる。

2022年12月期から数年間は赤字が続く

2022年12月期の業績予想と2025年12月期までの投資方針

「セーフィー(4375)2022年12月期業績予想と2025年までの投資方針」同社IR資料より

「セーフィー(4375)2022年12月期業績予想と2025年までの投資方針」同社IR資料より

セーフィー(4375)の2022年12月期の業績予想は、売上高11,000百万円(前期比:+30.09%)、営業利益以下の利益項目は▲1,000~500百万円の赤字を予想しています。21年12月期は営業利益▲76百万円に対して当期純利益が▲173百万円だったので、22年の当期純利益は▲2,000~1,000百万円程度で着地するのではないかと考えています。

同社の資料では2025年頃までは売上高(特に課金カメラ台数の)成長率の伸びを重視すると明言しているので、少なくとも当面の間は赤字先行となりそうです。

MEMO
一般的に売上高は客数×客単価と計算されます。防犯カメラ等のクラウド録画サービスを開発・運営するセーフィーにとって客数は課金カメラ台数に相当するので、同社の売上高は課金カメラ台数(≒客数)×ARPC (Average Revenue Per Camera:カメラ一台当たりの平均単価≒客単価)と計算できます。もちろん、カメラの設置などの一時的な収益を計上したり(上記計算式外のスポット収益を増やす)、入退出管理などの付随システムを販売する(ARPCを高める)ことで売上高を増やすこともできますが、しばらくはこれらの施策には力を入れないようです。

株価は売上高成長率(課金カメラ台数)に左右されることに…

「2025年12月末までのARRターゲットと課金カメラ台数の推移」同社IR資料より

「2025年12月末までのARRターゲットと課金カメラ台数の推移」同社IR資料より

先ほども述べたように、セーフィーの業績は最低でも2~3年間は赤字が続くと予想されています。したがって、同社の今後の株価を判断する上では、売上高成長率(特に課金カメラ台数)が最も重視される指標になります。

さて、同社は2025年のにARR(Annual Recurring Revenue:カメラ設置などの付随収益を除いた年間経常収益)を20,000~25,000百万円にするという目標を掲げています。ARPC (Average Revenue Per Camera:カメラ一台当たりの平均単価)が現在の水準のままだとすれば、2025年の課金カメラ台数の目標値は最低ラインで49.3万台ということになります。

現時点(21年末)のカメラ台数が14万台なので、2025年までの間に課金カメラ台数を年平均38%の割合で増やしていかなければなりません。広告宣伝費や営業・マーケティング部門の人員を増やすことで目標達成を図るようですが、これが本当に実現できるかわかりません。

22年第1四半期の決算発表を5月13日に控えていますが、売上高成長率(課金カメラ台数の伸び率)の数字には注意が必要です。

チャートは反転の兆し。本格的な上昇はいつか?

東証マザーズの暴落に巻き込まれて株価は下落

「セーフィーと東証マザーズ指数の6ヶ月日足の比較チャート」マネックス証券より

「セーフィーと東証マザーズ指数の6ヶ月日足の比較チャート」マネックス証券より

セーフィーの株価は、ロシアによるウクライナ侵略とそれに伴うハイテク株の売り圧力に巻き込まれて暴落しました。特に、黒字化までの道のりが長く、課金カメラ台数を下方修正したこと、ゴールドマンサックスなどの空売り機関の参入もあり、東証マザーズ指数よりも大きな下落幅となっています。

【関連記事】こちらでゴールドマンサックスの空売り手口についてまとめています。

ゴールドマン・サックスの空売り手法とは?ゴールドマン・サックスの空売り手法とは?|投資の知識

反転の兆しはみえるものの…

「セーフィー(4375)6ヵ月日足チャート」マネックス証券より

「セーフィー(4375)6ヵ月日足チャート」マネックス証券より

マザーズ指数に連られる形で大きく売り込まれていたセーフィーですが、ここ最近は反転の兆しを見せています。6ヵ月日足チャートをみると1,000円の節目でトリプルボトム(3度の反発)を形成し、短期・中期・長期の3つの移動平均線が絡み合い、短期的な戻りを見せていることが分かります。

「セーフィー空売り残高情報」karauri.netより

「セーフィーに対する機関投資家の空売り残高情報」karauri.netより

一見するともうそろそろ投資してもよさそうに思えますが、それは大きな間違いです。底値からの反発を試す過程で機関投資家は一部の空売りポジションを買い戻す動きを見せていましたが、ここ最近は再度空売りのポジションを膨らましつつあります。

また、次に詳しくみるように、今回の戻りは「本当の上昇トレンド」ではありません。あくまで反転の兆しがみられるだけで、様子を伺う段階といった方が良いでしょう。

上昇トレンドに転じるのはまだまだ先

私はある銘柄の50日移動平均線が200日移動平均線を上回っていて、両方とも上向きのものを、上昇トレンドと定義します。もっと強い上昇トレンドは、20日移動平均線が50日移動平均線を上回り、50日移動平均線が200日移動平均線を上回っている状態と定義できます。マーク・ミネルヴィニ. 成長株投資の神 (Amazon Kindle位置No.933-936)

著名な投資家のデビッド・ライアンは「成長株投資の神」という本で上昇トレンドを上記のような形で定義しました。同氏の定義に従えば、20日移動平均線が50日移動平均線を上回り、50日移動平均線が200日移動平均線を上回っている(20日移動平均線>50日移動平均線>200日移動平均線のパーフェクトオーダーとなっている)必要があります。

MEMO
デビッド・ライアンはアメリカの伝説的な投資家であるウィリアム・オニールの弟子で、オニール社のファンドマネージャーを務めていました。個人の実績としては、1985年から1987年のUSインベスティング・チャンピオンシップで3年連続優勝を果たしています。3年間の総リターンは1379%に達しており、現在は自身で設立したヘッジファンドを運営しています。

【成長株投資の神】3人の有名投資家が対談する形で自身のトレード手法について語っています。チャートや図が一切出てきませんが、銘柄選びの基準やポジション管理など幅広いテーマを扱っているのでかなり勉強になります。是非ご一読ください!注:紙の書籍は高値で転売されたりしているので、値段の安い電子書籍がおすすめです!

【関連記事はこちらです】

成長株投資の神 マーク・ミネエルヴィニ著著名投資家の一問一答から投資の神髄を学ぶ「成長株投資の神」

しかし、セーフィーの日足チャートを見れば確かに底を形成しつつあるものの、株価は100日移動平均線(上場後200日を経過していないため、200日移動平均線は算出不能)を下回っている状態です。当面は赤字が継続し、耳目を集めるIRニュースも期待できないので、本格的な上昇トレンドに転じるのはまだまだ先の話になります。

大きく投資するのはデビッド・ライアンが定義するように、20日移動平均線と50日移動平均線が200日移動平均線を上回った段階で良さそうです。

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