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ノムラ(野村)・インターナショナルの空売り手法とは?|投資の知識
- ノムラ・インターナショナル(Nomura International plc)は、野村ホールディングス株式会社の完全子会社で、イギリスのロンドンに本拠を置く証券会社です。
- 同社は「ファンダメンタル上の問題がある」銘柄を空売りします。流動性やテクニカルの条件は考慮せず、「あらかじめ決めておいた価格帯で空売りし、目標とする価格帯で買戻す」というシンプルな投資手法を用いているようです。
- ノムラ・インターナショナルはその投資手法を徹底しているため、株価が割高なら長期にわたって空売りを仕掛けてきます。同社が空売りしている銘柄が上昇にトレンドにあるなら売買しても良いですが、長期的な投資は避けた方が無難です。
ノムラ・インターナショナルとは?
ノムラ・インターナショナル(Nomura International plc)は、野村ホールディングス株式会社の100%子会社で、イギリスのロンドンに本拠を置く証券会社です。1981年に証券業現地法人として設立され、株式や債券の引き受け、資金調達、資産運用といった法人向け(ホールセール)事業を行っています。
イギリスがEU離脱(Brexit)を決定する前までは地域本部として欧州のビジネス展開を統括していましたが、EU離脱を機に一部の機能がドイツのノムラ・ファイナンシャル・プロダクツ・ヨーロッパGmbHへ移管されることになりました。
ただし、ノムラ・インターナショナルは現在でも数兆円規模で取引を行っており、ノムラ・ヨーロッパ・ホールディングズ PLCの最も重要な子会社として位置づけられています。
ノムラ・インターナショナルが空売り銘柄を選ぶ基準は?
ノムラ・インターナショナルは直近で、シャッターシェア国内2位の文化シヤッター(5930)、古本やトレーディングカードを取り扱うテイツー(7610)、データヘルス関連サービスを提供するデータホライゾン(3628)などを空売りしています。これらの銘柄には「ファンダメンタル上の問題がある」という共通点があります。
基準:ファンダメンタル上の問題がある
文化シヤッター(5930)
文化シヤッター(5930)のファンダメンタル上の問題点は、原材料価格(鉄鋼価格)の高騰を製品価格に転嫁できずに収益性が悪化しているということです。
同社の直近の業績(22年3月期第2四半期)は、売上高84,010百万円(前年比同期比:+7.3%)、経常利益2119百万円(同:△36.4%)、当期純利益1,224百万円(同:△34.7%)となっており、大幅な減益となっていることがわかります。
この点に関し、文化シヤッターの経営陣は決算説明会の質疑応答で「基本的に適正利益を確保することが難しい状況」にあり、「コストダウンを図り、利益を確保」すると回答していることから、この減益傾向は長引くだろうと予測されます。
同社のバリュエーション(PBRの水準)にはそこまでの割安感はないので、四半期業績に回復の兆しが見えるまではノムラ・インターナショナルの空売りの餌食になりそうです。
テイツー(7610)
テイツー(7610)のファンダメンタル上の問題点は、新規出店ペースと業績が見合っておらず、資金繰りの悪化が懸念されている点にあります。
テイツーの2022年2月期第2四半期決算を見ると、売上高12,583百万円(前年同期比:+1.2%)、経常利益649百万円(同:△20.4%)、純利益458百万円(同:△31.1%)と大幅な減益になっていることが分かります。
同社は減益に陥った理由を「巣ごもり特需の影響によるもの」だと指摘しています。しかし、前期末に比べて5店舗(店舗数:105→110店)増加しているので、特需の影響だけでここまで業績が落ち込むとは考えられません。
同社の貸借対照表を見ると、商品在庫が膨らみ、長期借入金の返済を迫られていることが分かります。営業キャッシュフローもマイナスに転落しているので、資金繰りの悪化が懸念されます。3Qの業績は好調なようですが、少なくとも不安が払拭されるまでは株価の下落が続きそうです。
データホライゾン(3628)
データホライゾン(3628)のファンダメンタル上の問題点は、割高であるということです。
同社の業績の推移をみると、ここ5年間は確かに売上高を大きく伸ばしていますが、研究開発費の増加によって純利益はほとんど変化していません。それにもかかわらず、バリュエーションはPER88.8倍PBR13.3倍に達しており、かなり割高な水準になっています。
もっとも、データホライゾンの長期チャートはきれいな上昇トレンドを描いており、空売りに適した銘柄ではありません。ノムラ・インターナショナルは2020年9月から1年以上空売りを続けていますが、ずっと踏み上げられています。
ノムラ・インターナショナルの直近の売り崩し事例
文化シヤッターの売り崩し事例をみると、特定の価格帯(1,150円以上)でポジションを積み増していることが分かります。株価が窓をあけて上昇しても頭を叩いて下落させようとしているので、テクニカルの要素を完全に無視しています。
これは買戻しに関しても同じことが言えます。同社はやはり特定の価格帯(1,000円付近)で集中的に決済していることが分かります。ノムラ・インターナショナルはまだ大量の空売りポジションを保有しているので、最終的にはさらに下の価格帯で清算しようと目論んでいるようです。
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機関投資家の空売りの手口~空売り成功例と失敗例~|投資の知識オニールの空売り練習帖(ウィリアム・J・オニール著)
「オニールの空売り練習帖」は、成長株を見分ける「CAN-SLIM法」で有名なウィリアム・J・オニール氏が執筆した本です。空売りに特化して解説されており、どの銘柄を、どのようなタイミングで空売りすれば良いか、詳しく説明されています。
現在、同氏は自身の投資会社ウィリアム・オニール・アンド・カンパニーの運営に携わるほか、金融機関のアドバイザリーも務めています。この本を読むことで機関投資家がどのように空売りを狙うのかが良くわかると思います。平易な言葉で書かれており、サクサク読めますのでぜひご一読ください!
まとめ
ノムラ(野村)・インターナショナルは純粋にファンダメンタルだけを基準にして、空売りを行っています。その投資手法は「あらかじめ決めておいた価格帯で空売りしてポジションをつくり、目標とする価格帯で買い戻す」という方法で、機関投資家の中でも一番シンプルな投資を行っています。
テクニカルの要素を無視した投資手法なので失敗しやすいですが、データホライゾンの事例のように長期にわたってひたすらポジションを維持し続けるので、かなりやっかいな機関投資家と言えます。同社が空売りしている銘柄に関しては、上昇トレンドにあれば買っても(逆らっても)良いですが、長期投資は避けた方が良いでしょう。