目次
ブースター接種(3回目の追加接種)によってコロナはいつ頃収束するのか?
- 世界の新型コロナウイルス感染者数は2021年10月8日時点で累計2億3679万人、死亡者数は483万人に達しています。
- イスラエルの感染状況を踏まえると、ワクチンの有効性は確認されているものの、その効果の持続性には疑問が残ります。そのため、世界各国でブースター接種(3回目の追加接種)が進められています。
- ブースター接種が行われる場合、ワクチン接種が完了するまで最低でもあと274日かかります。実際には物量の確保や接種の準備に時間がかかるので、ワクチン接種が完了するのは最終的に2023年初めから2023年半ば頃になりそうです。
- しかし、ワクチン接種が数字の上で完了したとしても、接種を拒否する人や健康上の理由から接種を受けられない人がいるため、接種率100%は達成できません。また、感染予防効果も100%ではないので、コロナウイルスが完全に収束することはないでしょう。
2021年10月時点の新型コロナウイルス世界の感染状況は?
世界の新型コロナウイルス感染者数は2021年10月8日時点で累計2億3,679万人、死亡者数は483万人に達しています。世界の人口(2021年時点で78億7,500万人)比で、およそ3%の人がコロナウイルスに感染し、0.06%の人が死亡した計算です。
一方、ワクチン接種回数は延べ64億86万回に及んでおり、世界の人口の81.2%は少なくともワクチン接種を1回受けた計算になります。
世界的にワクチンが普及したことで、新規感染者数と死亡者数は減少傾向にあります。また、危険視されている変異ウイルスも、今のところはそれほど脅威となっていないようです。
ただし、WHOは2021年10月7日の声明*でアフリカと中東の国々を中心にワクチンが不足していると警鐘を鳴らしています。コロナウイルスの感染拡大を抑えるには「2021年末までにすべての国の人口の40%、2022年半ばまでに人口の70%の予防接種を終える必要がある」とし、各国のさらなる協力を求めています。
* WHO”WHO, UN set out steps to meet world COVID vaccination targets”より
新型コロナウイルス感染者の特徴は?
コロナ感染者数が多い年齢層は?
新型コロナウイルスの年齢別感染者数のグラフを見ると、感染者の大半が20歳~50歳代であり、10代の新型コロナウイルスの感染者が少ないことがわかります。20歳~50歳代の人は仕事などで生活の範囲が広がり活動量も多くなるので、感染リスクが上昇するのが原因だと考えられます。
コロナ死亡者数が多い年齢層は?
新型コロナウイルスの年齢別死亡者数をみると、年齢を重ねるにつれて死亡者数が増えているのが分かります。特に、50代以上になると死亡リスクが格段に高くなっています。また、これとは反対に20歳以下の死亡者はほとんどいないことが分かります。
ワクチンブースター接種(3回目の追加接種)の意義は?
ワクチン接種による予防効果と持続性
2回接種の有効性について~イスラエルの集団接種成績より~
新型コロナウイルスのワクチンの有効性については、既に一定の効果があると確認されています。イスラエルの集団接種の成績を見ると、感染予防効果や重症化予防効果にも高い有効性を示していることが分かります。
ワクチン2回接種では不十分?~イスラエルの感染状況~
イスラエルの感染状況を見る限り、ワクチンの有効性は確認されていますが、効果の持続性には疑問が残ります。
上の画像をみると、イスラエルではワクチン接種(画像の緑のグラフ)が進んでいるにもかかわらず、7月頃から新規感染者数(赤いグラフ)が増加していることが分かります。
感染者が急増する一方、同時期の死亡者数(白いグラフ)は減少しています。つまり、ワクチン接種による予防効果は低下する可能性があるものの、重症化予防効果はある程度持続すると考えられます。
実際、イスラエルのデータでは未接種者が重症化する確率は、接種した人と比べて60歳以上では約9倍、若年層では約2倍高いとされており、依然として重症予防効果が機能していることが分かります。
現在、イスラエルは60歳以上の国民を対象としたブースター接種を完了させ、40歳以上の国民を対象にした追加接種を進めています。ただ、誰を対象にどこまでワクチン接種を行えばいいのか、4回目以降の追加接種は必要なのかといったことは当のイスラエルでさえも分かっていません。
ブースター接種(3回目の追加接種)の効果を知るには、今後のイスラエルの感染状況を見守る必要があります。
FDAは部分的にブースター接種(3回目の追加接種)を承認
イスラエルでの新規感染者数の増加を受けて、FDA(アメリカ食品医薬品局:U.S. Food and Drug Administration) は2021年9月22日にコロナワクチンの追加接種を部分的に承認しました。
追加接種の対象は、①65歳以上の高齢者、②重症化リスクの高い18歳から64歳までの人、③仕事上コロナウイルスに晒される機会の多い18歳から64歳までの人で、重症化したコロナ患者を含む重篤な合併症を引き起こす恐れのある人と接する人(医療従事者、介護従事者など)となっています。
今のところ全国民を対象にしたわけではありませんが、アメリカは3回目の追加接種を進めています。イギリスやドイツでも同様の動きが広がっているので、先進国を中心に世界的にもワクチンの追加接種が推進されている状況です。
日本政府は全国民を対象にしたブースター接種(3回目の追加接種)用の物量を確保
後藤茂之厚生労働相は8日の閣議後の記者会見で、米ファイザー製の新型コロナウイルスワクチンについて新たに1億2000万回分を追加契約したと発表した。契約は7日付。2022年1月から供給を受ける予定で、3回目接種などを中心に活用される見通しだ。日経新聞「ファイザー1.2億回分を追加契約 3回目接種へ厚労省」2021年10月8日
ブースター接種に向けた動きは日本でも始まっています。具体的なスケジュールは発表されていないものの、政府は既に3回目の追加接種用のファイザー社製ワクチンを契約しています。契約数が1億2000万回となっているので、念のため全国民を対象にした数量を確保したのだと思われます。
ファイザー社は9月28日に追加接種に関する治験データを厚労省に提出しているので、その承認が下り次第、おそらく来春ごろから順次ワクチン接種が進められるのではないかと考えています。
ワクチンの接種完了時期は?
現在のワクチン接種状況を細かくみると…
世界のワクチン接種状況
2021年10月8日時点の世界のワクチン接種回数は累計で64億86万回となっています。1日あたりの接種回数はワクチンの供給不足もあっておよそ1,800万回に落ち込んでいますが、2021年3月頃に比べると2倍程度の水準を維持しています。
日本のワクチン接種状況
日本は既に累計で1億7,212万回のワクチン接種を実施しています。2回接種済みの人は7,995万人に達しており、12歳以上の対象者ほぼすべてにワクチンが行き届いている状態です。現在も1日あたり45万回のワクチン接種が行われており、若年層を含めた100%接種に近づいています。
ワクチン接種完了時期を計算すると…
世界のワクチン接種完了時期は?
国連のデータによると、世界の人口の構成比は14歳以下が25.3%、15歳から64歳が65.1%、65歳以上が9.6%となっています。先に見たように14歳以下は感染リスクが低いので、世界の人口78億7,500万人のうち、ワクチン接種対象者は58億8,262万人と推計できます。
回数ベースでは対象者1人につきワクチンを2回接種するので、117億6,525万回のワクチン接種が必要となります。さらに、65歳以上の高齢者や医療従事者には3回目のワクチン接種が推奨されてるので、ブースター接種対象者(人口比で20%と仮定*)の接種回数を加えると、必要となるワクチン接種回数は133億回4025万回と算出されます。*65歳以上の構成割合9.6%+医療従事者等≒20%と仮定
ワクチン接種対象者58億8,262万人×2(ワクチン接種回数)=通常のワクチン接種回数117億6,525万回
総人口78億7,500万人×0.2(3回目接種分)=追加接種用のワクチン接種回数15億7,500万回
通常のワクチン接種回数117億6,525万回+追加接種用のワクチン接種回数15億7,500万回=総ワクチン接種回数113億4,025万回
現在、世界のワクチン接種回数は累計で64億86万回に達しており、1日の接種回数はおよそ1,800万回となっています。したがって、すべてのワクチン接種が完了するのは、最低でも274日かかる計算です。
ただし、現状では先進国がブースター接種用のワクチン確保に動いており、途上国を中心にワクチンの確保が難しくなっています。こうした点を考慮すれば、半年~1年程度の余裕を見た方が良いでしょう。
途上国もブースター接種を実施するなら、最終的な接種完了時期は2023年初め~半ばあたりになりそうです。
今後必要となる接種回数49億3939万回÷現在の1日あたりの接種回数1,800万回≒ワクチン接種完了までの日数274日
日本のワクチン接種完了時期は?
日本の人口は2021年7月時点で1億2,536万人となっています。そのうち、15歳未満は1,494万人(構成比:11.9%)で、15歳から64歳までは7,435万人(同59.4%)で、65歳以上は3,624万人(同28.9%)となっています。
先ほどと同じように計算すると、日本の人口のうち14歳以下は感染リスクが低いので、実質的な接種対象者は1億1,044万人と推計できます。2回接種時の回数ベースでは、2億2,088万回のワクチン接種が必要になります。
ただし、日本の場合は高齢者の割合が多いので、ブースター接種の対象者数が多くなります。総人口比の40%*のワクチン接種が求められると仮定すれば、総接種回数は2億7,102万回と計算できます。*日本の65歳以上の構成比28.9%+医療従事者等≒40%と仮定
ワクチン接種対象者1億1,044万人×2(ワクチン接種回数)=通常のワクチン接種回数2億2,088万回
総人口1億2,536万人×0.4(3回目接種分)=追加接種用のワクチン接種回数5,014万回
通常のワクチン接種回数2億2,088万回+追加接種用のワクチン接種回数5,014万回=総ワクチン接種回数2億7,102万回
既に日本の累計接種回数が1億7,212万回に達し、1日あたりの接種回数も45万回程度あるので、ワクチン接種が完了するまで最短で219日かかることになります。
もっとも、実際はこれに加えてブースター接種の認可や接種の準備などに多くの時間を必要とします。半年から1年程度の時間は必要になるので、最終的な接種完了時期はやはり2023年初め~半ばあたりになりそうです。
今後必要となる接種回数9,890万回÷現在の1日あたりの接種回数45万回≒ワクチン接種完了までの日数219日
ワクチンブースター接種(3回目の追加接種)後にパンデミックは収束するか?
これまで見てきたように、最短で274日後には世界中で追加接種を含めたワクチン接種が完了します。ただし、基礎疾患がありワクチン接種できない人や接種自体を拒否する人もいるので、接種率が100%に達することはありません。
さらに、イスラエルを見れば明らかなように、ワクチンを接種したとしても100%の感染予防効果が期待できるわけではありません。ワクチン効果の持続性に関する問題やデルタ株のような新しい変異株が出現する可能性は常につきまといます。
したがって、たとえワクチン接種が完了しても新規感染者数は0にはならず、少なくとも毎年数千~数百万人単位で新規感染者が発生すると考えています。パンデミックを収束させることは不可能でしょう。
世界経済の混乱は徐々に落ち着きを取り戻していますが、0コロナの世界は実現しません。ワクチン接種が完了する2023年までは、引き続き変異株の出現に気をつける必要があります。
参考サイト・記事
参考サイト
WHO(世界保健機関)
リンク:https://www.who.int/
COVID-19 Dashboard by the Center for Systems Science and Engineering (CSSE) at Johns Hopkins University (JHU)
リンク:https://www.arcgis.com/apps/dashboards/bda7594740fd40299423467b48e9ecf6
チャートで見るコロナワクチン 世界の接種状況は
リンク:https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-vaccine-status/
FDA(アメリカ食品医薬品局)ホームページ
リンク:https://www.fda.gov/
厚生労働省 新型コロナワクチンQ&A
リンク:https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/0011.html
参考記事
配信元 | 記事タイトル | 配信日 |
BBC | 「パンデミックから抜け出す方法 追加接種のイスラエルから分かること」 | 2021年9月10日 |
日経新聞 | 「欧州でワクチン「3回目接種」広がる独英で9月から」 | 2021年8月3日 |
日経新聞 | 「ファイザー1.2億回分を追加契約3回目接種へ厚労省」 | 2021年10月8日 |