伝説の投資家の生涯を描く「スノーボール ウォーレン・バフェット伝」

スノーボール-ウォーレン・バフェット伝

伝説の投資家の生涯を描く「スノーボール ウォーレン・バフェット伝」

この記事のポイント
  • スノーボールは、アメリカでも有数の投資家であるウォーレン・バフェットの生涯を綴った本です。バフェットに関するエピソードが丁寧に描かれており、彼の生い立ちや思想的な背景を知ることができる、数少ない本だと思います。
  • この本をおすすめできないポイントは、無駄に長いことです。バフェットと関係の薄い人物まで細かく描写されているため、冗長すぎます。上中下の3巻にわたっていますが、上巻だけ読めば十分です。
  • この本には投資ルールや投資手法に関する記述はほとんどありません。バフェットの投資哲学や投資手法を学びたい方は別の本を購入したほうが良いでしょう。

「スノーボール ウォーレン・バフェット伝」のハイライト

チューインガムを売って得た数セントが、ウォーレンが最初に儲けた金だった。六歳の時に売り始めたころから、後年も流儀を髣髴させる姿勢を守り、けっして顧客に妥協をしなかった。 No.1345

ウォーレン・バフェットは幼いころから数字を集め、勘定し、記憶することに興味を持っており、新聞や聖書にどの字が最も頻繁出てくるかを数えたりするのが好きでした。そんなバフェットが最初に取り組んだビジネスがチューインガムの販売でした。

祖父のところで五枚入りのガムを三セントで仕入れ、近所を一軒一軒回って一パック五セントで売りました。バラ売りを求められても残りの半端な枚数を売る手間や、パック売りができなくなる危険性を考えて決して妥協することはありませんでした。

バフェットは、このようにして儲けたわずか数セントのお金を、雪の玉を大きくするようにどんどん増やしていきました。

この複利という発想が極めて重要だと、ウォーレンが気づいた。本は一〇〇〇ドル儲けられるといっている。仮に一〇〇〇ドルからはじめて、年利一〇パーセントだとすると、五年で一六〇〇ドル以上になる。一〇年では二六〇〇ドル近くになる。二五年では一万八〇〇ドルを超える。一定の利率でも複利だと歳月がたてば膨大な額になることが、少額でもひと財産になりうることを示している。芝生に雪の玉(スノーボール)を転がすうちに大きくなるように、数字が賭けあわされて増えるのを、まざまざと思い浮かべることができた。 No.1488

ウォール街の大物であるシドニー・ワインバーグとの出会いや、ニューヨーク証券取引所の景色にあこがれたことをきっかけに、バフェットは大金持ちになると決心しました。意外にも、その願望を叶えるための道具はすぐ手に入りました。

ある日、バフェットはベンソン図書館で1冊の本に目を惹かれました。一〇〇〇ドル儲ける一〇〇〇の方法と書かれた本で、とるに足らない内容もありましたが、わかりやすい文章で書かれていました。その本を通して、バフェットは複利という発想が極めて重要だと気付きます。

たとえ少額であっても早くお金を儲ければ、複利で増やせる期間がそれだけ長くなります。大金持ちになるという目標を達成できる見込みが高くなるとバフェットは考えました。

ウォーレンは三つの教訓を学び、この出来事は人生で最も重要な出来事の一つだというようになる。一つ、買ったときの株価ばかりに拘泥してはいけない。二つ、よく考えないであわてて小さな利益を得ようとしてはいけない。 中略 三つ目の教訓は、他人のお金を使って投資をしてはいけないということだった。間違いを犯したとき、他人を怒らさせることになる。 No.1511

バフェットは大金持ちになるという目標を達成するため、お金を節約し、まとまった額を貯めこみます。そして、一二歳のときに姉のドリスを引き込んで、シティーズ・サービス・プリファードという株を生まれて初めて買いました。この銘柄を選んだ理由は、証券業に携わる父ハワードが顧客に勧めていた人気のある株だから、ということだけでした。

シティーズ・サービス・プリファードは市況の低迷に伴って、株価は下落していきました。姉のドリスは、株が下がったと毎日バフェットを責め立てました。責任を感じたバフェットは、株価が買い値を回復するとすぐに株を売却し、利益を姉のドリスと折半しました。

しかし、最終的にシティーズ・サービス・プリファードは買値の五倍近くまで急騰したことから、バフェットは上記の教訓―長期保有の重要性と絶対に確信がない限り他人のお金に責任を負おうとしてはいけないこと―を学びました。

会社は個人と似ている、とグレアムは説いた。個人の場合、持ち家の値打ちが五万ドル、ローンが四万五〇〇〇ドル、貯金が二〇〇〇ドルあれば、差し引きは七〇〇〇どるになる。会社も個人と同じように資産があって、製品を製造して売り、借金―負債―を抱えている。資産を売って負債をゼロにすると、残ったものが会社の持ち分すなわち純資産になる。会社の純資産よりも低く評価されている株を買えば、いずれは―“いずれは”というのは危ない言葉だが―その株価は内在価値を反映する価格へと上昇する、とグレアムはいう。 No.3225

ハーバード大学に落ちたバフェットは、コロンビア大学でベンジャミン・グレアムに師事します。当時、グレアムは証券分析という本で株式を評価する数学的な手法を明らかにしており、バリュー株(割安株)投資という投資手法を確立した第一人者でした。

バフェットはグレアムに心酔し、その投資手法を懸命に学びます。そして、①株は企業の一部を所有する権利であり、その企業全体の価値を株数で割ったのが株価である、②株は内在価値に反する価格で長期間売買されることがままあり、投資する際は安全マージンと呼ぶ失敗に備えるゆとりが必要である、③市場は不合理な価格をつけることがあるため、気まぐれな価格に左右されてはいけない、という3つの鉄則をグレアムの授業から学びました。

一九五六年末、ウォーレンはパートナーへ運用成績をおおまかに説明する手紙を書いた。総収益が四五〇〇ドル強という、市場平均を約四ポイント上回る成績を上げたことを報告した。 No.4599

バフェットは大学卒業後にグレアムーニューマン・コーポレーションというグレアムがパートナーを務める投資会社に入りました。そこで数多くの投資案件を経験したバフェットは、グレアムの退任に伴って会社を退職します。

一九五六年に、自分を信用してくれるとわかっている家族と友人だけをパートナーにした、バフェット・アソシエーツを発足しました。新しいパートーナーと「利益が4%を超えた分の半分をとり、4%に達しなければその差の四分の一を負担する」という圧倒的にバフェットに不利な契約を結びますが、グレアムを信奉するバフェットはわずかなリスクで市場平均を上回るリターンを実現しました。

以降、バフェットは複利で資産を増やし続け、パートーナーから集めた資金十万五千ドルを、三百億ドル以上に増やすことに成功しました。

「スノーボール ウォーレン・バフェット伝」の著者

アリス・シュローダーは、監査法人アーネスト&ウィニー、米国会計基準審議会などを経て、ウォール街の複数の金融機関で15年間にわたり株式調査に携わっています。現在はモルガン・スタンレーでマネジング・ディレクターとして働いているようです。

インスティチューショナル・インベスター誌から2001年と2002年の2年連続でNo.1アナリストに選ばれています。ウォール街に否定的なバフェットですが、著者だけは例外的な存在のようです。彼女はバフェットと話せる唯一のアナリストとして知られています。

「スノーボール ウォーレン・バフェット伝」のおすすめポイント

スノーボールは、アメリカでも有数の投資家であるウォーレン・バフェットの生涯を綴った伝記です。バフェットに関するエピソードが丁寧に描かれており、彼の生い立ちや思想的な背景を知ることができる数少ない本です。

特に、上巻、中巻はバフェットの人間性が伺えるかなり面白い本です。一読の価値があるので、ぜひお試しください!

「スノーボール ウォーレン・バフェット伝」のおすすめしにくいポイント

スノーボールをおすすめできないポイントは、無駄に長いことです。バフェットと関係性の薄い人物まで細かく描かれているため、冗長すぎます。上中下の3巻にわたっていますが、上巻だけ読めば十分だと思います。

特に、下巻はどちらかと言えば政治がらみの話が大半になります。ソロモン・ブラザーズやロングターム・キャピタル・マネジメントの破綻の内情がまとめられており、読み物としては面白いですがバフェットについての記述はほぼありません。アマゾンのレビューなどを見ると予想外に高評価が多いですが、個人的には蛇足だと思います。

なお、この本はバフェットの投資ルールや投資手法に関する記述はほとんどありません。バフェットの投資手法について知りたい方は、「麗しのバフェット銘柄―下降相場を利用する選別的逆張り投資法の極意」などの本がおすすめです。*今のところバフェット本人が出版した本はありません。「麗しのバフェット銘柄」の著書もバフェットではありません。

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