誰でもわかる株式の種類と分類|投資の知識

誰でもわかる株式の種類と分類

誰でもわかる株式の種類と分類|投資の知識

この記事のポイント
  • 種類株式とは、普通の株式と「異なる定め」をした株式のことを指します。一般的な株式は、配当額や株主総会の議決権の数がすべて等しくなっています。一方、種類株は配当額や議決権の数について「異なる定め」ができるため、例えば配当額や議決権の数を普通株の2倍にすることができます。
  • 株式は、株価、時価総額、保有する株主、投資家など様々な観点から、色々な形で分類されます。同じ銘柄でも、投資のシーンごとに異なる呼ばれ方をされたりするので気をつけましょう。

種類株式とは?

種類株式とは、普通の株式と「異なる定め」をした株式のことを指します。一般的な株式(普通株)は、一株当たりの配当額や株主総会での議決権の数がすべて等しくなっています。一方、種類株は一株当たりの配当額や議決権の数について「異なる定め」ができるため、例えば配当額や議決権の数を普通株の2倍にすることができます。

発行できる種類株は会社法という法律によって規定されており、以下の9つの事項に対して異なる内容を定めることができます。

  1. 剰余金の配当
  2. 残余財産の分配
  3. 株主総会において議決権を行使することができる事項
  4. 譲渡による当該種類の株式の取得について当該株式会社の承認を要すること。
  5. 当該種類の株式について、株主が当該株式会社に対してその取得を請求することができること。
  6. 当該種類の株式について、当該株式会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができること。
  7. 当該種類の株式について、当該株式会社が株主総会の決議によってその全部を取得すること。
  8. 株主総会(取締役会設置会社にあっては株主総会又は取締役会、清算人会設置会社(第四百七十八条第八項に規定する清算人会設置会社をいう。以下この条において同じ。)にあっては株主総会又は清算人会)において決議すべき事項のうち、当該決議のほか、当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議があることを必要とするもの。
  9. 当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会において取締役(監査等委員会設置会社にあっては、監査等委員である取締役又はそれ以外の取締役。次項第九号及び第百十二条第一項において同じ。)又は監査役を選任すること。

上場企業の種類株式発行例

上場企業であっても種類株を発行することができますが、株主間で異なった不平等な扱いをすることになるため、実際に導入している企業は多くありません。下記の例を除けば皆無と言っていいでしょう。

伊藤園 第1種優先株式

「伊藤園株式等の状況」伊藤園2021年4月期第3四半期有価証券報告書より

「伊藤園株式等の状況」伊藤園2021年4月期第3四半期有価証券報告書より(クリックで拡大)

伊藤園は「伊藤園第1種優先株式」という種類株式を発行しています。この種類株式には株主総会の議決権がありませんが、代わりに配当額が普通株式の125%になっています。

この種類株式は普通株主への配当がない場合でも15円の配当が約束されており、それも不可能な時は不足額を累積していき、支払い可能になったタイミングで普通株主に優先して累積額の配当を受け取ることができるようになっています。

このような種類株を発行することで、伊藤園にとっては経営に口を出さないおとなしい株主を得ることができ、長期的な視点に立った企業経営を行うことができます。また、株主にとっても経営に関与できない代わりに、より多くの配当を得ることができます。

サイバーダイン株式会社 B種類株式

サイバーダイン株式会社-議決権の状況 2021年3月期第3四半期有価証券報告書より

「サイバーダイン株式会社 議決権の状況」 2021年3月期第3四半期有価証券報告書より

ロボットスーツ「HAL」を開発販売するサイバーダイン社は、創業者に対して「B種類株式」という種類株式を発行しています。B種類株式は単元株式数が10株となっており、普通株に比べて議決権の数が10倍になっています(詳細は上の画像をご覧ください)。

これに加えて、B種類株式は非上場になっており、市場内で購入することができないようになっています。さらに、この種類株式には譲渡制限がついており、株式を譲り受ける場合には取締役会での承認が必要になっています。

サイバーダイン社はこうした種類株式を発行する理由として「当社の議決権を山海嘉之及び財団法人に集中させるこ とにより、当社グループの先進技術の平和的な目的での利用を確保し、人の殺傷や兵器利用を目的に利用されることを防止することにあります。」と述べており、企業買収への対抗策と位置付けていることが分かります。

トヨタ自動車 AA型種類株式

トヨタ自動車 AA型種類株-トヨタ自動車2021年第3四半期有価証券報告書より

「トヨタ自動車 AA型種類株式」トヨタ自動車2021年第3四半期有価証券報告書より

あまり知られていませんが、トヨタ自動車も「AA型種類株式」という種類株式を発行しています。「AA型種類株式」は優先配当が受けられる種類株式で、配当額が1年目は発行価格の 0.5%、2年目以降は毎年0.5%ずつ段階的に増加し、5年目以降は2.5%に固定された配当を受け取ることができます。

この株式は普通株と同じく株主総会で議決権を行使できますが、非上場株式であるため市場内で売却することができません。その代わり、株主はこの種類株式を普通株式に転換、または、種類株式の発行価格を下回らない額の現金に転換するよう会社に請求することができます。

この種類株式の特徴は、長期にわたって保有し続けようが、長期保有をあきらめて普通株や現金に転換しようが、いずれにしてもこの種類株式の取得者が損をしない制度設計となっている点にあります。

こうした株式を発行した理由として、トヨタは「このたび、次世代技術へ投資し、新たな成長フェーズを創出していくにあたり、これまで以上に中長期の視点は欠かせないものであると認識するに至りました。その結果、次世代技術のための研究開発資金の調達にあたっては、研究開発投資が当社の業績に寄与するまでの期間と、株主の皆様に当社へ投資していただく期間とをできるだけ合わせることが望ましいと判断し、中長期の保有を前提とした議決権のある譲渡制限付種類株式として、AA型種類株式を発行することといたしました。」と説明しています。

つまり、この種類株の目的は、中長期にわたって安定株主を得るための実験的な取り組みということです。今のところ、トヨタはこの種類株以外の種類株を発行していません。おそらく実験としては成果が今一つだったのかもしれません。

株式の分類

株式は、株価、時価総額、保有する株主、各投資家によって様々な観点から、様々な形で分類されます。同じ銘柄でも投資のシーンごとに異なった呼ばれ方をされたりするので気をつけましょう。

株価による分類(低位株・値嵩株)

株式の分類

「値嵩株・低位株と大型株・中型株・小型株の分類」

低位株(ていいかぶ)と値嵩株(ねがさかぶ)は、一株当たりの株価によって区分されます。

絶対的な基準はありませんが、東証が望ましい投資単位(100株単位)として「5 万円以上50 万円未満」という水準を明示しているため、一株当たりの価格が500円を下回るものを低位株、5000円を超えるものを値嵩株とイメージすればよいと思います。

低位株銘柄としては総合商社の双日(2021年6月18日時点の株価335円)や駐車場の開発運営を手掛ける日本駐車場開発(株価159円)などがあります。低位株の中には業績不振の企業や、上場廃止処分を受けた企業など、投資に適さない企業が数多く存在するので注意が必要です。

値嵩株銘柄にはユニクロで有名なファーストリテイリング(執筆時株価82,470円)やキーエンス(同56,930円)といった企業があります。

株式数が増えると、株主総会の招集通知の発送などの株主管理コストが増加し、理不尽な株主提案を受けたりするケースが多々あります。あえて株式分割を避けて、一株当たりの価格を高く維持することで、株主数を減らしてコストを削減し、おかしな株主提案を受けるリスクを減らすことができます

時価総額による分類(大型株・中型株・小型株)

「2021年6月18日現在-時価総額トップ10社」マネックス証券より

「2021年6月18日現在-時価総額トップ10社」マネックス証券より

大型株、中型株、小型株という区分は、TOPIX(東証株価指数)を補完する「規模別株価指数」という株価指数を算出する際に用いられます東証1部企業の中から時価総額と流動性が高い上位100銘柄を「大型株」、大型株に次ぐ上位400銘柄を「中型株」、大型株・中型株以外の銘柄を「小型株」に分類します。

東証1部の上場企業数は現在(2021年6月)2,195社ほどありますが、そのうち大型株に該当する上位100社の時価総額は1兆5,000億円を超えます。同様に、上位の500社の時価総額は1,800億円を超えています。したがって、大型株に分類される目安は時価総額1兆5,000億円、中型株に分類される目安は時価総額1,800億円前後ということになります。

株主による分類(特定株・浮動株)

「流通株式定義見直し」日本取引所グループ 市場区分の見直しに向けた 上場制度の整備についてより

「流通株式定義見直し」日本取引所グループ 市場区分の見直しに向けた 上場制度の整備についてより

特定株とは、10%以上所有する主要株主、創業者や役員といった利害関係者、自己株式、取引銀行や取引先の事業会社などが所有する株式のことで、保有目的が純投資(売買目的)ではない株式のことです。特定の株主が長期間保有し、市場に出回ることがない株式なので、特定株と呼ばれます。

一方、浮動株とは、上場株式数(発行済株式数)から特定株を差し引いたものになります。市場に流通することから流通株式とも呼ばれています

注意
四季報の特定株主の定義は、上位10位までの大株主、自己株式、役員等が所有する株式を合計した数値になります。また、四季報の浮動株の定義は1単元以上50単元未満(100株以上5,000株未満)の株主が所有している株式になります。日本取引所グループの定義と異なるのでご注意ください。

なお、2022年4月の市場再編に伴い流通株式の定義が厳しくなりました。

21年5月12日に日本取引所グループから公表された「市場区分の見直しに向けた 上場制度の整備について」という資料によると、これまでは流通性が乏しい株主でも保有比率が10%未満であれば特定株主にカウントせずに流通株式としていましたが、今後は保有比率に関わらず流通比率から除外されることになりました。

現在の東証一部に該当するプライム市場の上場基準は流通株式比率35%以上とされていいます。そのため、多くの企業がこの基準を満たせないのではないかと心配されています。今後、プライム市場への上場を目指して、特定株主が保有株式を売却する可能性が高まっています。流通株式数が少ない銘柄は特に気をつけましょう。

各投資家による分類(ピーター・リンチの例)

ピーター・リンチの株で勝つ

「ピーター・リンチの株で勝つ」ピーター・リンチ著

マゼランファンドで有名なアメリカの投資家ピーター・リンチは、株式を「低成長株」、「優良株」、「急成長株」、「市況関連株」、「業績回復株」、「資産株」の6つに分類し、各区分それぞれの投資戦略をまとめています。

詳細には触れませんが、気になる方はぜひ本書をご一読ください。

ピーター・リンチとは?
ピーター・リンチは、1969年にフィデリティ社に入社し、1977年から90年までマゼラン・ファンドの運用を担当しました。70年代から80年代前半の「株式の死」と呼ばれる相場環境下にあっても、運用期間を通して年率29.2%という圧倒的なリターンを挙げました。在任中のダウ平均のリターンが2倍であるのに対し、マゼラン・ファンドのリターンは20倍を超えています。リンチは他の追随を許さない圧倒的な投資パフォーマンスで、同ファンドを全米でも有数の投資信託に育て上げることに成功しました。

まとめ

株式は定められた権利内容よって様々な種類が存在し、その特徴によって異なる形で分類されます。何も調べずに投資すれば、思わぬ痛手を被りかねません。投資のリスクを減らす意味でも継続的な勉強が不可欠です。

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