目次
誰でもわかるリスクとリターン|投資の知識
- 一般的にリスクとは、損害や損失を被る可能性のことを意味しています。しかし、投資のリスクを定義する上では、株価が期待以上に上昇することも投資のリスクに含まれています。つまり、投資におけるリスクとは、(良い意味でも悪い意味でも)株価の変動幅が大きく、期待したリターンが実現しない危険性を意味しています。
- リターンとは投資によって得られる利益のことです。売りや買いで生じる売買差益(キャピタルゲイン)だけでなく、利子や配当などによって得られる利益(インカムゲイン)も含まれます。
- 投資の世界では、リスクが小さければ小さいほどリターンは低く、リスクが大きければ大きいほどリターンが高くなります。
- 分散投資するメリットは複数の企業に投資することでリスクを軽減し、リターンを安定させることにあります。
- ドルコスト平均法とは、値動きのある金融商品を一定の間隔を空けて、一定の金額ずつ買い付ける方法です。こうすることで、投資タイミングを分散し、高値掴みを回避することができます。
- 「ウォール街のランダムウォーカー」という本では、最善の投資方法は広く分散した銘柄に投資するインデックスファンドをドルコスト平均法を用いて買い付け、それを長期保有することだと記されています。
リスクとは?
一般的にリスクとは、損害や損失を被る可能性のことを意味しています。しかし、投資のリスクを定義する上では、株価が期待以上に上昇することも投資のリスクに含まれています。なぜなら、株価が予想を超えて上昇するということは、予想を超えて下落するリスクも抱えているからです。
上の画像はトヨタ自動車(赤)、日経平均(青)、三菱UFJフィナンシャルグループ(緑)の5年週足比較チャートになります。画像をみれば分かるように、トヨタ自動車や日経平均に比べて三菱UFJフィナンシャルグループは大きく上昇・下落していることが分かります。三菱UFJフィナンシャルグループは、トヨタ自動車や日経平均に比べてリスクが高い(株価の変動幅が大きい)ことを意味しています。
つまり、投資におけるリスクとは、(良い意味でも悪い意味でも)株価の変動幅が大きく、期待したリターンが実現しない危険性を意味しています。
リターンとは?
リターンとは投資によって得られる利益のことです。売りや買いで生じる売買差益(キャピタルゲイン)だけでなく、利子や配当などによって得られる利益(インカムゲイン)も含まれます。
投資のリスクにはどんなものがある?
あまり意識されることはありませんが、投資にはリスクがつきものです。例えば、投資信託を購入すると、交付目論見書と呼ばれる説明書の確認が求められます。そこには、投資のリスクとして様々なリスク要因がまとめられています。
ここでは三菱UFJ国際投信が運用する「emaxis slim バランス(8資産均等型)」の交付目論見書に記載されているリスクを例に、「投資のリスク」を見ていきたいと思います。
価格変動リスク
価格が変動することで保有する金融商品の時価が変動してしまうリスクのことです。価格変動リスクは価格変動の振れ幅の大きさ(標準偏差など)で表され、下落だけではなく、上昇することも価格変動リスクになります。なぜなら、価格が大きく上昇するということは、それに見合うだけの大きなリスクを背負っていることを意味しているからです。
為替変動リスク
為替変動リスクとは、外国為替相場の影響を受ける金融商品の場合に、その商品自体の価格が変化しなくても、為替相場の変動によって価格が変動してしまうリスクのことです。
そのまま円で預金した場合 | ドルで預金(外貨預金)した場合 | |
1ドル=100円の時に100円貯金 | 100円 | 1ドル |
1ドル=50円になった時の預金額 | 100円 | 50円(外貨ベースでは1ドルのまま) |
1ドル=200円になった時の預金額 | 100円 | 200円(外貨ベースでは1ドルのまま) |
例えば、1ドル=100円の時に100円貯金したと仮定します。円預金した場合の預金額は100円、外貨預金した場合の預金額は1ドルになります。
その後、為替相場が変動し1ドル=50円になったと仮定します。この時、円預金の場合は預金額が100円のまま変わりませんが、外貨預金にしていると円換算された資産価値は50円に減少してしまうことになります(外貨を1ドル保有していることに変わりはないので注意)。また、1ドル=200円に相場が変動した場合、円預金の預金額は100円のまま変化しませんが、円換算された外貨預金の預金額は200円に増えてしまいます。
このように、外貨建て(外貨に替えて)取引を行うと、金融商品の価格に変化はなくても、為替相場の変動によって隠れたリスクを背負うことになります。
信用リスク
債券の発行体や債務者の経営状態が悪化することで、利子や元本の返済が滞ったり、返済自体ができなくなるリスクのことです。主に債券取引や銀行融資といった長期投資を行う場合に考慮されるものですが、上場企業の企業価値を測定する際にも評価モデルに組み込まれることがあります。
信用リスクを把握するには、ムーディーズ、S&P、格付投資情報センターといった格付け会社の格付けが利用されます。
流動性リスク
流動性リスクとは、金融商品を売却あるいは購入しようとする際に、市場に十分な需要や供給がない(流動性がない)ため、必要な取引量が確保できなかったり、取引自体が成立しなかったりするリスクのことです。
例えば、上の画像の阪神内燃機工業の株を2,000株売ろうとすると、現時点では買い注文が1,300株分しかないので売買が成立しません。仮に買い注文が出ている1,300株分だけ売ろうとすると、最後の100株は1,419円で売買が成立してしまい、現在価格(1,802円)に比べて著しく不利な価格で売買が行われてしまうことになります。
カントリーリスク
カントリーリスクとは、投資対象国でクーデターが起きて政治体制が変化してしまったり、資産凍結などの規制が導入されることで、予測できない価格変動が起きてしまうリスクのことです。特に新興国はカントリーリスクが高いので注意が必要です。
例えば、トルコではエルドアン大統領の強権的な政権運営によってクーデーターが起きたため、通貨価値が大きく下落し続けています。また、2021年にミャンマーで起きたクーデターでは、アメリカがクーデーターに関与した法人や個人に対して経済制裁を科しています。
リスクとリターンの関係は?
上の画像をみれば明らかですが、リスクが小さければ小さいほどリターンは低く、リスクが大きければ大きいほどリターンが高くなっていることが分かります。よく言われるハイリスク・ハイリターンという言葉は、投資の世界においても当てはまっています。
なお、後でも述べますが、青いダイヤモンドの図形で表示されている4資産分散(国内外株式+国内外債券で4等分した投資信託)と9資産分散(4資産+新興国の株式と債券+国内外のREIT+コモディティで9等分した投資信託)の投資信託は、いずれもリスクが低く、リターンが高くなっていることに注意しましょう。
リスクを減らし、リターンを安定させるには?
分散投資をする
リスクとリターンの関係でも見ましたが、分散投資するメリットは複数の企業に投資することでリスクを軽減し、リターンを安定させることにあります。例えば、次の例を考えてみます。
飲料メーカー | 傘メーカー | |
晴天(50%) | 20% | △10% |
長雨(50%) | △10% | 20% |
上の図は晴天(生じる確率は50%)と長雨(生じる確率は50%)時に、飲料メーカーと傘メーカーに投資した場合のリターンを表しています。
どちらかの企業だけに投資すれば、リターンは20%か△10%のどちらかになります。50%の確率で大儲けできますが、残り50%の確率で大きな損失を出してしまうので、投資したいと思えるほどの魅力を感じません。
しかし、飲料メーカーと傘メーカーの両者に50%ずつ投資した場合、晴天・長雨のどちらであったとしても、常に5%(20%×50%+△10%×50%)のリターンを得ることができます。このように、分散投資を行うことでリスクを抑え、安定したリターンを実現することができます。
ドルコスト平均法を活用する
ドルコスト平均法とは、値動きのある金融商品を一定の間隔を空けて、一定の金額ずつ買い付ける方法のことです。この方法を採ることで、投資タイミングを分散することができ、高値掴みを回避することができます。
長期間保有する
リスクとリターンを安定させる方法として、資産を長期間保有するという方法もあります。購入した金融商品を長い期間保有すると、統計的な期待値に近いリスク・リターンの値に収束させることができます。上の画像をみれば、保有する機関が15年を超えると、リターンが正の値に収まっていることが分かります。
結局のところ最善の投資法とは?
アメリカの大統領経済顧問委員会委員を務めたバートン・マルキールは、自身の著書「ウォール街のランダムウォーカー」の中で、最善の投資方法は広く分散した銘柄に投資するインデックスファンドを一定額定期的に(ドルコスト平均法を用いて)買い付け、それを長期保有することだと述べています。
危険な賭けをして一晩のうちに儲けようとするのではなく、投資する金融商品のリスク・リターンを見極めて、ゆっくりと確実に金持ちになることを目指すべき、という意味でしょう。